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38 自称友人の可能性

今が好きだった。私は昔から、つまらない考えの人間だったと思う。


「あっ、こう絡めばこの子は私と仲良くしてくれるんだ。」


小学四年生の時にはそういう事を考え友達を選ぶようになった。私は明るく、基本的には大体できて、愛想もかなりよく振る舞える人間だったから、中学に上がってもその能力のおかげで不自由のない良いグループに所属できた。


「あいつ、なんであんな偉そうなの?みんなあいつを思って色々言ってあげてるのに。」


「ウケる、自分のレベル分かってないんだよ。」


「ほんっと性格悪いよね。」


でも、そんな順風満帆の中学生生活を送るはずだった私に、一つの問題が生じた。ある子達への執拗な攻撃が、所属グループで行われたのだ。

一人はバスケ部のエースだとか言われていた夏和狂花という女の子だった。怪我をしたとかで、周りへの態度が悪いとかで調子に乗っていると思われたらしく、クラスのリーダー格である片瀬という子に目をつけられた。


「ね?晴もそう思うよね?」


「えっ?あ、う、うん。そうだね。」


当然、住み心地のいい人付き合いを選んでいた私は、その片瀬という女の子のグループに所属していたため、その流れに逆らうことができなかった。

自分でもまさか、こんな事態になるとは思いもしなかった。日が経つにつれ過激化していき、遂には夏和狂花は一人となっていた。


(べ、別に私が何かした訳じゃないし……気にすることでもないよね。)


可哀想だと思った。彼女がバスケ部を凄く頑張っていたのは知っていたから、怪我がもうできないとなったのなら荒れるのも分かると私はそう思っていた。けれど、特に仲が良かったわけでもなかったから、私は自分の居場所を優先した。


(私自身は何もしてない……大丈夫。大丈夫。そんなの言い始めたら周りも黙っているし……私が悪いわけじゃない。)


嘘だった。そうやって自分に言い聞かせてないと、空気を読んで見て見ぬふりしていないと、自分のことが嫌いになってしまいそうだったから、私はそうしていた。

だから、私自身は極力彼女には近づかず関わらないようにしていた。彼女の話題になったら極力その場から自然に抜けるようにして、その話題には参加しないようにと心がけた。


上手く絡んできたから分かる。こういった悪い流れは、一度逆らうと自分も呑み込まれてしまう。そして大体呑み込まれた正しい側の人間は、大抵良い結果には繋がらない。


(大して仲良くないんだし……そこまで体張って優しくする義理なんてないんだし……これは自分を守るためでもあるんだ。そう、そうだよ!私が悪いわけじゃない!)


でも、日に日に、自分に対しての言い訳が酷く苦しくなっていった。でも、それが普通で悪いことではないと思っているのは本当だった。


「だって……そうでしょう?ほとんど赤の他人なのに……助けたら自分もいじめられるかもしれないのに、助ける馬鹿なんて居ないでしょ?」


そんなドラマのようなものは実在しない。世の中、そんなに良い人は沢山居ない。だってどこを見ても、盛り上がってるのは悪い話ばかり。かっこいい話なんてどこにも存在しない。少なくとも、この学校はそういう世界だ。


「あいつ、本当何様だよ。ね?晴もそう思わない?」


「そうだね……もっと、愛想良くしてもいいのにね。」


だから私は、その時間も、正しく上手く立ち回ることに専念していた。ドラマのような展開が訪れる、その瞬間までは。


                ―


ある日を境に、夏和狂花へのいじめは途絶えることになった。

その理由としては、彼女が入退院を繰り返していたのと、それよりもやばいネタが彼女達の元へ転がり込んできたからだ。


「嘘告とか……ほんっとに最低。」


「男として終わってるよ。」


「謝れよ!冬川!」


片瀬グループである女子に嘘の告白をして泣かしたとかで、ターゲットが夏和狂花からその男へと切り替わったのだ。

男の名前は冬川夏輝。今まであまり聞いたことない名前だったけど、その子がそういった事をしているとの事で、一気に火はそちらへと向かった。


「知るかよそんなこと。そっちがなにか勘違いしてるんじゃないか?」


恐ろしく思うほどに、正直な子だった。片瀬グループに囲まれて責められてる時も、陰口を言われてる時も、何故か凄く堂々としていて、ビックリするぐらい相手に対して厳しく言い返すような、そんな凄い人だった。

驚くことに、それでもっともっと過激になると思われていたいじめのようなものが、段々とただの喧嘩になっていき、最終的には片瀬グループが正面から何かを言うことはなくなり、陰口とあらぬ噂だけが校内に響くようになった。


