雪月花—音を統べる者たち—
この世界に、音はただの響きではない。
旋律は力を持ち、旋律は心を癒し、旋律は時に、世界を救う。
その心理に人々が気付いたのは、ある研究施設で”音と感応する特異体質”が発見されてからだった。
やがて覚醒者たちは自らの意思で音を操るようになり、そして—―世界は変わった。
犯罪。戦争。裏切り。
力を手にした者が、それを正しく使うとは限らない。
混乱する各地を鎮めるために生まれたのが、国家直属の音楽能力組織——《雪月花》である。
その本拠地は、巨大な学園都市と呼ばれるほどの広さを誇る。
深い森に囲まれたその敷地内には、訓練場、音楽ホール、演奏塔、そして古城のような本部がそびえ立つ。
多くの演奏者たちが日々修練に励み、音を通じて国家の安全を守る使命を背負っている。
その構造は厳しくも温かい。
四季の頂点に立つのは《マエストロ》。
雪月花全体の方針を定めるその人物は、音に命を与える”楽団の魂”とも称される。
そして現場の統括を担うのが、《コンサートマスター》。通称。
冷静に戦況を見極め、奏者たちを正しく導く”最初の音”だ。
入団最低年齢は5歳。
才能と適性があれば、幼き者もまたこの組織に名を連ねる。
所属者は皆、楽器を媒介に能力を発揮する。
音が技を呼び、旋律が刃となる。
攻撃、癒し、防御、探索——すべては音によって成り立つ。
制服は、白と紺を基調とした機能美を重視した装い。
礼装は式典や演奏会にて、戦装は戦場を駆ける時に着る。
それはただの衣ではない。信頼の証、そして誇りである。
雪月花は音を力とするだけではない。
「音を通じて心と心を繋ぐ」——それがこの組織の本質であり、願いでもある。
そして今、次なる時代を紡ぐ旋律は—―。