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26 幼馴染と夏祭り3

祭りの屋台が並ぶ街道から少し横に逸れたところに、小さな公園がある。小さな滑り台とブランコ、そして気持ち程度の砂場だけのこじんまりとした公園だ。


「ここ?雰囲気とか一切無いわね。」


「あぁ、雰囲気とかは一切無いな。」


狂花がストレート過ぎる印象を伝えてくるが、当然だろう。俺自身も自分で探してみつけたわけではない。祭りの雰囲気が好きで特に用もなく一人でうろついていた時にたまたま花火が綺麗にみえた場所だったというだけの場所。

でも、この場所からみる花火が俺は好きになった。人混みから離れた場所な上、人気もない公園のためとても静かで、辺りを照らす街灯などもないので本当に花火が綺麗な照らしをみせてくれる。


「ふーーん、それでもここが一番のオススメ?」


「当然。花火を楽しむならここって決めてるぐらいにはオススメだ。」


「じゃあ、ここでいい。」


「絶対満足してくれると思うな。」


全く雰囲気のない場所で言われても説得力は皆無だろうが、ここだけは自信をもって言える場所だった。


「……そろそろだね。」


二人してブランコに座り、空を見上げた直後に狂花がそう小さく呟いたのが聞こえる。

そうして、花火は始まった。暗く静かな公園に、花火の音が鳴り響き、空に打ち上げられた花火が、暗い公園に明かりをつける。


「あぁ……これは確かにいいかも。凄く落ち着く。」


胸に手を添え空を見上げそう言った狂花を横目にみて、気に入ってくれてよかった、連れてきてよかったと思う。


「だろ?静かで、綺麗で、ゆっくりできてすごく落ち着くんだよなここ。」


「でも、不思議。こんなにいい所なのに誰も来ないなんて。独占できて嬉しいって気持ちはあるけど、なんだか悪い気もする。いや、でもやっぱり、夏輝と二人っきりのこの空間がいいかも。」


「祭りは一人より大勢の方が楽しいぞ。一人マスターの俺が言うんだから間違いない。」


「寂しいこと言わないでよ。というか、凄く説得力があるわね。」


当然だ。皆と来ていたらなんて、ここで大勢と話していたらなんて妄想は沢山した。絶対に楽しいに決まっている。一人も悪くは無いが。


「でも、今年は私が居るんだから他が居なくても寂しくないでしょ?」


「……まぁ、一人よりかは満喫できてるかな。」


「夏輝、来年も来ようね?」


「さぁーー、それはどうかなぁ。いい人がみつかってるかもしれない。」


「大丈夫、別れさせる策は沢山ある。準備は万端よ。」


軽いいつもの言い合いのつもりで言ったのだが、そこだけ本気の声音だったので一応冗談だと伝えておく。


「やめてくれ冗談に聞こえない。俺のは冗談だ。どうせ来年もぼっちだろうし、一緒に来てくれたら嬉しい。」


「そこは素直に、一緒に行こうねだけでいいのよ。」


結局、花火が終わるまでそんな会話が続いて、気づいたら、夏の醍醐味である夏祭りは終わりを迎えていた。


「夏輝、今日はありがとっ!また明日行くから夏休みまだまだ楽しもうねえ!」


「あぁ、こちらこそ楽しかった。それと明日は夏祭り無いぞ。」


「?、夏輝の家の話をしてるのよ?」


「俺の家に居るのは最早当たり前の日常になってるんだな。」


いつもより近い関係と距離感になっていたように思えていたが、実は日常とさほど変わっていない距離感だったということに今更気づくのは、夏祭りマジックだろうか。


「今日は、一緒に来てくれたから大人しく帰ってあげる。だからいいでしょ?それに今更じゃない?」


「今更って……あぁ、今確かにって思ってしまった俺は相当やばいんだろうな……」


「じゃっバイバイ夏輝!そういうことだから!おやすみー!」


「……さよですか。おやすみおやすみ。」


そう言うと、それぞれそこから何も無く帰ることになった。今思えば、夏祭りという特別なイベントがあっただけで、いつもと変わらない日常でもあったなと思う。


そして明日からもそんな日常が続いていく。段々と、特別に思えるようになってきた日常が。

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