表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/18

第12章

鏡水家——作戦会議


部屋を満たすのは、沈黙と、張り詰めた冷気だった。


鏡水家の本部、漆黒の石で築かれた作戦会議室。

長机の前に、重厚な椅子が幾つも並ぶ。幹部たちはすでに着席し、一人、少女が立っていた。


「…我が家の”計画”を妨げる異分子が、雪月花に保護されているようですね。」


鏡水(きょうすい)初音(はつね)———鏡水家の第十五代目当主。

艶やかな黒髪を結い、艶やかなオカリナを胸元に揺らす。

その表情は微笑みすら浮かべていたが、放たれる言葉は容赦ない。


「名は—―一ノ宮悠歌。異世界から来たものであり、”共鳴の力”を有する可能性がある。実験施設壊滅後、その名が幾つかの記録に残されてありました。」


「”共鳴の力”…まさか、本当に?」


そう口にしたのは、眼鏡の奥で目を光らせる赤石(あかいし)(くれない)

隣の椅子で、鏡水(きょうすい)真李奈(まりな)が無邪気な笑顔を浮かべながら、机の端をトントンと指で叩いていた。


「じゃあ、探しに行かなくっちゃねぇ。実験台として、どのくらい耐えれるか…ふふふ、見ものです。」


「止めろ、真李奈。」


鏡水(きょうすい)陽良(あきら)が低く制した。

バイオリンケースを背にしたまま、苛立ちを隠さずに初音へと向き直る。


「”共鳴の力”は確かに価値がある。だが、子供を実験に使うのはもう…。」


「陽良、何か言いましたか?」


初音の一言が一瞬だけ冷え込む。

陽良は黙し、目を逸らした。


そのやり取りを、鏡水(きょうすい)柚葵(ゆずき)は静かに眺めていた。

ポニーテールの赤髪を揺らし、いつものようににこやかに—―だが、内心は酷く騒がしい。


(あの子まで…巻き込まれるなんて。)


柚葵はわざと話題を掘り下げるように、無垢な調子で問いかけた。


「その、”共鳴の力”って、どんなものなんでしょう?異世界人しか持てないっていうのも…本当なんですか?」


初音は目を細める。


「珍しいですね、柚葵。貴方が自ら口を開くなんて。」


「いえ、ただ…気になってしまって。私たちの未来のためになりますし。」


「ふふ…確かに。」


初音は笑う。

だが、その奥でどこまで察知しているかわからない。


柚葵は会話を続けた。


「その”悠歌”という子は、雪月花の特任奏士と一緒に行動しているのですよね?でしたら奪うのは難しいのでは?」


真李奈が軽く手を挙げる。


「ねぇ、それって…雪月花に内通者でもいない限り、無理じゃない?誰か情報回してくれないかなぁ?」


柚葵は笑顔を崩さないまま、心の奥で一つ、小さく息を吐いた。


(私が…貴方を守る。悠歌)


その日、鏡水家は「悠歌ダッシュ作戦」を極秘裏に進行させることを決定した。

だが—―

その中心にいた一人が、すでに雪月花へ向けて静かに、確かな裏切りの情報を流し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