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娘がいつも以上にいら立っている。
徳田はそう感じた。
幼いころは「パパ、パパ」といつもなついていたが、最近は露骨に父親を嫌うようになっていた。
「臭い」「汚い」「寄らないで」などなど。
そう言った言葉をいくつも口にするようになっていった。
それがここのところはいら立ちが後押しをして、さらにきつい言い方になっていたのだ。
父と娘の二人暮らしだというのに。
だがそれも無理もないかもしれない。
十四歳の女子中学生が二人も、あろうことか誕生日に無残な死を遂げたのだ。
それも一人は同じ中学の生徒であり、もう一人もそんなに離れていない中学に通う少女だったのだ。
さして広くないこの街には、中学はその二つしかない。
そして自分は、あと少しで十四歳の誕生日なのだ。
それなのに平常心でいられるはずもない。
そして平常心でいられないのは、この徳田も同じなのだ。
娘は無事に誕生日を迎えることができるのだろうか。
そればかりが頭を支配していた。
ほんの少しだが空気が違う。
徳田はなんとなくだが感じていた。
外の出た時の街の空気、雰囲気。そう言ったものが今までとはちょっとだけ別のもののようだ。
十四歳の誕生日に悲惨な死をとげた二人の少女。
それだけでこのような変化を感じるものなのか。
普段は見ない中央のマスコミ連中が何人もうろうろし、パトカーもいつもより忙しげに見える。
そして街の中学生とその家族が、死んだような眼をして歩いている。
それらに影響されて、それ以外の人もその思い空気を感じ取っているような様子なのだ。
かといって、徳田にはどうすることもできないのだが。
もう買い物もすませた。
徳田はさっさと帰ろうと思った。その時。
――うん?
前から歩いてきた女性。
徳田には見覚えがあった。
最初に死んだ中学生の母親だ。




