31 より濃い関係
いつもと違う朝がやってきた。いや、周りが見れば、いつもと何も変わらない朝ではあるのだが、本人たちの間ではそれはいつもと違った朝だった。
なぜ違うのか。その理由は明白だった。幼馴染である夏和狂花とのお泊まりである。今までのような気づいたら何故かいるお泊まりではなく、ちゃんと同意した上でのお泊まりだった。
昨夜、突然決まったことではあったが、お互いに断る理由もなくそのままお泊まりとなったわけだが
「意外と普通だったな。」
何かしてくるんじゃないかと思っていたが、本当に普通のお泊まりの夜だった。話して、寝て、朝起きて隣見たら、いつものように隣にいる。
「おはよう夏輝。」
「あっ、ああ。おはよう狂花。なぜ横に?」
だが、違うのはそこからだった。布団は分けたはずなのだが、何故か自分の狭い布団の中で、一緒に寝転んでいる幼馴染の顔がすぐ横にあった。そう、これさえ無ければ、いつもと同じ、まだ理解できる朝を迎えるはずだったのだが
「気づいたら吸い寄せられていたの。不可抗力だから許して?」
「俺の布団にそんな特殊能力は無い。っていうかいつ入ったんだ?」
「夜中に目を覚ました時に、入りたくなったから入ったわ。おかげさまでよく眠れました。」
「そうだろうな。俺の腕と布団を贅沢に使ってるんだ。そりゃあよく眠れただろうさ。」
右腕を勝手に腕枕に使われており、更には布団もしっかりと自分側に寄せているため、俺が布団をかぶれていたのはほんの少しだけだった。
「うん、ごめん。やっぱり中途半端よね。本当は夏輝を抱き枕にしてそれで寝ようかと思ったんだけど……初めは腕からの方がいいかなって……次からはちゃんと抱きしめてあげるから、今日はこれで許して?」
「俺が不満を感じているのはそこじゃないし、俺が満足していないみたいな言い方をするんじゃない。」
「でも、朝起きた時に腕の中にいる美少女幼馴染より、自分に抱きついている美少女幼馴染の方がシチュエーションとして完璧だし嬉しいでしょ?男心が分かっていなかったのは反省するわ。」
「どこまで本気で言ってるか分からなくなるからやめてくれ。」
「寝ぼけてるの、許して?てへっ。」
痺れる腕の中、真横で寝ている幼馴染が、悪戯をした子供のように舌を出して笑う。
「嘘つけ。なんだかリミッターみたいなのが外れてないか?」
「気のせいよ。私は元々これぐらい積極的。今まで大人しくしてたのは、まずは振り向いてもらわないと駄目って分かってたから。だから慎重になってただけ。」
「嘘だろ?あれで大人しくしてたつもりなのか?」
「えっ?ええ。当然じゃない。本当ならもっとアレよコレよとやりたかったのだけれど、距離感は大切にしないといけなかったから。」
平然とした顔でそう言ってくる幼馴染をみて、もしかしたら自分はとんでもない女性に心を許してしまったのではないかと不安に思う。
「でも、これからはもうそういう心配はしなくてよさそうだから……覚悟しててね?」
「まだなにか進化するのか?」
「当然っ!今までは振り向いてもらうのに必死だったけど、これからは目を離さないでもらうために必死になるんだから。もっともっと、積極的になるからよろしくね?」
「……おやすみ。」
想像どころか、考えることすら恐ろしい発言に俺は恐怖を感じ、腕枕を素早く抜き、布団を少し取り返し、俺は狂花とは別方向の方を向き布団に包まり
(うん、これはきっと何かの間違いだ。夢のはず。夢であってくれ。)
後ろから抱きしめられる感覚を味わいながら、俺はこれからの高校生活を無事に過ごせるのかと、ただただ不安となった。




