55 破滅級の二人
とある男の証言。
「狂花……あいつはやべぇ。何がやばいって?彼氏なら聞かなくても分かるだろ?この前お前を海に誘おうとしたら、俺のペンをへし折りやがったんだ。理由を聞いたら、余計な事をするな。だとよ。それにこうも言われたぜ。変んな事をしたら次はあなたがこうなるって……。」
とある友人の証言。
「狂花ちゃん?あーー、いい子なんだろうけど、あなたが関わった話題になるともう獰猛な獣みたいになるよね!あはは!」
とある教師の証言。
「ん?夏和が授業中どんな感じかだと?そりゃあもう舐め腐っとるなんてもんじゃない!勉強はしっかりしてるようだが、まぁなんとも口が悪い!ちゃんと言っといてくれ!五切……ごほん。生徒指導の先生は豆腐メンタルなんだと!」
聞きこみ調査は三人で終了した。いや、三人で充分だった。
「狂花……今俺が話した内容に間違いがあったって言ってくれないか?」
「無いわね。むしろ、大分優しく伝えて言葉を選んで言ってくれてるのねと思ったほどよ。」
「いやそれはもっと困るんだが……狂花、高校一年生ももう半分もない。俺以外と絡む気は本当に無いのか?」
「絡む気がないのじゃなくて、夏輝がいるから事足りてるってだけ。私に心の隙間はないから安心して?」
「素直に喜べないのが残念だ。」
要らぬお節介と思われてるかもしれないが、狂花に友人、いや、せめて仲のいい学校の人を作ってもらおうと、聞くのが怖くて今まで聞かなかった、周りから見た狂花の反応を集めてみたのだがご覧の有様だ。
(しかも当事者も全く気にしてないときた……どうしたものかね。)
いつの間にか居る自宅の自室でくつろいでいる狂花を見て、頭を悩ませるのはいつもの事だが、今回はいつもより真剣だ。
何せこの問題は絶対に解決しなければいけないし、解決してほしいと願っているものでもあるからだ。
(狂花は良い奴なんだ……なんだが、勿体ない気がするんだよな……)
前までは自分に余裕がなく、狂花がそばに居るという状況に何も思わず甘えていたが、改めて狂花との関係が一変した今、冷静に考えた時にものすごく狂花の状態は危険なんじゃないかと危機感を覚えた。
「狂花、とりあえず俺以外の奴に攻撃するのはよそう。」
特に、何故かは自分でもよく分かっていないが、特に他の人に対し攻撃的になる部分は最優先でなおす必要がある。
「攻撃はしてないわよ?動いたら刺すぞ的な?そう、釘をさしてるだけ。」
「いや、もう刺してんじゃん。相手手遅れだよそれ。」
「仕方ないじゃない。反射的に動いて言ってしまうの。気づいたら……ってよく愛にはある話でしょ?」
「暴力にもよくある話だよそれは。」
話が噛み合っているのか、いないのか、伝えたい事を理解してくれてるのか、はぐらかされているのか、周辺の関係を改善しようとその話題をだすと狂花とはいつも感じの会話で逸れていってしまう。
「……誰か来た。」
と、そんな風なことを考えていると狂花が小さくそう呟いた。
「んん?呼び鈴とかは鳴ってないと思うけど……」
「気配で分かる。あと五秒後ぐらいに鳴る。」
「いやいや、流石にそれは狂花でも……」
無理だろと言いかけたその時、家の中に、呼び出しの音が鳴り響く。
「……ね?私、ちょっと見てくるね。」
「ええ……」
たまに、ごく稀に、狂花のことを本気で怖いと思う時がある。
(もはや愛の力とかそういうの以前に、人として超人過ぎるのでは……?)
一人残った自室でそう考えていると、今度は下の方から何やら騒がしい音が聞こえてきた。廊下を急いで走ってる時のような音と、誰かが誰かと言い合ってるよう、そんな音が聞こえ
「おいおい、今度は何がおきたんだ?」
部屋を出て、階段を下りる。すると、答えは玄関前に言葉通り転がっていた。
「何しに来た性格悪悪女!」
「何よ!ちょっと話したいことがあったから寄っただけでしょ!この冬川猪!」
「ふ、冬川猪って何よ!っていうか、どの面下げて会いに来てんのよ!」
「冬川以外には攻撃するあんたにはお似合いでしょうよ!こんな面して会いに来てるよばーか!!」
玄関では、二人の女性がお互いの髪の毛や服を持って、激しく言い合い掴みあっていた。
両方とも、自分がよく知っている人物であり、出会ってすぐ喧嘩の原因も予想がついた。
「いや、もう次から次へと……どうしてこうなるんだ……」
玄関で取っ組み合いをする夏和狂花と片瀬夏海をみて、俺はまた頭を抱えることになったのだった。




