第118話 父の言葉と迫る影
王宮の長い廊下を、エリアスの足音が響く。
クラウディス王の私室から出てきたばかりの彼女は、頰に残る涙の跡を拭い、
決意を胸にスカイの病室へ向かおうとしていた。
(スカイ……今度こそ、伝えなきゃ。
あなたに、私の本当の気持ちを……)
父の言葉が脳裏に蘇る。
「伝えたい思いは、相手の耳に聞こえるうちに
素直に言葉にしろ。悔いは一生残るぞ。」
その時、息を切らした伝令兵が駆け寄ってきた。
「陛、陛下! 緊急報告です!」
エリアスは足を止める。
「何事!?」
「城壁南門正面に、謎の軍勢が集結中!
規模は1個師団相当と推定!
様々な兵科を揃えた武装集団です!」
エリアスの瞳が見開かれる。
「1個師団……!?」
彼女は即座に王宮のバルコニーへ飛び出した。
南門の方角を睨む。
夕陽が血のように赤く染まる空の下、
無数の旗と槍の穂先が揺れていた。
鉄の鎧、戦斧、重装騎兵、
そして――先頭に黒馬に跨る一人の男。
ゼストールだ。
彼の顔が、遠くからでも不気味に歪んで見えた。
口裂け悪魔のような黒い笑み。
「ようやくだ……ようやく私が王になる時が再び訪れた。この時までにどれだけの屈辱と理不尽と腸煮えったぎる怒りをため込んだと思う?
その清算を命を持って償ってもらうぞ、
父上、そして……エリアスぅぅううう!!!」
ゼストールの咆哮が、風に乗って届く。
エリアスは全身が凍りつくのを感じた。
(まさか……あの世界中で起きていた数値教のテロは陽動だったの……っ!?
そっちに私たちの目を逸らせて、
その間に軍勢を集結させて王国へ攻め込む……っ!!!)
エリアスは
両手を重ねて強く握りしめ、心の中で叫んだ。
(スカイ!!! 助けて!!!)




