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45 最悪の再会

ある月曜日の出来事だった。

居残りをさせられた学校からの帰り道、小さな公園にあるブランコに、一人の女子高生が座っていた。


制服が自分の着ているものとは違ったので、自分とは違う高校の生徒だということはすぐに分かった。

それ自体は何も珍しいことではないのだが、一つの問題が生じた。居残りをさせられていたこともあって空はもう暗くなっていた時間帯、公園に一人座る女子高生ということで、心配したわけでないが横切る際に視線を向けたところ、目が合ってしまった。


それが、出来事の始まりだった。暗かったのもあって横切るまで気づかなかったのだが、彼女は泣いていたのだ。そして、自分もよく知る人物だった。


「あっ……」


そう言って一瞬立ち止まってしまったのが運の尽きだった。

向こうもこちらの存在に気づいたのか、泣き顔を見られたくなかったのか両手で顔を隠すと


「ふ、ふざけんなっ!何であんたがここにいんのよ冬川!」


それは、何度も聞いた声だった。何度もよく罵倒された声でもあった。


「それはこっちの台詞だ。こんなところで何してんだ片瀬。」


片瀬夏海(かたせなるみ)。公園のブランコで泣いていた女子高生の正体は、中学生時代、俺の事を虐めていたやつだった。


                ―


ずっと思っていたことがある。今を幸せに楽しく生きている俺が、中学生時代に自分を虐めていた奴らと再会した時、俺は何を思うのだろうと。

当時のように殺意を抱くのか、それとももう何とも思わなくなっているのか、どうしても記憶の中に残り続けるあいつらに出会った時、果たして自分はどういう関係を望むのだろうと。


「あーー、最悪。本当に最悪。よりにもよってあんたに見られるなんて。ツイてないわ。」


そう堂々と悪態をついてくるのは、今さっきまで泣いていた片瀬夏海だ。

彼女は物の見事に一瞬で泣きやんだかと思えば、次の瞬間には自身の膝に頬杖をついて、こちらを睨む体勢にはいった。


「別に俺だって見たくて見たわけじゃない。というか、こんな帰り道で泣かれてたら自然に目に入るだろ。」


「は?なに?私が悪いって言いたいわけ?そもそもこんな人目の無い帰り道をあんたは選んでるわけ?相変わらず気色の悪いやつね。何を考えてるんだか。」


「じゃその気色の悪い帰り道で一人寂しく泣いてたお前はなんなんだ?俺からしたらそっちのが不気味だな。」


「はぁ?!喧嘩売ってんの?」


「売りまくってるんだよ。俺はお前が大嫌いだからな。」


自分でも驚くほどに片瀬に対し強く言い返していた自分がいた。腹が立ったとかそういう訳では無かったのだが、どうしてか自分の口から躊躇もなく言葉が発せられていく。


「……いい度胸してんじゃん。なに?高校デビューのつもり?笑える。」


「笑ってくれていいぜ。高校デビューって笑われようが、俺は変わるって決めたからな。もう性悪女のことなんてなんとも思っちゃいない。」


「へぇ。そう。なら、私ももう一回遠慮なく冬川と接せられるわ。歯ぁ食いしばれや!」


「は?何を……」


悪態返しをしていた次の瞬間だった。不穏な言葉が聞こえ、何をする気だと言おうとした直後、何故かキーホルダーが沢山ついたバックが自身の眼前にあり


「痛ってぇえええええ!!」


カバンで殴られたと分かったのは、その後すぐに強烈な痛みを頬に感じてからだった。


「バーーカ!!冬川なんて知るか!」


「あ、あいつ!」


視線を戻した頃には、片瀬は駅の方へと走り去った後だった。


これがある月曜日の放課後の出来事、俺と片瀬夏海の、最悪の再会の始まりだった。

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