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ワンダフルコネクト ~エミルとドラゴンのアドベンチャー~  作者: 稲葉トキオ
第2章 エミル・スターリングと陽緑の旅路

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第57話 集う新星たち その3 アクアとジェムの躍動

「プルリンが勝った……?」「まぐれだろ、ザコワンダーだぞ?」「そうだよ、こりゃきっとなにかのまちがいだ!」「ハンデのせいよ! ここからが本番よ!」


 ギャラリーは、ひきつづきどよめいています。史上最弱のワンダーと名高い【プルリン】が、もっか交流会九連勝中のカナトのパートナー、【バネーク】を一撃で打ち破るなんてありえない、そんな感じです。


 もちろん、いちばんそう思っているのは、カナト本人でした。


 たしかに先手はゆずりましたが、それでもプルリンごときのチカラでバネークを瞬殺できるはずがないと踏んでいたのに、このありさま。いったいあのユーリとかいう男、どんな鍛え方をしたのか。それとも、あの男自身のウィザード技能が高いとでもいうのか? いや、そんなはずはない。あんなアカ抜けない田舎者がこのボクより……


「ねえ、はやく二体目出しなよ。それとも、降参ととっていいかな?」


 自分の世界に入ってもんもんとしているカナトに、エミルが実にうれしそうな声で呼びかけました。


 カナトはハッとわれにかえって、気と気取ったポーズを取り直して言いました。


「フ……フフッ、みごとなラッキーパンチでしたね。ですが、サービスタイムはこれでおしまいです。ここからが、本当の戦いですよ! 出でよ! ツチ!」


 蚊取り線香と化した【バネーク】を指輪にもどし、今度は土色の岩肌のようなウロコを持つ、太くて長い大蛇、【ガンガラヘビ】を呼び出しました。


『ガアーッ』『プルッ……』


 自分よりずっと大きく、顔もこわいガンガラヘビににらまれ、アクアはびくっとプルっとしますが、


(だいじょうぶだよアクア。ぼくだってこわいけど、ふたりなら、みんなとならこわくない!)


 心に語りかけてくるユーリの言葉に、ふたたび勇気の灯をともしました。


「今度はこちらの先制です! ツチ、しめあげてあげなさい!」『ガアーッ!』


 ガンガラヘビは名前の通りガラガラと岩石のような音をたてながら、重そうな見た目に反してすばやい動きで、あっというまにアクアのまわりをとりかこんでしまいました。


「アクア、跳んで逃げて……」「遅い!」


 ユーリの指揮通り、アクアがぴょんと跳ねようとした瞬間、その水色の小さな体はガンガラヘビの土色の長くて太い体に巻きつかれてしまいました。


『プル~ッ!』


 ガンガラヘビにぎゅうぎゅうにしめあげられて、アクアの弾力ある体もつぶれて変形していきます。


 勝利を確信したカナトがニイッと口をつり上げ、ギャラリーたちからも、やっぱりさっきのはまぐれだったのかと、そう思われた瞬間、


 すっぽーん!


 という小気味のいい音とともに、アクアの体が打ち上げられたように上空に飛んでいきました。


「ええ~~~っ!」


 ギャラリーからいっせいに、目玉が飛び出るようなびっくりした声があがります。


 どうやら、巻きつかれる直前に跳ねようとしたのがさいわいして、実は下半分しかつかまっていなかったアクアの体が、しめあげられたことによって押し出されたようです。


「きゃはははっ!」『おもしろーい!』


 エミルとシロンは、おかしくっておなかをかかえて爆笑していました。


 なんにせよ、脱出に成功したアクアは、ぽよんと着地しますが、


「おのれ……ならばグミのように、かみつぶしてあげましょう! 《ワイルドバイト》!」『ガアッ!』


 カナトはすぐに頭を切りかえ、ガンガラヘビはその長くするどいキバをむいて、アクアにかみつこうと襲いかかります。


 やっぱり動きがすばやいので、アクアの足の速さではとてもよけきれそうにありません、が。


「《スイッチ》! 《シェルガード》!」


 ガキーン! ボキッ!


『ガアア~ッ!』


 ガンガラヘビのキバは、アクアと瞬時に入れ替わった【コイシカメ】のジェムのコウラにはね返されて、ポッキリとへし折れ、野太い悲鳴をあげました。


「なんですとぉッ!?」


 カナトは驚愕しました。まさかあんな田舎者っぽい弱そうな少年が、自分ですらマスターできていない高難易度の魔法スイッチを使いこなしているという事実に。


「いいよユーリ! ナイススイッチ!」『イエーイ!』


 エミルとシロンも身を乗りだして歓声をあげました。ウィザードの高等技術スイッチとそれをうまくあつかう機転は、まちがいなくこれまでの冒険でつちかわれたものです。自分たちといっしょに経験したことがユーリの身になっているんだということが、うれしいのです。


 いっぽうギャラリーは「なんだ!?」「プルリンが変身した!?」と、なにが起こったのかを理解できず、困惑しているようすです。


「いまだジェム! 《岩砕牙(がんさいが)》!」『クォー!』


 ガンガラヘビがもだえ苦しんでいるスキに、ジェムはとっとことっとことカメの歩みでその胴体へと走っていきました。


「なにをしてるツチ! 早く反撃しなさい!」『ガアア~ッ!』


 キバが砕かれてしまった痛みで、ガンガラヘビの耳にはカナトの声はいっさい聞こえていないようです。


 そうこうしているあいだに、ジェムが無防備なガンガラヘビの胴体までたどりつき、そこに小さくもするどいキバをたたきつけました。


 バリッ!


