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33 幼馴染と海

夏休み。数多くの楽しいイベントがあり、学生からしたらたまらない休みの期間。そしてその休みをとことん楽しくしているのが、夏祭り、花火、海といった、夏という季節を代表するものたちだ。そしてその季節の思い出として、記憶に根強く残るもの。

だが、大体の者が楽しいという印象で終わるこれらにも、当然例外はある。夏祭りは一人では寂しいし、花火も毎年一人だと悲しくなってくる。そして何より海なんかは、そもそも泳げないという問題もある。


どれもこれも、一人を極めていた俺にとっては関係の無い話だと思っていたが、驚くことに高校生になって始めての夏休みで、これら全てを満喫する時がやってくるとは夢にも思わなかった。


「夕方……けれど、少しぐらいならまだ遊べそうね?」


何気無い顔でそう言ってくるのは、今朝、突然海へ行こうと言いだした夏和狂花だ。自宅から少し自転車を走らせたところにある駅から、数十分の電車の旅の先にある海。海水浴場としてよく大勢が集まる人気スポットでもあるそこに、もう日も暮れそうという絶妙に人が少なくなった時間帯にやってきたのはいいが、時間としてはもう少し早い方が楽しめただろう。


「遊ぶっていっても、もう言ってる間に暗くなるぞ?」


「時間一杯に夏輝と泳ぐことができないのは残念だけど、まぁ海に来たってだけで楽しいから気にしない。それに、泳げなくてもこの辺をふらふらっと散歩するのも案外良さそうじゃない?雰囲気あるし。」


「まぁ狂花がそう言うなら、俺も特に気にしないけどさ。それに俺……」


「泳ぎ苦手だもんね。昔、家族と行った時に溺れかけたんだっけ?」


「そうそう。水泳やってたからかな。強がって浮き輪無しで深い所に行ったら、案の定流されかけてな。幸い、家族連れの大人も結構居たから、その人達に助けてもらったんだけど。その時から、泳ぎが苦手というより、海が苦手になった。」


今でも思い出す。溺れた時に沢山飲んでしまった海水による喉の気持ち悪さと、あのどうにもならない苦しさを。


「じゃあ深いところに行って、人工呼吸ごっこでもする?」


「話聞いてた?ってかそれどんな遊びだよ。」


「浅いところで溺れるのは嫌でしょ?別にそっちでも構わないんだけど……どっちが好み?」


「なぁ、泳ぎに来たんだよな?なぜ俺が溺れる前提の話しかないんだ?」


一体どういう事を日頃から考えていたら、幼馴染に人工呼吸ごっこをしようなんて言える発想が思いつくのか。しかも真顔で言ってくるあたり、本当に隙あらば溺れさせようとしてくるんじゃないかと疑ってしまう。


(……やってきてもおかしくないんだよなぁ。)


「流石にそこまではやらないわよ。」


「心を読むな。」


「そんな回りくどいことするくらいなら、直接キスした方が早いじゃない。どうせするなら私ならそうする。」


「それはそれで反応に困るな……」


よくもまあ、先程から恥ずかしがらずそういう事を言えるものだ。


「さて、もう海の前まで来ちゃったわけだけど、どうする?少しだけ泳いでイチャつくか、それとも浅瀬で水掛けでもしてイチャつくか。」


「どっち選んでもやる事一緒じゃねえか。」


「そうよ?私のやりたい事だもの。やってくれるでしょ?」


「……まぁ、折角来たんだしな。そういう話でもあったし。どうせなら両方ともやろう。でも、暗くなったら海は無しだぞ。」


「さっすがー!じゃあ、急いで海で遊んじゃお?」


結局なんだかんだ言って、二人して水着になって遊べるだけ遊ぶことになった。

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