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5 夏の朝と幼馴染4

学校の怪談というものがある。端的に言えば、ただの怖い話なのだが、学生の間ではただの怖い話では終わらない。それが怖く興味深いものであればあるほど青春の一部にしたがるのが学生というものだ。


「足が吹っ飛ぶって……それどういう内容なんだ?」


当然、この高校にも学校の怪談はある。俺は興味が無いから全くそういうのを探ってはいなかったが、今の内容は流石に少し気になる。

学校の怪談は基本、トイレや音楽室といったものが定番で、内容も似たものが多かったりするが、最近は地域によって全く異なった怪談が語られていることが多い。


「この学校の七不思議の一つらしいんだけど、聞いたことない?」


「いいや。聞いたことねえな。」


「この学校の七不思議ってね、なんだか少し不思議というか……怪談っぽくないというか。ちょっと面白くない?聞いたことないじゃんそんなの!少しワクワクしない?」


「まぁ……確かに足が吹っ飛ぶなんて馬鹿げた七不思議は聞いたことねえけど……それ本当に七不思議なのか?」


「うんうん!本当!本当!私聞いたもん!」


狂花は楽しそうに頷いてそう言ってくる。

正直、もしこんな感じの七不思議が本当にこの学校の怪談なら、作ったやつと広めたやつの神経を疑うレベルの酷さだ。しかし、こうやって面白おかしく楽しむ学生がいるのなら、七不思議としては充分なんだろう。


「昔、この学校で事故があったんだって。」


「ん?」


そう言うと、狂花は語り始める。この学校の七不思議の一つを。


「ある教師がね、ある日隠れてお弁当を早く食べようとしたらしいんだけど、その際に、この屋上に続く階段で、落ちてた黄色い皮で足を滑らせて落ちちゃったんだって……それで骨折して……その恨みで……という話らしいわ。」


「くっだらねぇ。なんだその七不思議。帰るわ俺。」


「ええ?!どうして?!今のを聞いて気にならないの?!七不思議だよ?!」


「七不思議じゃなくて七馬鹿だよそれ。明らかに作り話だって分かんだろ。ほら、帰るぞ狂花。」


少し興味を持ってしまったのを後悔したレベルの話だった。


「ええ!せっかく来たんだし試すだけ試してみようよ!」


「いやいや、試す必要もないって。てか、そもそも、教師がそんな馬鹿で間抜けなことをしてる設定は無理があるだろ。」


「馬鹿で間抜けで悪かったな。」


と、そこまで言って帰ろうと振り返ったの同時に、一人の男の声が後ろから聞こえ、そしてその声の主が目の前に立っており


「あれーー、五切川先生?どうしてここに?」


そこに立っていたのは、生徒指導の五切川先生で


「職員室にいたら、たまたま聞き覚えのある騒がしい声が聞こえたから駆けつけてみれば……何をやっているんだお前たち!!」


「すみません……あれ?ってか今さっきなんて言いました?」


「……何のことだ?」


「馬鹿で間抜けで悪かったなって言いませんでした?」


そう言うと、先生の顔はみるみる赤くなっていき、それが怒りからではなく恐らく恥ずかしさからきてるものだと分かるのはすぐだった。


「あ、あははは!そういう事?これ、先生の話だったの?」


同じくして狂花も同じ結論に至ったようで、目の前で恥ずかしがる五切川先生にお構いなく大爆笑をする。そして、流石に本人の前では笑ってはいけないと我慢していた俺も、狂花の笑いにつられるようにして


「ぷっ、あははは!マジっすか五切川先生!しかも、ぷっ、それが七不思議になってるって……あははは!」


恐らくその瞬間を生徒にみられ、面白おかしく盛られた話なんだろう。そして、その噂がどんどん大きくなっていったのがこの七不思議の招待といったところだろうか。


「……そんなに俺の話が聞きたいなら聞かせてやろう。屋上に勝手に入ろうとしたお前たちに対するありがたーーいお説教と共にな!」


「げっ?!冗談でしょ?!」


「はーー?!ふざけんな!この……」


と、また狂花が危ない発言をしそうになったので、口を手で抑え防ぐ。


「……マジかよ。」


この後しっかり怒られ、夏休み初日の午後は終了した。

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