第112話 父との対話、エリアスの想い
国王クラウディスの私室。
扉をノックすると、いつになく弱い返事が返ってきた。
「入れ、エリアス。」
椅子に腰を掛ける父。歳月の重みがその背にのしかかり、もはやかつての覇気はない。
「……苦労をかけるな。」
「父上、今はそんな――」
「聞いている。世界の混乱、ゼストールが原因であることも。
そして……あの青年が、お前を庇って倒れたことも。」
エリアスは息を飲んだ。
クラウディスは続ける。
「本来、この責を負うべきは余だ。それを娘に背負わせた。……すまぬ。」
「そんな……違います。私は――」
「よい。そんな言葉より、今はお前の“心”を聞かせてほしい。
エリアス、お前は何を望む?」
エリアスを視線を反らし、
「わ、……私は何も……」。
「では……、お前はなぜ今泣いている?」
「……っっ!!!」
その瞬間、エリアスが抑えていた何かが崩壊した。
「私……っ! スカイが傍にいないと、何も出来ないの!」
胸の奥からあふれる嗚咽。
「スカイは私を照らしてくれた! 道を示してくれた! 未来を語ってくれた!
あのサミットで、彼の夢を聞いて……私はその夢を叶えたスカイの隣で笑っていたいって思った!
本当は、この国は彼が導いた方が良かったんじゃないかって……思ったことだってあるの!!」
涙が頬を伝い落ちる。
「なのに、なんで――なんで私を庇って! あの人が傷つかなきゃいけないのっ!?
何で母と同じように、大切な人をまた失わなきゃいけないのっ!?」
息が乱れ、嗚咽が部屋を揺らす。
そして、胸の奥から言葉がこぼれた。
「私、……スカイが、好き。大好きなの。大切で……彼じゃなきゃ駄目なの。
優秀だからじゃない。……初めて、一生を添い遂げたいと心から思ったのは、スカイだけなのっ!!」
その叫びを聞いた王は、一瞬目を閉じた。
そして、ゆっくりと立ち上がり、娘の肩を抱いた。
「泣け。泣いていい。お前は女王である前に、ただの娘で人間だ。」
その胸の中で、エリアスは子供のように泣き続けた。
「ぅっ……ぅあっ……うわぁぁあああああっっ!!」




