7 破滅的な幼馴染
今日も一日良い日だった。喜んでいいのか分からないけれど、何も変わっていない彼と今日も何気ない一日を過ごせた。
欲を言っていいのなら泊まりたかったが、何やら怖い思いをしたようでそれは叶わず帰れと言われてしまった。
「でもまぁ、気にしない気にしない。」
少し空も暗くなってきた中、一人で歩く帰路もたまには良い。
それに夏休みは始まったばかり。あまりしつこくしてしまったら嫌われてしまうらしいので、今日のところは大人しく帰ることにする。
「夏休み、どこまでなら許してくれるかな。海、山、お祭りは行くことが決定してるとして……旅行とか……行く気になってくれるかな。」
正直、想像はできない。でも、したい。私には大きな一つの目標がある。
それは、彼の将来の夢を聞くことだ。
「でもまぁ……今日もきっと変わっていないんだろうなぁ。」
過去に一度だけ、聞いたことがある。後悔した。人の話した夢に対して、怒りとどうしようもないほどの悲しみの感情を抱いたのは、彼だけだ。
私は本気で怒った。怒る資格があった訳では無いけれど、ただ怒らずにはいられなかった。その後、彼は本気でその夢を語った。私はただ悲しんだ。
彼の夢は、とても破滅的だったから。私は説得しようとしたけれど、何もかもが遅すぎた。彼の気持ちは変わらなかったし、私自身も、彼を変えることはできないと悟った。
私が好きになった時には、好きな人はもう既に自分ではどうしようもできないほど壊れてしまっていた。
「……まだまだ遠いなぁ。」
私の事を理解しようとしてくれて、理解してくれた人。その過程で、私自身も彼の事を知った気になっていたが、その逆、彼の夢を聞いた瞬間に、彼のことが何一つ分からなくなった。
どれだけ彼と仲良くしても、どれだけ彼と共に時間を過ごしても、どれだけ彼を怒らせたとしても、どれだけ彼に嫌われるようなことをしても、彼との距離が縮まったと、本気で思えたことはない。
それはきっと、彼の夢を知っているから。彼のその夢が変わらない限り、私がそう思える日はきっとこない。
だから、彼のそばにもっと居ないといけない。もっとたくさんの時間を使って彼のことを知り、彼に知ってもらい、もっと考えてもらわないといけない。
「夏輝の夢が叶いませんように……」
夜空にそう願う。
そして、明日からも私のやる事は変わらない。破滅的な幼馴染と何気ない日常を過ごし、彼の夢を変えるために、奮闘する。そしていつの日か、彼の口から、素敵な夢が聞けたらいいなと、願う。