18 自称幼馴染について
学校からの帰り、自宅のマンションの近くで、後ろから一人の男から声をかけられた。振り返った先にいたのは、どこか見覚えのある顔の男で。
「……誰?」
「おいおい、忘れたのかよ。俺だよ俺。」
知り合いみたいに話しかけてきては隣に並んでくる男。同じ学校の制服なので、知り合いかどうかは分からないが顔見知りではあるのかもしれない。
「ごめんなさい。どこかで絡んだことあった?」
「嘘だろ?つい最近、小学四年生ぐらいの時よく遊んだじゃねえか。俺だよ冬川、冬川夏輝だよ。幼馴染の顔を忘れるって酷いな。」
「覚えてるわけないでしょそんな昔のこと。てか、うん思い出した。そんな名前の人と二、三回遊んだことはあった気がする。よくそんな軽い感じで絡みに来れたわね。」
「幼馴染だからな。そういうもんだろ狂花?」
気安く下の名前で呼んできているが本当に仲が良かった記憶がない。数回遊んだ程度、そのぐらいの関係性だというのによくもまあ友達のような感じで話しかけてこれたものだ。
「勝手に幼馴染にしないで。今話すまで、あなたのこと忘れていたのに。」
「刺々してるなぁ。そんなんじゃみんなどんどん離れていくぞ?」
「あなたが馴れ馴れしいのよ。」
「じゃあ似た者同士だな。さすが、幼馴染。」
「は?」
ただでさえ最近はイラつきやすいというのに、こんなどこの誰かぐらいしか知らないメンタル馬鹿野郎の相手をしている余裕は、今の自分にはない。
「あのさ、用がないからもういいかしら?私たち友達でもなんでもないよね?変な絡みがしたいだけなら、他の人にしてちょうだい。さようなら、冬川君。」
「あーー、待ってくれ。無駄口だけじゃなくてちゃんと話す内容も持ってきたんだ。」
「興味無いかな。明日、他の誰かにその内容を教えてあげなさい。じゃっ」
「分かった。じゃあ明日の俺が狂花に話したいらしいから、話だけでも聞いてあげてくれ。」
無駄口というより減らず口、いや、その両方の言葉が似合う男だ。時間を無駄にするというのはこういう時間を言うのだろう。
「……馬鹿らしい。本当、いきなりなんなのよアイツ。」
きっと怪我をする前の自分でも今の会話にはイラついていただろう。
だが、その日の私はまだ知らなかった。この日、この瞬間から、私の毎日が、大きく変わっていくことを。




