17 幼馴染を知る
中学生の時、何もかもが悪い方向へ進んだ時期があった。他人の不幸なんて、いくらでも近くで見てきたはずなのに、沢山知ってたはずなのに、どこか他人事だった。
「……ありえない。どうすればいいの?」
取り返しのつかない不幸を経験して、どこか他人事だった不幸が自分を襲った時、初めて私は泣きたくなるほどの不安がどういうものかを知った。
「よりにもよってどうして……」
大きな怪我をした。バスケットボールが好きでバスケ部に入っていて、スタメンに選ばれ、キャプテンも任されて、今思えばかなり幸せで幸運だったと思う。練習の中で行われた部活内での練習試合の最中に、自身の足首から、手で紙を思いっきり破いたかのような音がした。
私は倒れ、ただひたすらに痛みに耐えられず泣き叫んでいた。すぐに運ばれ、そのまま病院へ直行だった。
そしてその後運ばれた病院で、アキレス腱がちぎれかけていると言われ、手術が必要だと言われた。
「これからは激しい運動は控えるようにしてください。」
手術は成功したが、自力で普通に歩いて生活するには、長いリハビリが必要だと言われた。そして、仮にリハビリが上手くいっても極力運動は控えるようにとも。
「よかった……上手くいって。一緒に頑張っていこ?歩けるようになるよ!」
母は喜んでいた。だが、私は素直に喜べなかった。実感が無かったのだ。
(あれ?私……もしかしてもうバスケできないの?)
分からなかった。私はよく分からなかったから、勝手に色々と話が進んで、そして気づいたら、私は大好きだったバスケができない身体になっていた。
あれだけ好きで本気で頑張っていたのに、あんな一瞬の出来事で、こんなにも呆気なくこれまでを否定された事実に、私は理解が追いつかなかった。
「なわけ……そんな訳ないよ。」
術後、少しの期間を経た後、松葉杖での登校が許可された。
「あーー、やるよやるよ。無理しなくていいよ。」
「階段、手伝うね?」
「無理して来なくていいよ?足、大変なんでしょ?」
でも、そこは私の知ってる学校じゃなくなってた。友達も親友も先生も先輩も、どこか壁を感じて、今までの関係が嘘だったかのように思えた。勿論、みんなが優しくてそう言ってくれるのは分かってる。けれど、そう考えてしまうようになっている自分がいる。
「……私が、変なのかな。」
バスケができなくなっただけ、運動ができなくなっただけで、ここまで大袈裟に考えてしまっている私がおかしいのだろうか。
「なわけ……なわけないでしょ……分かるはずないんだよ……皆に……私の気持ちなんか。」
上手くいかないことが、これだけ悔しくて、腹の立つことだとは知らなかった。いや、考えたことすらなかった。
友達や親友や家族、部活の先輩後輩に対して、段々と素っ気なく冷たい対応になっていった。そんな自分も嫌になっていくという負の連鎖に陥った。
「……ウザイ。何も知らないくせに。知ったような口して優しくしてこないでよ……ほんと腹立つ。」
学校だけじゃなく、帰る時も段々と一人になる時間が増えていった。そして、一人で愚痴りながら帰るのも当たり前になってた頃のことだ。
「お前、泣きながら何言ってんだ?」
部活をズル休みし、いつものように愚痴りながら帰ってた私に、一人の男が声をかけてきたのは。




