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60 関係は季節のように

人生には、思いもよらない曲がりくねった道が存在する。どこに辿り着くかも分からないほどの複雑な道だ。

生きていたら、あの時の自分が今の自分をみたら、どう思うだろうと思う時がいくつもある。

その度に思う。きっと未来のどこの部分をみせても、羨ましがるだろうなと。

今は苦痛に思う毎日でも、過去の自分からしたら思いもよらない姿が今の自分なわけで、その世界を生きている自分は、きっと新鮮で刺激的に見えるに違いないのだから。


だから、今を真剣に考えることはとても大切なことであり、それでいてそれほど重要なことでもない。

なるようになる。どれほど思い悩んでいても、どれほど苦痛的に思えても、今を過ごすのであれば、今日とは違う明日がくる。それが良いか悪いかは置いといて、そうやって毎日は、こちらの想いを無視して適当にやってくる。


だが、唯一。未来がやってこない毎日の過ごし方がある。それは、過ぎた過去を真剣に考えすぎてしまう場合だ。何らかの過去を忘れることが出来ず、そこが自身の分岐点だったと思い込み、そこを重要に考えすぎている場合だ。

今と未来の存在に気づかず、ただひたすらに解決のしようがない過去の問題と向き合っている場合、その者の今と未来はきっと白紙に近い状態だろう。

今起きていることをみようとせず、後ろを向いたままどこにも進まず時を過ごしているのだから当然といえば当然だ。


そしてきっと、今の私はそれに近い状態なんだろう。過去の自分と向き合い、前を向いているようにみえて、実際は過去を眺めているだけ。

今思えば、私は自分の本心から変わりたいと思い、理想の自分を目指したことが一度もない。

夏輝が私を理解して救ってくれて、私が同じような思いをしている夏輝を放っとくことができなくて、夏輝の真似事をしていただけ。

もちろん好きな気持ちは本当だけれど、果たして私は自分の道というものをどれだけ歩いてきたのだろうとふと思う。誰かと同じ道しか歩いてこなかったんじゃないかと。


恐らく私は、曲がりくねった道というものを歩いたことがない。複雑そうに見えて、実際は一本道という真っ直ぐな道しか歩いてこなかった。


だから、片瀬夏海と仲良くするという曲がりくねった自分の道を選んだ夏輝の気持ちが分からないのだろう。


――――――――――それは我慢ならない。それが嫌だ。


だから私は――――――――――――


             ****


「ババ抜きをしましょう。」


自身の部屋の中で、机を挟んで向かい側に座っている片瀬夏海に私はそう提案した。


「ババ……抜き?」


当然ながら、頭を傾げ困り果てた顔をする夏海。


「いきなり呼び出してきたかと思えばババ抜きって……何のつもり?」


そう、私は夏海を呼び出した。夏輝から連絡先を聞き出し、休みの日に私の部屋へと呼んだ。


「夏海は今日一日、私に付き合ってくれるだけでいい。色々と考える事があるの。」


「いや、嫌いな私を呼んで考え事って、今日私殺されたりしないよね?」


「そこまで物騒なことはしないわよ。」


「そこまで?!嫌、帰る。」


立ち上がって帰ろうとする夏海の腕を掴み、無理矢理座らせる。夏輝の部屋へ侵入し始めた際に、抵抗してきた夏輝を捕らえるために鍛えていた力がここでも発揮される。


「痛たたっ!分かった分かった帰らないから!手離せ馬鹿!」


「ごめんなさい。今日の私は、少し変なの。」


「狂花はずっと狂人でしょうが。毎日一緒にいる冬川がまともなのが不思議なくらい。」


「夏輝も充分変人よ。だってあなたと仲良くできるなら、そうありたいとか言い出すんだもの。」


「あーーー、なるほど?つまりアレ?今日呼び出したのは近づくな的なやつ?」


できることなら、そう言ってやりたい。でもそれはきっと、夏輝が選んだ道に小石を投げるようなものだ。

それは望んでいない。でも納得もいかない。彼女を認められないのは、過去の印象が強すぎるからだ。


「本当はそうしたかったけど、そうじゃない。今日呼び出したのは、私があなたを視るため。今までのような夏輝に寄り添った考えじゃなくて、私の考えと道を決めるため。」


夏輝が誰と仲良くするかを私は決めることはできないし、それを制限する事も出来ない。なら、理解できるように自分の考えを見つけるしかない。


「なるほど……それなら今日は私にとっても大事な時間になりそう。」


「……?大事な時間?」


「こっちの話。ってか、ようは仲良くなれるかどうか決めるってことでしょ?」


「それが何か?なにかご不満があるのなら……」


「いや……不満がどうこうとかじゃなくて、それでババ抜きって……どーなわけ?もっとこう……なんて言うのかな……とにかく!ババ抜きで仲良くなれるかどうかは分からなくね?」


それ以外思いつかなかった。とは、言えない。


「……仕方ないじゃないですか。」


「まぁお互いのことあんま知らないしねぇ……じゃあさ、買い物とか、行ってみる?もーすぐクリスマスじゃん?冬川へのプレゼントとか、探しに行ってみる?私結構良いの知ってるよ?」


「……!どうしてもと言うのなら……考えなくも……」


「んじゃ決まり!早速行ってみよう!」


「えっ?!今からですか?!ちょっ!」


腕を引っ張られ、無理矢理に家の外へと連れ出される。


「大丈夫!大丈夫!私に任せて!」


それが私と彼女の、関係改善への道の第一歩だった。


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