56 破滅口論
玄関前で怒り狂い、暴れる二人を見て真っ先に思ったことは、そこではやめてくれという切実な思いだった。
「二人とも……一旦中に、部屋の中に……な?ドア開いてるし、さっき外にいたおばあちゃん二人が悲鳴をあげてどっか走って行っちゃたし……勘違いされると困るから、な?」
もう既に色々と手遅れだろうと思いながらも、片瀬と狂花の二人にそう伝えたところ、意外にもすぐに喧嘩の手は止めてくれたのだが
「夏輝がそう言うなら……助かったわね性格悪悪女。」
「そりゃあこっちの台詞だ、常駐ストーカー女。」
「なっ?!誰がストーカーよ!」
「この場でお前以外のストーカーがどこにいんだよ!」
仲直りをしたわけではなく、言葉の殴り合いが今も俺の部屋で行われてるわけなのだが
(駄目だ……俺には止められない。)
白熱しすぎているのもあるが、お互いに本気の目すぎてもう一度この中に割って入ることは不可能だった。
「私の行動は愛からの行動だから、ストーカーじゃありません。」
「ストーカーは皆そう言うんだよ。だから友達いないんじゃないのか?変態常駐ストーカー女。」
「あっそ、ま、性格も腐ってるあなたには分からないでしょうね!」
「あん?今、性格も、って言ったか?もっ、てなんだよ!もっ、て!」
いや、殴り合いというより、見えないナイフで刺しあってるかのようなそんなやり取りが目の前で繰り広げられていた。
「こんなイカれたストーカー女が近くに居たんじゃ、冬川も安心して毎日過ごせてないんだろうな!」
「は?勝手な妄想で語ってんじゃないわよ!毎日毎日、凄く気持ちよさそうに寝てるわ!なんなら証拠写真みせてあげよっか?」
「いらねえよ気色悪ぃ!なんで持ってんだよんなもん!」
「毎朝撮ってるからに決まってるでしょ!ってか今気色悪いって言った?はっ倒すわよ!」
色んな恐怖を味わえる地獄の口論。だが、突如としてその地獄は、更なる地獄へと変わる。
「やっぱり変態常駐ストーカー女じゃねえか!冬川、お前ストレス溜まってねえか?なんか、変なこと本当にされてねえか?」
突然、話題がこちらへとふられ、お茶を飲んでいた腕が止まる。
「夏輝は今関係ないでしょ!」
「本人の前だからって遠慮すんな!迷惑してるならハッキリ言え!私が守ってやる!」
「はーーー?どの面下げて言ってんのよ!ね?夏輝迷惑なんかしてないよね?愛として、伝わってるよね?そんな事より片瀬に来られる方が不快だよね?」
「おい、圧力かけるのやめろ!てか、私とこいつの問題は……解決はしてねえがまとまったんだよ!おい、冬川どっちだ!」
瞬時にこの二択はすでに詰んでいると察した。
(えっ?どっちを答えても角が立つくね?どっちも不正解の二択とかありかよ……)
一瞬で色々な解答が思いつくも、この地獄を修羅場へと変える返答しか思いつかず俺は
「い、一旦落ち着こう2人共!そうだ、片瀬はどうして今日、俺の家に来てたんだ?何か俺に用でもあったんじゃなかったのか?」
全力で分かりやすく話題を逸らし、逃げたのだった。




