第120話 空からの牙と女王の号令
王国内は一瞬にして戦場と化した。
黒翼騎士の影が空を覆い、魔導矢が雨のように降り注ぐ。
「ぎゃあっ!」
民の悲鳴が上がり、屋根が貫かれる。
エリアスは作戦室で地図を睨み、指示を連発する。
「弓兵隊、中央広場配置!
バリスタは対空優先!
民間人は避難所へ誘導せよ!」
参謀の一人が報告。
「陛下、黒翼騎士が王宮上空に接近中!」
「迎撃準備! 義勇軍は民間人優先で護衛を!」
エリアスはバルコニーへ飛び出し、空を見上げる。
黒い翼の騎士たちが嘲笑を浮かべ、魔導槍を構える。
「数値を否定する女王よ、神罰を受けろ!」
ズシャアア! 魔導矢が王宮の壁を削る。
エリアスは歯を食いしばる。
(スカイ……あなたならどうする? 民を、皆を守る方法を……!)
王国内では、王国守護騎士団と義勇軍の混成部隊が各地に配置され、黒翼騎士に対抗する。
弓兵が矢を放ち、バリスタの巨矢が空を裂く。
「落ちろ! 落ちろぉ!」
一機が墜落し、爆炎が上がる。
「やったぞ!」
しかし、敵の数は多い。
各国数値教テロ鎮圧のため、
王国守護騎士団の6割が国外派遣中。
――それが裏目に出た。
劣勢の報告が次々舞い込む。
「東区陥落寸前!」
「民間人避難遅れてます!」
エリアスは耐えきれず、
王国中に拡声魔法を展開。声が空を震わせる。
「今、王国で戦っている皆さん!
私は王国女王、エリアス・エニーフィートです!」
王国内の兵士、民衆は動きを止めず、
耳を傾ける。
「全王国軍、および全義勇軍の皆さんへ通達します!
王国の命運はこの一戦にあり!!
相手は反逆者ゼストール!
かつて我が王国を疫病や魔物の大軍で苦しめ、王位を欲しがったあの仇敵が、再び牙を向けました!
しかし!!! 我らはもう知っている!
団結の力を、想いと絆の力を!!!」
彼女は深呼吸し、声を張り上げる。
「王国の未来と勝利を願う気持ちが皆同じなら、
王国はどんな危機をも乗り越えられると私は信じています!!!
我らの故郷、家族、友人、愛し守るべき存在を悪しき敵から守ろうという気持ちがあらば、
どうか私と共に戦おうぞ!!!」
王国内から雄叫びが沸き起こる。
「オオオオオォォォォォォオオオ!!!!」
広場で弓を構える兵士が拳を握り、
義勇軍の男が槍を掲げる。
「女王陛下万歳!」
「ゼストールめ、ぶっ潰すぞ!」
民衆も避難しながら叫ぶ。
「エリアス様、守ってください!」
士気が上がる。エリアスは心の中で謝罪した。
(ごめんなさい、皆さん。二度も王族の諍いに巻き込んでしまった。
全ての責はこの私とゼストールが負います……!)
南門外では、ゼストールが苛立つ。
「クソッ! 何度聞いても不快だ。
あの低数値の糞の雑音が!」
破城槌が門を叩くドゴォンという音が響くが、
頑丈な南門はびくともしない。
「いつまでかかってんだ! 役立たずめ!」
ゼストールは痺れを切らし、命令。
「オイ! 役立たず共、一旦攻撃をやめろ! 例のアレを使う、準備しろ!!!」
ゼストール軍の魔導工兵が、南門に巨大な魔導爆薬を設置。軍勢が距離を取る。
門番たちは「敵は退くのか?」と安堵しかけるが――
ゼストールが特注狙撃銃を構え、引き金を引く。
バァン!
そして着弾。
ドッガアアアァァァァン!!!
轟音と共に凄まじい爆風と火柱が上がり、
南門が爆炎に包まれた。
門に巨大な穴が空き、上部は燃え続け、周囲の地面は黒焦げ。
人型の黒い物体が数体転がる――。
ゼストール軍が歓声を上げる。
「開いたぞ!」「神の裁きだ!」
エリアスはバルコニーからその光景を見て絶句。拳が血を滲むほど握りしめる。
(南門が……! 来るっ……!)
ゼストールはドス黒く笑う。
「全く、余計な時間と手間だった。
あげくに虎の子をすぐに使うハメになったんだからなぁ。
だからこそ、命を持って償え。」
そして悪魔の号令。
「蹂躙しろ!!!」
ゼストール軍が南門の穴から雪崩れ込み、
王国内へ侵入した。




