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第1話 路地の一方通行

路地は荷車で塞がっていた。

「どけろ!」

「武器工房が先に運び出す規定のはずだ!」

今にも殴り合いが始まりそうな二人の親方。

「時間がない!」

「こっちにだって搬出の期限があるんだ!」

「遅れたのはそっちだ!」


肩ふたつぐらいの狭い路地。

工房から搬出される荷車が向かい合い、渋滞を起こしていた。

私は荷物運びの日雇い冒険者として、今日1日の現場に派遣されていた。


もし時間内に仕事が終わらなければ、私の日当が飛ぶ。


私は恐る恐る口を挟むことにした。

「あの、作業が進まないので――」

「うるせぇ! 冒険者はすっこんでろ!」

一蹴されてしまった。


「用水路に向かって、一方通行にすればいいのに……」

あそこはこうして、ここをこうして――と、路地を見ながらぶつぶつ言っていた時だった。


「それいいじゃない。やってみたら?」


「!?」

驚いて横を見ると、すらっと背の高い女性が立っていた。

「やってみろと言われましても、私の話なんて誰も」


「任せといて」

そう言うと、女性はツカツカと喧騒に割り込んでいった。


「マジックバッグ専門のブロード商会、ベルです。みなさん、このままじゃ間に合いませんよ!」

視線がベルに集まった。

胸の青い商会章が光った。

章を見た親方たちの顔色が変わった。


「そこの彼の指示に従ってください!」

そう言いながら、ベルは私を指差した。

親方たちはいぶかしげに応える。

「誰だ、あいつは?」

「納品が遅れれば、こっちが損するんだぞ」


ベルは自信満々に言い放った。

「指揮は彼に任せて。損失が出たなら、我々ブロード商会がその責任を負いましょう!」

その迫力に誰もが息を呑んだ。


「そこまで言うのなら……」

親方たちは互いに顔を見合わせ、一本の道ができた。



私はすぐに仕事に取り掛かった。

手始めに、入口と出口にロープを張った。

「荷車は一方通行です。用水路沿いの道に回ってください!」


外で荷の積み替えが行われており、狭い路地がより狭くなっている。

「工房にスペースありますよね。荷物は工房内で積み切ってください」


荷車の回転速度が目に見えて、速くなっていく。

ざっと数えると、荷車の通過にかかる時間は8分から3分にまで短縮された。


親方のところにも駆け寄って提案した。

「検品の待機列が最大の渋滞原因です。検品は抜き取りを採用しましょう」

「計量さえ徹底してくれればいい。好きにしろ」

工房内レーンでの事前計量を取り込むことを条件に、検品の待機列を完全に解消することに成功した。




どちらの工房も無事に1日の作業を終えることができた。

私もきちんと日当を受け取れることだろう。


「お疲れ様でした」

「おう、お疲れさん」

親方は結局、礼も言わなかったが、文句も言わなかった。


あまりにあっという間の一日だった。

10年間冒険者業を続けてきて、初めての手応えだった。

私は足取り軽く、工房を出た。



「ねえ、あなた! 名前はなんて言うの?」

突然、横から声をかけられた。

その声は、親方と商談を終えて、一足先に工房から出ていたベルだった。

「れ、レジナルドです」

「そう、レジー。あなた、ブロード商会で働いてみない?」




最後までお読みいただきありがとうございます!

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