34 幼馴染と海2
自分の考えが変わって、何かが変わったわけじゃない。そう思っていた。
だが、元々考えすぎる性格の自分が、そんな割り切って考えられるわけなかった。
「夏輝?どうしたの?ぼーーってしちゃって。」
水着ではしゃいでいる幼馴染をみて、やはり見る目は変わってしまう事に気がついた。
「いや……なんでもない。」
いつものような日常で、いつもとほとんど変わらないやり取りの中で、俺の心は確かに変わっていた。
「なるほど分かった。私の水着が想像以上の想像以上をいく可愛さで見惚れちゃった?」
「自分で言うのもなんだが、残念ながら俺の想像力はそんな豊かじゃない。」
「……似合ってない?」
わざとらしく下を向いてそう言ってくる彼女。言わせたがりなところには毎回困らされる。
「ねえ、どっち?好きか似合ってるかで答えてほしいな。」
「一択しかねえじゃねえか。それ答えて嬉しいのか?」
「私は、好きな人からは褒めてもらいたいし、好きって言ってもらいたいの。」
「……似合ってるんじゃないか。」
「……むぅ。こんなあからさまな二択を外すなんて、分かってないね夏輝は。」
前までの関係なら、きっといつもの軽口のように正しい方を言えたんだと思う。どうしてか、もう一つの方の、好きとかそういう感情の言葉を言いずらくなっている。
いや、理由は分かっている。けど、元々の関係もあって、その感情を表にだすことで、また関係が変わることを恐れている自分がいる。
自身の自己犠牲的な優しさから始まった歪な関係。結果的に、お互いが助け助けられ、更には感謝のその先の関係までになってしまうという奇跡的な結末。
はっきり言って奇跡でもできすぎている関係に着地してしまっている。偶然一人同士で、助けを求めていて、そして仲良くなってお互いが救われて、今までの関係が終わりを迎えて。結果、それで終わることなくそれ以上の関係になりつつある今。
言葉にすることでどうなるのか。きっとその先にはいけるのだろう。だが、もしこの感情が本物で、伝えたとして関係がどう変わるのか。
「そうだな、俺はまだ何も分かってない気がする。」
狂花の好意が嫌なわけじゃない。むしろ自分もそういう気持ちはある。だが、それは本当に好きだからなのか、助けられたからなのかが分からなかった。
「……ふーーん。ま、私は夏輝のこと色々知ってるけどね。少し残念だけど、まあいいわ。これから嫌ってほど私の凄さを心に叩き込んで、分からないなんて口が裂けても言えないようにしてあげる。」
「それなら安心しろ。ヤバさだけは充分伝わってる。」
「そう、じゃあ後は狂花の魅力パート二をまた一から教えるだけね。より刺激的な毎日になること間違いないから、惚れなおしなさい。」
「二周目があったのか……」
窓から気づかれずの侵入から始まり、その他もろもろやばい行動は沢山あったが、まだまだやれることがあるとは思わなかった。惚れなおすというより、今から既に震えそうなぐらいには彼女の魅力は充分伝わった。
そしてそんな会話をしながら海で遊ぶこと一時間と少し。辺りは暗くなり、もう海辺に残っている人も少なくなった時間帯で。
「もーそろそろ限界ね。私達も帰りましょっか?」
「そうだな。遅くなりすぎるのもよくないし帰るか。」
新しくなったお互いの関係を確かめるような、今の自分達が今までとどう変化した関係になっていくのか。お互いに明確な言葉で確かめ合うことはしなかったが、確かに二人ともが、お互いの気持ちが変化したことを、そしてこれからはその気持ちをお互い持ったまま、普通の関係を築いていくのだと、改めて自覚することになった海のデートは、そうして終了した。




