37 二人の特別な関係
突然すぎるその言葉に、理解が追いつかなかった。まだ目覚めたばかりという状況からくる聞き違いかなにかなんじゃないかと疑ってしまっているほどに、その言葉は、今の自分にとってはとても強力な言葉だった。
「え、えーと?狂花さん?」
「……はい。」
自身の聞き間違え、あるいは彼女の言い間違えなのではないかと確認をとろうとするも、その必要が無いことは彼女の顔を見れば一目瞭然だった。
今まで見たこともないぐらい顔を赤面させ、下を向く彼女の姿を見れば、それが本当に彼女の口から言われた言葉なんだと混乱していた頭でもすぐに分かった。
「ちょ、ちょっと一旦待ってもらっていいかな!」
「この状況で待たせるの?」
「いや、待たせない!待たせないけど少しだけ時間を忘れててくれ!」
「はい?」
首を傾げる彼女を後ろに、速攻で支度をする。どう答えるにしても寝起きの顔というのは格好が悪い気がした。後、単純に心の整理をする意味でも必要な行動だった。
部屋を出て速攻で一階に行き、そのままの勢いで洗面所へと向かい歯ブラシを片手に考える。
(いやいやいやいきなりすぎるだろお!昨夜考えてたばっかなんだが?!)
鏡に映る自分の顔は、自分でも見たことないほどに慌て、赤面していて嫌になる。嫌と言っても、それがそのままの答えなんだと自分でも気づいてしまっているので、余計に今の状況がどういう感情で居ればいいのか分からなかった。
(……でも、そのまんまなんだよな。)
うがいをする頃には落ち着いていて、改めて冷静に思い出し、その答えのことを考える。
「おはよう夏輝。それと今日は朝にもう一つ伝えたいことがあって、好き。付き合ってほしいの。」
そう言われ、戸惑いながらも、その言葉に対し初めに思ったことがあった。
(あっ……俺も……俺の言いたい事……。)
自分で思い出しといて凄く恥ずかしくなってくるが、結局のところそれが答えなんだと、自分自身の心が教えてくれている。
「……ふぅ。上に上がるのも恥ずかしく思えてきたな。」
勢いで飛び出し、そのまま扉も閉めてしまったことを後悔する。今、どんな顔で、どんな気持ちでいるのだろうか。相手の気持ちを考えると、中々に酷いことをしてしまったと思うも、それは後で沢山謝るとしてだ。
「……戻りました。」
これ以上行動を遅らせても何も意味は無いので、覚悟を決めて扉を開け、彼女と向き合う。扉を開けると、変わらず彼女はいつもの布団の横、その同じ場所に座っていて
「帰ってこないかと、少し不安になったけど。おかえりなさい。」
「う、ごめん。」
「冗談よ。そもそも朝の一番からこんなこと言われて、普通に即答されても逆に変な感じになっていたかもしれないし。私としても、色々と覚悟ができた時間だった。戻ってきてくれたってことは、返事、聞いてもいいってことよね?」
心臓が、口から飛び出るんじゃないかと思うほどに、音を立てて己の内を騒がしくしているのが分かる。
返事。返事と言っても、一度逃げ出してしまっているため、実質的に告白のような感じになってしまっているのが、余計に心を騒がしくさせている要因の一つだ。
(……世のカップル、マジリスペクトだわ……でも、でも、伝えるって決めたから。)
一呼吸置いて、狂花の前へと進んで前に座り、彼女と視線が合う。
「ふぇ?!」
そう声にし赤面している彼女をみて、きっと彼女と同じくらいに今の自分も赤面しているのだろうなと思いつつ、意を決してそれを口にする。
「俺も、狂花のことが好きだ。」
彼女は制服で、俺はパジャマで、雰囲気なんて何一つない部屋の中で、俺は確かに彼女にそう伝えた。
「だから、その……オツキアイも、ゼンゼン、イイトイウカ……」
そしてそれに全力を使い切ったので、その後を盛大に失敗した。
「ほ、本当?!」
でも、それでも彼女には無事伝わってくれていたようで
「あ、うん……本当……だ。」
「や、やった!えへへ、良い事聞いちゃったなあー?あっ!も一回聞きたいなあー?」
こちらをからかっているのか、それとも喜んでの笑顔なのか、やっぱり少しこちらをからかっているような笑顔の彼女をみて、それがどうしようもなく可愛くて
「……ごめん。」
「ふぇ?」
気づいたら彼女の腕を引っ張っていて、キスをしていた。いつもの自分を思うとありえない行為だった。今も、心臓が人生で一番うるさくしていて
でも、そんな事どうでもいいと思えるほどに
「狂花……好きです。俺と、付き合ってください。」
今までの自分なんかどうでもいいほどに、彼女のことを好きだと感じたんだ。
「……ふ、ふぇえ?い、い、良いんだけどさ、急に、急に……積極的過ぎない?!わ、私、び、びっくりして……して、ずるい……私が先に言ったのに……」
「ええ、気にするとこそこなの?」
「そこよ!良いんだけど、良いんだけどさ、なんだか夏輝にしてやられた感がして悔しいというか……むぅ。でも……ありがとう。凄く嬉しい。」
「……良かったぁ!心臓がもう限界だった。」
「それはこっちの台詞よ!!」
お互いにまだ顔は赤面のまま、けれどもお互いにどこかスッキリしたような顔で笑っていた。
そうして俺達は、特別な関係へと、進歩したのだった。