『ガギャアアア~~ッ!』


 またもあがるガンガラヘビの絶叫。ジェムのかみつきはその岩肌のようなウロコを砕き、見た目以上に絶大なダメージを与えていました。


 ユーリはエミルに、ライカからもらった最新版のワンダー図鑑を読ませてもらって、勉強していました。


 カメ型のワンダーは総じてかみつく力が強く、さらに【コイシカメ】や【イワガメ】は岩石を主食とするため、それらをなんなくかみ砕くことができるということを。


 その結果、ガンガラヘビのじょうぶな体にも、致命的な一撃をくらわすことができたのです。


 ガンガラヘビはその激痛に耐えかねて、ズズーンと倒れ、気を失ってしまいました。


 そして、ギャラリーはいっせいにしずまりかえりました。


 まぐれも二度続けば、それは偶然ではなく必然です。もう、認めるしかありませんでした。自分たちがさんざんバカにしたウィザードの少年、ユーリの実力を。


「おおー!」「すっげえ!」「あんな弱っちいワンダー使って、二体抜きするなんて!」「見直したわ!」「ザコワンダーのあつかいが神すぎる!」


 それから一転して、大歓声があがりました。なんともすがすがしいまでの手のひらの返しっぷりです。


 けれど、ユーリはこれっぽっちもうれしいとは思いませんでした。だってギャラリーのだれも、自分のことは絶賛しても、アクアとジェムのことは徹底してザコあつかいし、ほめてはくれなかったのですから。


(だいじょうぶ。ぼくとエミルたちはちゃんとわかってるよ。この優勢は、きみたちのがんばりのおかげだってね)


 ユーリの心の声を聞いて、アクアとジェムはとってもうれしい気持ちになりました。だって、自分たちがこの人についていきたい、と思ったくらい大好きなユーリが、ねぎらいの言葉をかけてくれたのですから。それさえあれば、ほかのだれになにを言われたって、平気なのです。


「認めない……こんなはずがない……オレが、いやボクがこんな田舎者に……!」


 いっぽう、カナトはわなわなとふるえながら、ぶつぶつとつぶやいていました。


「ユーリ! アクア! ジェムー! みんなすごいよー!」


 そんなとき、とびっきりの笑顔でユーリに声援をおくる、エミルの姿が目に入りました。


 ひと目見たときから、自分のモノにしたいという欲望がムクムクとわいてきて、永遠にそばにおいて、思うがままにしたいと思っていたエミルの姿が。


 このままでは、彼女が自分のモノにならない、いままでほしいモノはすべて手に入れてきた自分にとって、そんなことは耐えられない、許されない、あってはならない! そんな感情が、カナトの中で爆発しました。


「ぬおおおおおっ!!!」


 突然あがった叫びに、全員おどろき、しずまりかえりました。


 見るとそこには、細められていたヘビのような金色のひとみをひん剥き、裂けるような大きな口をつり上げている、おそろしい形相のカナトがいました。


「キサマ……田舎者とザコワンダーの分際で、よくもオレ様を怒らせたな……もう許さん! 徹底的に痛めつけて、あの女をオレのモノにするッ!」


 ユーリはカナトの形相と口調の変化に一瞬びくっとしますが、アクアとジェムをザコ呼ばわりし、エミルをモノあつかいするような言葉に反応し、キッと顔をけわしくして、杖をつきつけました。


「許さないのは……ぼくのほうだ! ぼくの大切な仲間と友だちを……ザコとかモノあつかいするなっ!」


「ユーリ……」


 エミルはうれしくなって、きゅんと胸が高鳴るような感覚をおぼえました。


「イキがるのもここまでだッ! ハクよ、行けッ! その純白の体を、ヤツらの血で真っ赤に染めあげるのだッ!」『シャー!』


 完全にブチギレモードのカナトは、指輪から【ミルネーク】のハクを呼び出しました。主人が変貌してもまったく動じないあたり、さすがはパートナー、慣れているみたいです。


「その大きさじゃ、ぼくらをしめ殺すには足りないんじゃない?」


 ユーリはひるまず挑発をかましました。もはや完全にエミルが乗りうつっている状態です。


「心配は無用だ! ハク! 《大変身》!」『シャー!』


 カナトが大きな声とともに大きく両手をひろげると、ハクが白い光につつまれていきました。


 すると、なんということでしょう。せいぜい2~3メートル程度の長さだったハクの体が、みるみるうちにその五~六倍くらいの大蛇に化けたではありませんか。


「いいっ!?」『クォー……』


 ギャラリーはもちろん、ユーリとジェムも、びっくりしてたじろぎました。まさか巨大化までするなんて、そんなのアリ!? と思ったのです。


 見守っていたエミルも、全身にぞわっとした寒気を感じて、身ぶるいしました。


「初手の借りを返すッ! 《テールハンマー》!」


 巨大化したハクのしっぽが大きく振り上げられると、仰天したままのジェムに向かって、まさにハンマーのように振り下ろされました。


「ジェム!」


 ジェムの体はぷちっとたたきつぶされ、岩石のコウラの防御もむなしく、気を失ってしまっていました。


「どうだ、オレ様のチカラを見たか! 残りのザコ二体も、プチッとつぶしてくれるわッ! ハーッハッハッハ!」


 そっくり返った豹変カナトの尊大な高笑いが、アドレスの敷地内に響きわたりました。

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