16 幼馴染と祭りについて
八月九日の夜、俺は、幼馴染である夏和狂花の家へと向かった。とても、本当にとても気が乗らないが、どうしても言っておかなければいけないことがあるからだ。
気が乗らないのは、過去の経験から考えて、今回もろくな事にならないと分かるからだ。彼女の家には数回だけ行ったことがあるが、そのどれもいい思い出がない。
更に言うと、俺が行く時の夏和狂花はとにかくやばい。何がやばいかと言うと、もう何もかもがだ。現に、家の前までやってきたこの瞬間からもうやばい。
「遅かったわね。もう少し早く来ると思ったんだけど……」
先に伝えて何かされるのが恐ろしかったので、何も伝えず会いに行き、伝えるべきことだけを伝え速攻帰ろうとしていたのだが、何故か、何も知らないはずの狂花が、家の前で当たり前のように俺の事を待っている。
「あのー、なぜ分かったのかな?」
「愛の直感。」
「愛ってそんな万能なものだったけ?」
「この世で一番強いエネルギーよ。だから、なんでもありなの。」
それは恐らく狂花のみで、お前だけが扱えるエネルギーだろうと、一々突っ込むのも段々と面倒くさくなってきた。というより、狂花が言うならもうそういうものなのだろうと、割り切った方が楽なのではないかと思うようにもなってきた。
「……相変わらず滅茶苦茶な理屈だな。」
「いずれ分かり合えたら嬉しいな。で、あれでしょ?今日来たのは、明日からのことよね?お父様が帰ってくる日でしたっけ。」
「様……ってかその事話したっけ?」
「愛の直感よ。」
「恐怖でしかねえよ。」
夜に来るんじゃなかったと後悔した。どうやって知ったのか凄く気になるが、これ以上知るともっと怖い思いをしそうなので、あえて追及しないことにする。
「まぁ……なんだ、そういうことだからよ。明日から父さんが帰ってくるから、家に来るのはしばらく控えてくれ。」
「大丈夫よ。バレるようなヘマはしないわ。今まで通り、バレずに夏輝の家に侵入する。」
「頼む、これ以上俺を怖がらせるようなことは言わないでくれ。」
「安心して?心配してくれるのは嬉しいけど、本当に問題無いから。絶対にバレない。」
大アリだ。バレるのも問題だが、バレないのもかなりの問題だ。いつもなら、ここで諦めて帰るところだが、今回は違う。ちゃんと策を用意してきた。
「十三日の祭りまで、ちゃんと大人しくしてくれたら、なんでも言うことを聞いてやる。だから、とりあえず父さんが帰ってきている数日間は、大人しくしててくれ。」
「……ふーーん。ま、別にいいけど。でも、十三日の祭り一緒に行く約束と、今の言葉、忘れないでよ?」
「ああ、約束する。」
「……とても寂しいけど我慢する。じゃ、お父様と仲良くね?」
今年は俺から初めて誘った祭りだ。祭りの話をすれば引き下がってくれると信じていた。少し悪い気もするが、その分祭りではちゃんとするつもりだ。
「ああ、ありがとう。じゃあお休み。」
「うん、お休み。」
最後にそう言って、俺は無事帰ることに成功した。
そこから八月十三日の祭りの日まで、俺と狂花は一度も会うことはなかった。
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