41 あの日、想像もしてなかった未来の日常
夏休みが明け、学校が始まった。
最近は学校を楽しく思えるようになった。心持ちが変わったからか、なんだか今までとは違う学校の見え方になり、新鮮に思えるようになった。
でも、特に変わったのは狂花の方だ。狂ったような朝の起こし方は普通へと変わり、前までは授業中だろうとお構いなしに突っ込んできていたが、最近は物凄くいい意味で大人しくなった。
それがあったからか、初めは普通の授業になった事にクラスが驚いていた。
「なぁ、夏和のやつ夏休みの間に事故か何かあったのか?」
「うんうん、私も何かあったのではと思ってたんだよね!夏休み……狂花ちゃんと何かあった?!」
それどころか、陽や千川のような絡みがあった友人達は、突如として大人しくなった狂花の身の心配をし始めるほどだ。
「別に……普通だろ。」
少し大人しくなっただけで周りのこの反応である。今まで一体どれほどこの教室がおかしな空間だったか。
「いやいやいや、こんな静かなクラス久しぶり過ぎて逆に怖いわ。絶対何かあっただろ!言えよ〜夏輝〜」
「もしかして、もしかして、二人の関係に進展があったり?!」
いや、身の心配というより、そういう話で盛り上がりたかっただけだったようだ。陽も千川も露骨にニヤニヤしてるあたり、何があったか察しはついているが、俺の口から言わせたいといったところだろうか。
「あーー、想像通りだよ、想像通り。」
「おっ?!まぁ……それで良しとしといてやるか。よっ!!おめでと!!」
「やっとかぁ……長かったねえ。お姉さん良いものがみれて幸せ……」
友人とこういう会話をしていると、改めて実感が湧いてきて、凄く意識してしまう。
「あれ〜?なんだか冬川、顔赤くない〜?」
「あーー、やめろやめろ冷やかすな。」
「おいおい夏輝、朝っぱらから惚気はやめてくれよー!」
「誰も惚気けてなんかない!」
中高生は皆、なぜこういう話題には敏感で、すぐ察知して嗅ぎつけてくるのだろう。そして仲のいい友人達と席が近いと、こういう冷やかしを含む尋問にあうのも、最早お約束のように思える。
(遅かれ早かれ、こういう話題にはなるだろうなと覚悟はしていたが、やはり恥ずかしい……)
そうしてそんな少し恥ずかしい朝の時間と、なんだかんだで盛り上がった授業を終え、昼休みに突入すると、さらに大変なことになる。
「お弁当、一緒に食べよ?」
「お、おう。食べるか。」
狂花が教室へやってきて、前への席と座り一緒にご飯を食べることになるのだが、やはりここでも注目が凄かった。
「うーーん、見られると落ち着いて食事ができないわね。少し恥ずかしいというか……何故みんな見てくるのかしら?」
「そりゃあそうだろ。良くも悪くも狂花は注目されまくってたんだから……」
「それだけで?」
「それだけって……注目の的になるには充分な前半期だったと思うぞ。」
はっきり言って、通学途中の俺との絡みもそうだが、何より授業中に逃走し、俺のクラスへやってきてお喋りをする生徒など、注目の的になるに決まっている。俺も狂花も気にしなかったが、そういう噂だって流れていた。
そしてそんな狂花が夏休み明け、急に大人しくなり、普通になっているとなれば、それはもう話題になるには充分な話で
「ねぇ、あれってそういうことだよね?」
「やっぱりあの噂は本当だったんだ!」
教室内からは、そんな言葉ばかりが聞こえてくる。
「まっ、明日には別の話題で盛り上がってるだろ。今日だけだよ。」
「皆からの祝福だと考えるようにしましょう。」
「それはちょっと大袈裟すぎる気もするが……ん、この卵焼きうまっ」
「ほんと?でもまあっ、今日のは上手くできたから当然ね。」
ドヤ顔でそう話す彼女。
そんな彼女との、学校生活が始まった。




