43 学校のお弁当
ある日の昼休みのことだった。
「お弁当って不思議よね。」
「何がだ?」
狂花が突然そんなことを言い始め、お弁当について語り始めた。
「何がって言われると、何となくとしか答えられないのだけど、でもこんなに毎日ワクワクしながら食べられるのは、天才的な食べ物だと思うの。」
「まぁ確かに、お弁当は少し特別な感じはするけど、そこまで大袈裟なことでもない気がするが。」
「学生のお昼のお弁当。きっとこの空間が幸せなんでしょうね。美味しいものが食べられて、豊かなこの時間が飽きさせないのだと思うの。」
「まぁ皆が共通して楽しみにしている唯一の時間ってのは間違いないかもな。よくよく考えればそこまで長い休み時間じゃないのに、満足感みたいなんは毎回感じられる。確かに不思議だな。」
学校のお昼休みについてそこまで深く考えたことはなかったが、改めて考えると、そういえば特別な時間のように思える。
「特に、大切な人と居るとそれをよく考えさせられるの。夏輝は考えたことない?こんな時間がずっと続けばいいのにって。そんな幸福な瞬間。」
「こんな時間がずっと続けば……か。そうだなぁ、すぐに思いつくのは無いなぁ。けど、強いて言うなら今だな。今のこういう時間は確かに続いてほしいと思う。」
「……夏輝、段々と女心が分かってきたわね。今のはキュンポイント高めよ。これからもそういうことは、私の為にどんどんと発言していきなさい。」
「毎回お弁当の時にか?」
「大切な恋人の大事な昼休みの幸福度は、あなたにかかっていると言っても過言じゃなくなったわね。」
「そんな大袈裟な……そもそも毎回昼休みの時にそんな言葉吐いてたら逆に気持ち悪くなってこないか?」
流石に毎日の昼休みでそんな事を言ってきたら胸焼けしそうなものだが。
それと、自分で言っておいてなんだが、少しかっこつけすぎたことを言ってしまったと後悔している。
「おい、千川聞いたか?冬川のやつ今がずっと続けばだってさ……くくっ。」
「もちろんだよ紫川君。お熱いね〜たまらないね〜、もっと熱々にならないかなっ!」
その原因は、主に隣で笑ってやる奴らのせいなのだが。自然体で喋っていると、どうしても聞かれているかもという意識が外にいってしまう。
そのため、後々からクラスの奴らから冷やかしをうけたりと、もう慣れたようなものとはいえ、それでもまだ恥ずかしいと思う時があるのだが
「今日も皆が私達の幸せっぷりを話題にしてるわね。今日もいい昼休みだと思わない?」
「そうかぁ?俺は少し恥ずかしいんだが。」
「まだ慣れないの?全校集会みたいな場所で、皆の前でキスでもしたら吹っ切れる?」
「むしろ不登校になるからやめろ。」
こんな感じで、俺はそう思っていたとしても、狂花は全く気にもしていないといった感じなので、本当に困ったものである。
本人が周りの反応を気にしないのはいつもの事で、狂花の行き過ぎた言動もいつもの事ではあるのだが、関係が変わってからはどうも感じ方も違ってきているようで変な感じだった。
「いや、まぁ慣れ……慣れかぁ……」
その日の昼休みは、いつもと変わらない昼休みで、でもちょっと変わった内容を楽しく語った日になった。




