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52 文化祭6

高校生になって初めての文化祭が終了した。校内の皆が余韻に浸りながらも、各々片付けを始め、空が少し暗くなった頃には皆が下校につく。

思いっきりやり切り、思いっきり楽しんだからこそ、そこのメリハリはしっかりとしていた。


「うっしゃ、打ち上げ行こうぜー!言ってた焼肉、予約できてる?」


「もちのろん!食べ放題だから皆でガンガン楽しんじゃお!」


「おい、打ち上げ等の夜遅くの遊びは禁止だぞ。」


「はーーい先生ー。」


校内では、各階の廊下や外で打ち上げの話が盛り上がっており、どこを歩いてもその話題だらけだ。先生達も立場上注意をしているが、それが形だけというのはみんなが分かりきってることで、みんなも形だけそれに答える。


「……信じらんねえ。」


三階の窓から、そんな生徒と先生のやり取りを眺めつつ、ついさっきまで自分もそんなやり取りの中にいたことを思い出しては、それが信じられずにいる。


「見つけた。夏輝、どうしたの?」


そんな事を考えていると、横から狂花の声が聞こえる。そう言った彼女は横に並び立つと、こちらを心配そうに見つめ、続けて彼女はそれを言葉にする。


「何かあった?楽しくなかった?」


「いいや、楽しかった。とても。きっと狂花のおかげだ。」


「それは当然として、じゃあなぜ夏輝はそんなに思い詰めたような顔をして、外を眺めていたの?」


「思い詰めてたわけじゃない。余韻……とはまた違うんだが……なんだろうな。なんて言っていいのか俺も分からないけど、楽しかったからこそ、今の自分を疑ってしまっている自分がいる。」


「自分を……疑う?」


狂花の心配そうな表情に不思議が混じり、困惑したような表情へと変わる。

自分でもよくわかっていない。高校生になって、あまりにも劇的に世界と価値観と環境が大きく変化した。


「夢を見ているんじゃないかって……なんだか最近の自分は、自分らしくない時間が多すぎて……変な話だけどさ、今のこの自分も夢の中、妄想の中なんじゃないかって本気で思ってしまう時があるんだ。」


死のうと考えたことは何回もある。今でも苦しかった思い出は日常のように思い出せる。過去の自分は、これからもこんな日常が未来に続くんだと本気で思っていた。


でも、違った。想像どころか、考えたことすらなかった未来に自分はいる。

それも、夢を見ているんじゃないかと錯覚してしまうほどに楽しい思い出が続々増えていく現実の中に自分はいる。


「今日、狂花と一緒に文化祭をまわって、ようやく自分の中の新しい気持ちに気がつけた。」


「……それは?」


問われて、改めて己の中の答えに泣きそうになる。昔の自分が知ったら、例え現実だったとしても、それが未来の自分からの言葉だったとしても信じないだろうと思う。


「この世界のことが大嫌いで、なんなら憎んでたほどだったんだけどな……今はもうその逆で、大好きなんだ。愛してるって言ってもいいぐらいに。……変だろ?」


自分で言っといてだが、つい恥ずかしくなって笑ってしまう。だが、これが今の自分の中の本音だ。


俺はきっと、ずっと楽しみたかったんだと思う。そんな未来に憧れていたから、今があるんだと今ならわかる。それがあの時、終われなかった理由でもあるのだろうことも。


「……そっか。それは確かに変な話ね。」


「やっぱり?そう思うよなぁ。」


「でも、そうやって一つ一つ整理していけばいいんじゃないかしら。」


「変われるかな。未来の自分を、まだ想像できないんだ。」


「私が居るから大丈夫。」


自分に変化をあたえてくれた人の言葉が、また安心を与えてくれる。


「独りじゃないなら、大丈夫だな。それに狂花が居るってなったら、急に無敵感がでてきたわ。」


「独りが嫌なのね?わかった。今日から一緒に暮らそう。」


「そこまでは言ってねえよ。」


「あら?そう?気持ちはそこまで伝わったわよ?」


「勘弁してくれ。」


いつもの、会話に戻る。なんだかんだで、一番日常を感じさせてくれるそんな会話だ。


文化祭という非日常の中で、また少し取り戻していく。自身が今まで埋めてこられなかった、自分という欠片を少しづつ、少しづつ。


年が明けるまで後少し。まだまだ、破滅に向かう自分と幼馴染との関係は続いていく。



変わって、変われて、自分の中の悩みとどう向き合っていくか。次々と変わる環境に頭を悩ませる夏輝と狂花の二人をこれからも見守っていただきたく思います。

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