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母親が激しく首を振った。
「いや、今言ったことは忘れてください。それじゃあもう失礼します」
女はひどく慌てたように立ち上がり、会計を済ませると小走りに店を出て行った。
まるで逃げるかのように。
――なんだったんだ、今のは?
考えたが、徳田にはわからなかった。
夜に老婆はさ迷っていた。痴呆だ。
一見散歩にも見えるが、いわゆる徘徊だ。
老婆は完全にボケていた。
――おや?
目の前に誰かいる。少女だ。
普通の少女ではない。
頭の上半分がない。
あるのは口と鼻の下部分と右目で、その上がないのだ。
老婆は見ていた。
すると半顔の少女が老婆を見た。
老婆は反射的に頭を下げた。
少女はそれには返さず、視線を移して目の前の家をじっと見つめた。
少女はそのまましばらく家を見ていたが、やがて煙のようにその姿を消した。
老婆はそれを見て思った。
――最近は、ずいぶんと変わった子もいたもんだよ。まったく
一人目の被害者が通っていた中学でそれは起こった。
昼休み、死体が見つかった。
状況は前の二人と全く同じ。
頭が顔が、左下から右上に向けて切られ、死んでいた。
死んだ少女は今日が十四歳の誕生日だった。
切られた頭部は死体の横にごろりと置かれていた。大混乱。
警察が来て、生徒は全員家に帰された。
帰宅する女子生徒の大半は泣いていた。
男子生徒も青ざめた顔で家路に着いた。




