特訓
「さて、まずは移動するか」
ユウヒが目でネネに合図を送る。
ネネは移動用の魔法陣を展開する。
「移動先は"無限の荒野"で」
ネネが頷く。
するとアイラ達は光に包まれ、目を開けるとそこには荒野が広がっていた。
「ここって…」
アイラが辺りを見回す。他に誰もいない。
「ここは未発見のダンジョンの深層だ。おれ達がたまたま見つけて有効活用してるんだよ」
ユウスケがアイラの疑問に答えるように話す。
「それじゃ、改めて自己紹介な。俺はユウヒ。職業は〈剣聖〉だ。よろしく」
「おれはユウスケだ。職業は〈魔獣使い〉だよ。」
「私はネネ。職業は〈大司祭〉です。改めてよろしくね。アイラ」
アイラも自己紹介をする。
「私はアイラ。職業は〈大賢者〉だよ」
アイラは改めて3人を見る。
最上級職3人が目の前にいるなんて信じられない。
「3人とも最上級職なんだね。こんなに強くなってるなんて…すごいな。私なんかまだまだで…」
3人が吹き出す。
「お前、人の事言えないからな?魔法系最上級職のくせに」
ユウヒが笑いながら言った。
腹を抱えてユウスケが続ける。
「大賢者なんて世界に10人もいないだろ」
しばらくしてようやく笑いが収まった。
そして、3人が真面目な顔をしてアイラに訊ねる。
「さて、まずはアイラの実力を見せて貰おうか。自分が使える中で一番強い魔法を出せ」
アイラは少し考えて言う。
「いや、何かリクエストしてよ。やって欲しい魔法。何でも良いよ」
3人は顔を見合わせ、口を揃えて言った。
「「「全属性魔法」」」
「多分無理だと思うけどな」
ユウスケが言った。
アイラは自身たっぷりに笑う。
そして魔法を放つ。
「ビッグバン!」
魔法を放った後には、何も残っていなかった。
「これでいい?」
3人は口を開けてポカンとしている。
ネネが口を開く。
「こんなの…人間が出せる物じゃない」
ユウヒも話し出す。
「僅かに時間差で全属性を放つ…やばいな」
ユウスケが言った。
「世界を滅ぼせるくらいだ」
そして3人は呆れ顔でアイラに言う。
「「「これは特訓が必要だね」」」
バツの悪そうな顔をしてアイラが言った。
「……すみません」
それからひたすらに制御の練習をした。
魔力制御、威力制御、コントロール制御etc……
とにかく制御し続けた。
「また乱れてる!もっと自然に!集中!」
ネネが意外と厳しい。
「まあまあ、大分良くなったろ」
ユウヒは意外と甘い。
「あはは、頑張れ〜」
ユウスケは中立だ。
正直、かなり辛かった。
大変だった。
少しでも制御が乱れると注意され、何をしていても制御を続けるのは非常に疲れる。
だが、頑張った。ただひたすらに。
たまに息抜きで魔法を放ったり、3人の技などを見せて貰ったりした。
ユウヒの剣技を見せて貰ったり、ユウスケの魔獣や神獣を見せて貰ったり、ネネの回復魔法を見せて貰ったり、とにかく色々な事があった。
そして荒野で特訓すること一ヶ月、遂に完璧に制御することに成功した。
通常は多少なりとも反応する危険度感知の魔法に引っかからない程まで。
「まさか一ヶ月でここまでとはな」
ユウヒが驚いたように言う。
「こんなもんよ!」
アイラは自信満々に胸を張って言った。