9/12
9
午後十一時五十九分。
あと一分で娘の誕生日だ。
夜はまだ大丈夫かもしれないが、絶対とは言い切れない。
徳田も娘も誕生日が過ぎるまで寝ないつもりだった。
十二時になった。
しかしおめでとうの言葉はない。
それどころか二人とも何も話さない。
ただ同じ方向、家の壁をじっと見つめているだけだった。
トイレ行く時もついていった。
さすがにその最中を見るわけにはいかないので、娘がトイレにいる間、戸を開けて徳田は反対のほうを向いていた。
終えた娘が徳田の横を無言で通る。
徳田はその後ろをついていく。
夜が明けた。
かなり眠いが寝るわけにはいかない。
娘も頭が半分吹っ飛ぶかもしれないのに、少し眠そうだった。
学校に休みの連絡を入れる。
徳田は一言「休みます」とだけ言った。
相手は電話口で「そうですか」と小さくつぶやいただけだった。
休む理由も聞かれなかった。
その後もなにも起きなかった。
ただ一秒一秒が、やけに長かった。
もう何日もたったような感じだったが、まだ午前九時だった。




