36 夏和狂花の想い
「狂花……俺の考えは凄く変わった。凄く変わってたんだ。自分でも驚いているんだけど、理由は分かってる。狂花が、俺のそばに居てくれたからだ。」
「ありがとうずっとそばに居てくれて。どうしようもない考えをしていた俺を救ってくれて、本当にありがとう。」
「ああ、俺はもう前を向けたらしい。どこかのやばい特別な幼馴染のおかげでね。」
はっきり言って、その言葉に実感が湧かなかった。彼が好きで、彼を救いたくて、その一心で彼のそばに居続けたけれど、彼が笑っていても、本当に心の底から笑ってくれているのか、周りを安心させるための笑顔なのではないのかと思うことが沢山あった。
自分が死んで悲しむ人間がいる間は頑張って生きよう。彼のその言葉を聞いた時から、本当の彼が分からなくなって、それでも好きだったから彼を知ろうと沢山努力した。慣れない行動はもちろんの事、言葉だってなるべく隠さず伝えるようにもした。
手探りだった。彼が何を考えているのか、何をどうしたら自分の気持ちと私の気持ちをもっと考えてくれるだろうかと。思考錯誤の日々だった。
だから彼にそう言われた時、それが本当の気持ちなのか、それとも安心させるための嘘なのか疑ってしまった。でもその後、彼の笑顔をみて思った。
(あぁ……私が見たかったものだ。私は、彼とこうやって笑い合いたかったんだ……)
嘘偽りのない素敵な笑顔だった。だから、安心した。そして同時にこうも思った。
(あれ……これからはどう接していくのが正解なんだろう……今までのままで良いのかな……)
途端に分からなくなり、迷うようになった。そしてそんな自分が嫌になった。そうじゃないと。ただ救いたくてこの関係になったんじゃない、好きだから救いたくて寄り添ったんだと。
だから、これでいいのだと悩むのはやめた。より積極的に、彼と絡むようにした。お泊まりから始まり、そして海に行って、改めて自分の気持ちを再確認した。
(うん……やっぱり大好きだ。)
変わらない、むしろ強まったと言っていいほど、私は彼が大好きだと改めて思った。そうして、自身の気持ちを更に深めたところで一つの疑問が思い浮かんだ。
(彼は……この変わった関係をどう思っているのだろう……)
私は彼の、彼は私の、お互いの気持ちを分かり合い察したはず。何か、何か思うところはないのだろうかと。
そして、恐らくはお互いに同じことを思いながらも、そこに触れ合うことはせずに海の時間が終わり、帰ることになった。自分でも情けないと思うほどに、その話題を話すことができなかった。怖かったのと、恥ずかしかったのだ。
今まで散々と似たようなことは沢山伝えてきたのに、なんだかいつもより話しづらく、言い出せなかった。そして家に帰って、なぜ聞かなかったのか、ひたすらとその夜は悶々とする自分と戦った。
「うう〜、情けないぞ!いけ!最後の最後!大一番!勇気を出せ!夏和狂花!」
自分に言い聞かせるように、そう何度も何度も自分を鼓舞してそして。
「おはよう夏輝。それと今日は朝にもう一つ伝えたいことがあって、好き。付き合ってほしいの。」
そうして気づいたら、居ても立ってもいられなくなり、朝に、彼にそう伝えてしまっていた。




