50 文化祭4
結論から言うと、大失敗だったと思う。
夏輝のクラスの「大怪獣お化け屋敷」は雰囲気はかなり暗くいい感じの演出ではあったのだが、肝心のお化け役がその雰囲気を台無しとしていた。
「が、がおーー、って、うわぁ?!」
夏輝は割と序盤の通路に配置されていたのだが、大怪獣お化け屋敷というだけあって衣装が派手で色も鮮やかなため暗闇の中でも目立っていたのだ。
その上、恐竜っぽい衣装を着てるからか、角から頭などが見えていたり、自分で衣装を踏んでしまい転けてしまったりと、色々とお化け屋敷としては機能していない感じになってしまっていたのだ。
「……ぷっ、あはは何やってるの?全然駄目じゃない。」
「そこは多少無理してでも悲鳴をあげてほしかっなぁ。」
入ってすぐ夏輝が転んで出てきた時は盛大に笑ってしまった。ただ、メイクはかなり力が入っており、色鮮やかな大きな恐竜の衣装と、怖いメイクをした人達が忙しく動いているという、凄く独特なお化け屋敷となっていた。
「リハーサルでは上手くいったんだけどなぁ。意外と怖くできてたんだぞ?暗い場所で怖いメイクをした恐竜が出てくる。これなら狂花も驚くと、上手くいくと思ったんだけどなぁ。」
「体育館とかを貸切にして、広い場所ならその大きさも活かせてたかもね。流石に教室っていう狭い場所で何十人もそんな衣装を着てたら目立つわよ。」
「的確すぎるダメ出しはやめてくれ。……はぁ。もう少し慣らしとくべきだったか。」
「驚いてあげることはできなかったけど、私は満足よ?夏輝がこうして色んな人と楽しそうにしてるところを見れたもの。」
「おいおい、授業参観じゃねえんだぞ。この衣装を着てる時にそんな事言われたら、虚しくなってくるじゃないか。」
事実だ。思っていたお化け屋敷ではなかったし夏輝本人も納得していない感じだが、私自身は、自分でも驚く程に満足していた。
普段見れない彼の一面を知ることができたからか、それとも文化祭を皆と楽しんでいる彼が微笑ましかったからなのか、それとも単純に彼と文化祭を楽しんでいるというのが嬉しかったからなのか。
それともその全てなのか。自分でもよく分かっていないが、私は間違いなくこの瞬間を楽しんでいる。
「授業参観というより、彼氏参観?彼女である私は大いに満足しています。」
「勝手に変な参観を作るなよ。……まぁ楽しんでもらえたなら、それでいっか。んじゃっ、もう奥へ行け行け。次の組が来ちまう。」
「はーーい。じゃっ、終わったら連絡してよ。まぁ終わったら直ぐに私のも始まるわけだけど、少しだけ話しましょ?」
「はいよ。じゃあクラス前で待ち合わせにしよう。」
「りょーかいっ。じゃあっ、ふふ。頑張って驚かせてね恐竜さんっ。」
最後にそう言った私に対し夏輝は、みてろよ!とだけ行って去っていった。何やら本人の中で火がついたようだが、恐らくあの見た目で怖がらせることはほぼ不可能だろう。
「ふ、ふふ。楽しいなぁ文化祭。」
暗いお化け屋敷の中で私は、夢のように思えるこの綺麗な時間を、大切に胸の中へと記憶した。




