22 自称幼馴染について5
怪我から復帰後、退院したからといって完治したわけではなかった。何週間か病院には通うことになり、しんどいリハビリもしっかりとあった。
「しんどそうだなあ。どんなに辛いか想像もつかないな。」
その間も、自称幼馴染である冬川夏輝は何かしらのやり方で接触してきた。携帯などもそうだが、病院についてきてくれたりもした。別に頼んだりしたわけでは無いけれど。
「おーう、おかえり。どうだった?」
時には勝手に自宅にいたりもした。最近はもう、居るのが普通のような感じになってきていた。
「すっごくしんどかったわよ。もの凄く気分が悪い。」
「また誰かにきつくあたったりしてないだろうなぁ。」
「……知らない。別にいいでしょ。」
「マジかよ。まぁ、いいんならいいんだけど。」
最近の自分は変わった。それは間違いないけれど、唯一変えられないところがあった。ひねくれた考えだけは変わらなかった。優しくされると、辛さを知らないくせにとか、部活の皆を見るだけで腹が立ってきたりとか、そういった感情が声音や態度にでているのか、やはり皆との衝突だけは治らなかった。
「ねぇ、今日だけは帰ってくれない?腹が立ってるから。」
今だってそうだ。いつもなら帰れとまでは言わないのに、自然と言葉がでてしまう。
「あーー、話したいことあったんだけど。」
「いらないってそういうの。早く出ていって。」
「怒りが収まるまで、外に出てきたらどうだ?話したいことあるんだ。」
「なんで私が出なきゃ行けないのよ……ここ、私の家ですけど?!はぁ……本当にめんどくさい。勝手にしなさい!」
これもいつものパターンだ。意地になって、口を聞かず無視したのはいいが、何故か私が居心地悪くなり
「……話ってなによ。」
私が折れて彼に話を聞くことになる。
「ああ、今日の晩御飯カレーだそうだ。」
「……ふっ。なんであんたが晩御飯知ってんのよ。本当、鬱陶しい。」
そしていつも、本当にどうでもいい、意味のわからない他愛もない話をして、気づいたら関係は元通りになっている。
恐らく、そうなるのは冬川夏輝だけだ。こんなにも自己中でめんどくさい女に、辛抱強く絡んできてくれるのは、認めたくないけどこいつだけだ。
(みんなとも、こんな感じで喧嘩ができたらなぁ。)
ただ衝突して終わるのでなく、その後も続くことはとても難しい。正しく友人として喧嘩ができる人がいるのは、本当に幸せなことなのかもしれない。
「あぁ、機嫌がなおったところでなんだが……」
私には、今のところ一人しかいない。認めたくないが、このやばい幼馴染である冬川夏輝だ。冬川夏輝がいなかったら、今の学生生活をどう過ごしていたか分からない。
「……はいはい、またしょうもない話でしょ?」
私みたいな嫌われ者と絡んでいても何もいいことはないのに、彼は結局卒業まで私と一緒に居てくれた。とても、支えになった。
そして私はそんな彼のことを好きになり、彼のことをもっと知りたくなり、彼の夢を知ることになった。
私は後悔した。何故もっと早くに気づけなかったのか。気づいてあげられなかったのか。彼は優しかったのではなく、破滅的だっただけということに。
そして私は決心した。冬川夏輝が私にそうしてくれたように、私もまた、彼の支えになろうと。救われたぶん、これからは私が彼を救っていこうと。
私の日常は、破滅的な幼馴染と共に。




