39 いつもと違う朝、違う日常の始まり
夏休みも明けて、最初の登校日となった朝、俺はとても驚いていた。
「い、いないだど?!」
朝目覚めると、いつも居るはずの幼馴染の姿がそこにはなかった。
「……どういうこと?」
別に居てほしかったとかそういうのではないが、突然過ぎる普通の朝に戸惑いを感じていた。恐らく、何年かぶりぐらいの一人での日常的な朝を久々に味わえ新鮮な気分になっているのだろう。
「いや……待てよ?これは下にいるパターンか?」
過去の経験から、隣にいない時は基本的に下で朝食を作っているのが普通だ。今回も恐らくはこの家のどこかしらで活動しているに違いない。
「……いない、だと?!」
そう思い、下へ行ったのはいいが、まさかの本当にどこにも居らず、正真正銘の一人の家となっていた。
「変わったこともあるもんだな……」
夏休み明けの久しぶりの登校日。どう考えても居るのが普通だと考え、そういう風に構えていたのだが、何かあったのだろうか。
「いや、考え過ぎか。用意しよ。」
危うくこれが一般的なまともな朝だということを忘れるところだった。そうして支度をして、家を出ようと靴を履いたときだった。
丁度、呼び鈴が鳴り渡り、直後に携帯にメッセージが三件ほど連続として送信されてきた。
「夏輝、私。彼女からの呼び出しには極力早く答えるように。」
慌てて俺は玄関を開け、外に出た。
すると、そこには幼馴染であり彼女でもある夏和狂花の姿があって
「やばい……狂花が呼び鈴を使う日が来るなんて……感動で朝から泣きそうなんだが。」
勝手に侵入されいつの間にか家に居る系幼馴染と過ごして数ヶ月。まさか、こんなにも普通の朝を迎える日が来ようとは思いもしなかった。
「本気で感動されると、やってよかったと思えるわね。まぁ一応?付き合ったわけだし……こういう普通の朝には少し憧れた部分もあったから……」
顔を赤面させ恥ずかしそうにそう答える彼女を見て、夏休み中のことを思い出し、こちらまで恥ずかしくなってくる。
(……にしても、ここ数日だけでも、見たことない表情や態度が凄く多い気がするなあ。これが素なんだろうか?)
付き合ってから、明らかに今までの狂花との言動が違いすぎる時があるため、絡んでる側としても調子が狂うといったら変な話だが、とても新鮮な気分になる。決して嫌な気などはないのだが、違和感を少々感じる。とはいえ
「奇遇だな。俺も普通の朝に憧れてたんだ。行こう、狂花。」
「う、うん!」
きっと、こういうのも悪くない。
「もしかして、私が居なくて不安になっちゃったりしちゃった?」
「あぁ、そうだな。異世界にでも迷い込んだのかと思った。」
「そこはそうだなだけでいいのっ!」
「そうだな。」
「もうっ!付き合ったのだからもっとイチャイチャラブラブって絡んできなさいよ。」
無茶振りが過ぎるというのと、一体どんな絡み方だそれはと突っ込みたくなるが、それを言ってしまうとじゃあ私が手本を見せる、なんてことになったら流石に通学中は恥ずかしいので、あえて黙ってスルーをした。
「スルー?!」
「いや、真剣にイチャイチャラブラブについて考えてただけだぞ。」
「そ、そう?じゃあ……」
「しない。」
「そこもそうだなでいいの!」
そんないつものような会話を、いや、いつもより深く踏み込んだ会話をしながら、学校へといつとのように通う。
そして、もう既に恥ずかしい内容ではあるのだが、学校付近でイチャイチャラブラブの言葉が狂花の口から出た瞬間に、もうほとんどスルーの意味は無いようなものだったと気づいたのは、その日の教室に入った後になるのだった。
冬川夏輝の夏休み明けの学校は、少し荒れることとなった。




