2 夏の朝と幼馴染
高校生になって初めての夏休みがやってきた。
「ふわぁ。うん、いい天気だ。」
朝に起き、カーテンを開け、青い空と眩しいほどの陽射しをみて、本格的に夏休みがやってきたのだと改めて実感する。
「……流石に夏休みまではやってこないか。」
窓の外にはいつもの彼女、夏和狂花の姿は無かった。そして当然、部屋のどこにも姿は見当たらない。
「いや、実はタンスの中に居たりして……」
人が入れそうなタンス、服を収納する縦長のところをそっと開けてみる。
「はは、考えすぎか……」
中にはしっかりと服が入っており、人が入れる隙間などは無く、当然彼女の姿も無かった。
夏休み初日の朝に、自分は一体何の確認をしているのだろうと馬鹿馬鹿しく思うも、居ても恐らく驚かないであろう彼女の存在の大きさに、色んな意味で考えさせられる。
「……あぁ。そういえば、父さんしばらく帰ってこれないんだっけ。朝ご飯買いに行かなきゃ。」
昨夜の父との会話を思い出す。
「一週間ほど帰ってこれないけど、明日から夏休みだし、大丈夫だよな?お金とかは机の上のやつで足りるはずだから、留守番しっかり頼んだぞ。」
父はそう言って仕事に行った。ということで、これから一週間は家で自分一人ということになる。
「洗濯物とか色々怠けないようにしないとな。」
と、そんなことを思い階段を下りていると、ふと卵焼きのとてもいい匂いがしてくる。
「……ん?んん?」
家には一人のはずなので、そのような事は絶対にありえないのだが。
「あら、おはよう。もう少ししたら、起こしにいこうかなと思ってたんだけど。ごめんなさい、あと少しで完成するから顔とか洗ってきなさい。」
階段を下り、匂いを辿って台所の方へと足を進めた先に、彼女がいた。
「……狂花、何をしてるのかな?」
「何って……私達の朝ご飯を作っているんだけど……」
制服にエプロン姿の幼馴染が、朝起きたらご飯を作ってくれている(無断)状況があるのは世界を探しても恐らくこの家だけだろう。
「なるほど……そうきたか……」
自身の彼女に対する認識の甘さに、朝からクラクラとした。