「凄い人だなぁ……私にはできないや。」


勿論、彼が傷ついてはいるということは知っていた。けれど、その上で彼は立ち向かって、周りを黙らせた。そのひとつの事実だけが、私にはたまらなく興味をひかれる出来事であって、私の中の何かが変わるきっかけだった。


「興味でちゃった……ちょっと色々知りたいかも。」


それは初めてのことだった。人付き合いはこうすれば上手くいくとしかそういう風にしか考えてこなかった私が、初めてそれ以上に人を知りたいと思える人で、彼に絡んだら、私の印象も悪くなると分かってても、その行動を止められなかった人。


そして、知った。学校からの帰り道、彼に気づかれないように後ろからついて行くと、彼は一つの家の中へと入っていった。


「ここって……」


驚くことに、それは夏和狂花の自宅だった。その場で色々考え、少し待っていると、二人がでてきた。そこで目にしたのは、とても仲良さそうに喋る二人の姿だった。

それを見た瞬間に、とても胸が苦しくなった。そこからだ。私という人間が大きく変われたのは。


私は、二人のことを友人などに聞いて調べた。そしたら色々と分かったことがあった。

まずは、夏和狂花は独りでは無くなっていたこと。それは冬川夏輝という男が関係している。夏和狂花が自分から絡んだとは思いにくいので、恐らくは冬川夏輝の方からだろう。私にはできなかったことだ。


そして冬川夏輝について。これも衝撃的なことが分かった。嘘の告白だらけで評判を落としまくっている彼だが、その全ては片瀬グループが流したデマだということが分かった。

言い始めた子も、本当は自分から告白したが、振られた事実が広まるのを恐れ片瀬にわざと酷くされと話したらしく、仲の良かった片瀬がそれを聞き、激怒し始まったことらしかった。


流れた噂に加え、責められた際の冬川夏輝の態度もあって、そこからはそれを面白おかしく思った連中が色々な噂を尾ひれをつけ流したらしく、彼の今の評判はそうやって出来上がったものだった。


「ごめん片瀬。私、もう無理かも。」


「えっ?晴?」


それ知ったが最後というやつだった。今までの自分がとても酷く、とても馬鹿らしい人間だったなと、そう、心が苦しくなって、気づいたら後先考えずにそう言って私はグループを抜けていた。


「冬川、だよね?ちょっとお話できないかな?」


自分から興味を持って話したのは、それが初めてだったかもしれない。彼は優しかった。特に嫌な顔もせず、私と絡んでくれた。

それでも彼は、学校終わりにはちゃんと夏和狂花と仲良くしに行くのは辞めずに、辛抱強く彼女とも優しく絡んでいた。


「凄いや……羨ましいなぁ。」


自分の周りを見た時に、そういった自分が辛い時に、優しく包み込むように親身になって助けてくれる人はいるだろうかと考えた時、誰一人として思い浮かばなかった。


「私も……」


仮に私が彼や彼女と仲良くなったとき、彼と彼女は、同じように接してくれるだろうか。彼らの関係や恋路を邪魔したいわけでは決してない、だが、友人として私もそういった関係の友人が強く欲しいと願うようになって


「変わりたい……そのためにも私がまず変わらなきゃ!」


冬川夏輝と夏和狂花と、裏表を考えない友人になりたい。それが私の中での、一つの目標となった。


そしてそれは、高校生になった今でも続いている。冬川の方は、優しいから依然として絡んでくれている。

問題があるとすれば、夏和狂花のほうだ。主に絡んではいなかったとはいえ、彼女は中学時代の私がどういった人物が知っているため、ものすごく警戒している。


だが、そこに関しては深くは考えていない。私にとって最も重要なのは、狂花の私に対する評価ではなく、冬川と狂花の関係だからだ。

恐ろしい程に近い距離の二人だが、驚くことにまだ付き合ってはいないと聞く。それでは駄目だ。二人はくっつかないといけないというのに。


「何がなんでも、二人にはそうなったもらわなければ!」


使命のようなものだった。二人の関係に憧れ、よく見るうちに、早くくっつけと思うようになり、そこからは全力応援の日々だ。

結果として、このままでは危ういと感じ始めたその時、夏休みがやってきた。


「これは好機!」


何かがおきろ。邪魔はしない。見守るように、夏休みを過ごした。夏休みのほとんどを二人で過ごしているのを後ろから見ていて、夏休み終盤、私は確信した。


「おやおやぁ?これは……もしかするともしかするのでは?」


夏休み終盤の二人の雰囲気はカップルのそれだった。

夏休み明け、冬川に問い詰めるか迷った。が、暖かく見守ることにした。


「あああああ、やっとかよおおおおお!!」


友人、千川晴は、夏休み明けの二人がとても楽しみになったのだった。



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