第105話 泣き叫ぶ廊下と狙撃手の影
王宮医療棟。
扉の外で、エリアスは自分の手についた血を見つめていた。
「……こんなに、温かいのに……どうして、もう動かないの……?」
医師たちが叫ぶ。
「止血急げ! 反応してないぞ!」
「心拍維持、魔力注入急げ!」
エリアスは思わず看護長に縋り付いた。
「お願いします! 彼はこの国に、世界に必要な人なんです!!」
看護長が彼女の肩を掴み、震える声で言う。
「陛下、今はどうかお下がりを。彼の命を救うためには、時間が必要です。」
「でもっ! 彼がっ……スカイがいなきゃ……!」
堰を切った涙が床に落ちた。やがて彼女は、ふらりと壁際へ膝をつく。
(母の時と同じ……また、誰かを守れないの?)
その時、心の奥にスカイの声がよぎった。
――「大丈夫です。あなたがいる限り、この国は止まりませんから。」
「スカイ……お願い……そんなこと言わないで……。」
同時刻、王都郊外森の奥で風が動いた。
遮光布に覆われた特注の高性能狙撃銃の銃身
が煙を上げ、黒い外套の男が小さく舌打ちを
した。
「……外したか。」
銃鏡の中には、混乱に包まれた王宮が映っている。
「だが、まぁいい。奴を庇った時点で終わりだ。」
ゼストール・バレスタインは冷たく笑った。
「次は……お前自身の番だ、エリアス。」




