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44 俺から/私からあなたに

とある休みの日のこと。その日、朝目覚めると、枕元に一通の手紙が置いてあった。


「今夜九時頃にもう一度会いに来るので、彼女と会う準備を三回確認してしっかりと自宅で待っておくように。」


最後に狂花よりと手紙にはそう記されていた。


「俺は犬か。というか、一回はもう来てたのか。狂花のやつ、今度は一体何を企んでんだ?」


毎度毎度一体どうやっているのか、自室に誰かが居た痕跡など無く、本当にそのどこで磨いたか分からない侵入技術には驚かされる。


「もしかして本当はうちの親が協力してたり……いや、怖い事を考えるのはよそう。……はぁ、じゃあ九時頃までに終わるよう、適当にやる事やって過ごすか。」


ふと脳裏によぎった恐ろしい可能性を即刻排除し、この休日でやっておこうと考えていた事の作業にうつることにした。


「でも、その前に。狂花のやつ、何がいいかな。」


作業に移るより先にそこを考えなければいけなかった。前から考えていた、狂花へのプレゼントについてだ。

特になにかの記念日とかいう訳でもないのだが、日頃からお弁当やら何やらでなんだかんだお世話になりまくっているため、何かしようと数日前から考えていたのだが


「うーーん、意外に難しいんだよなあ。やっぱりそれとなく聞いとくべきだったか?」


かっこつけてサプライズ的なことにしようと考えたのはいいが、よくよく考えたら狂花の欲しい物というのを、俺は全く知らなかった。

あんなにも一緒に居て、あんなにも話していたというのに、まさか欲しい物一つ分からないとは、流石に想定外で、思いもしなかったことだった。


「いや参ったな。これだけ居てそんな会話もしてなかったのか俺。いやいやそんなはず……思い出せ俺……思い出せ……」


何かあるはずと思い、記憶を探り過去を振り返ってみるも、思い付くのは何気ない会話達のみで


「あーー……本当に無いかもしれない。やらかしたなぁ……直感……こうなれば直感だな!うん!そうしよう!悩んでいても仕方ない。」


時間だけが過ぎるのは勿体ない。そう考え、俺は電車で普段行かない、少し大きめの商業施設へと向かうことにした。



               ―


「ふぅ……流石に疲れたな。」


プレゼントを買うため少し遠い商業施設にやってきた訳だが、大きめの商業施設など普段来ないため、休日ということもあって大量の人の数に圧倒されていた。

どこのお店に入るにしても人が多く、時には人が居すぎてちゃんとみれないところもあって中々プレゼントを落ち着いて選べず、挙句の果てには人混みに疲れ、まだ何もしていないのに椅子で休憩と、なんとも情けない結果になってしまっていた。


「いや、本当に大変だ。いつもこんな感じだったか?いや、そんなに来たこと無かったしな……こんなもんなのか。恐るべしだな。これは狂花へのプレゼント選び、意外に過酷なものになりそうだ。」


「あら?そうなの?私はもう、欲しい物選べたけれど夏輝は何で迷っているの?」


「ん?あぁ、ほらあの店の……店の?!」


「やほっ。奇遇すぎる奇遇ね。まさか、せっかく遠くに来たのにこんな場所でも出会えるなん私もびっくりだわ。」


今日の大変さを覚悟したその時だった。余りに自然に隣に座られ受け答えされたので、最初普通に話してしまったが、今、隣には、夏和狂花が座っていた、


「あのー……どうしてここに?」


「それはこっちの台詞だったわ。本当は話しかけない方が良かったかもしれないけれど、心地いい独り言が聞こえてきたから、来ちゃった。」


「やめてくれ恥ずかしい。」


「どうして?ここは喜ぶところじゃないかしら?」


流石に商業施設の椅子で独り言を喋っているところを彼女に見られ、喜べる気はしなかった。


「それで……?俺のはもう知られたとして、狂花はここに何しに?」


「欲しい物があったの。ほら、これ。」


そう言うと、狂花が手に持っていた袋から茶色い小袋をだし、こちらに渡してくる。


「開けてみて。」


「ん……?なんだこれ?」


開けると、そこには亀のキーホルダーが入っており


「私のはこっち。どう?中々可愛くない?」


同時にもう一つあった茶色い袋から、狂花が兎のキーホルダーをとりだし、笑顔でそう言ってくる。


「その亀、夏輝にプレゼントのつもりで買ったやつだから、貰って?」


「おっ!おぉ……ありがとう。可愛いし凄く嬉しいんだが……すげぇ複雑な気持ちだ……」


「特に記念日とかじゃないけれど、普段のお礼として一足先のプレゼントってやつね。この兎と亀、前々から可愛いと思ってて、ちょっと違うかもだけど、お揃いってやつってことで!」


「……ふっ、なんだそれ。いやもうほんと、何もかもがお揃いで笑ってしまうな。」


まさか考えていた事まで一緒になるとは、思いもしなかった。


「あーー、駄目だ。改めて独り言が聞かれてたのが恥ずかしい。」


「私の一足先に行こうとするなんて、百年早かったってことね。でも……その嬉しい気持ちに免じて、挽回のチャンス……あげよっか?」


「挽回のチャンス?」


「そう、このまま私とデートしてくれたら、超絶かっこいいけどどうする?」


そう笑顔で話してくる彼女をみて、敵わないなと思った。


「じゃあ、それでお願いします。」


「ふふん。良いプレゼントだと思う!彼女、きっと喜ぶと思うな。」


「それは良かった。彼氏としても何とかって感じで、喜んでいると思うな。」


「付き合ってからのちゃんとしたデートって、何気に初めてだよね。」


「そうだな。もうこうなったら、とことん楽しむかぁ。」


隣でイェーイと喜ぶ彼女が居て、それを見て少し浮ついている自分が居て、そうして俺はその日、彼女と初めてのデートをしたのだった。





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