15 思い出す嫌な過去と、幼馴染との関係について
その行動に意味があったわけじゃない。ただ、昔の自分が知ったら信じないだろうなってだけで、でも自分の中で、確実に何かが変わっているなと実感した瞬間だった。
「今度ある祭り、一緒に行かないか?」
「えっ?」
いつもの朝、勝手に朝ご飯を作ってくれている幼馴染に、気づいたらそう言っていた。驚いて動きが止まった彼女と、自分が何を言ったのか本当の意味で理解したのは、数秒あとのことだった。
「あっ、いや、違う。これは……なんかふと……忘れてくれ。」
「いや、無理でしょ。行く。絶対行く!」
そう言うと、鼻歌を歌いながら料理を再開する幼馴染である狂花。
(あぁ……どうしてそんな急に無意味なことを言ったんだろ俺……)
自分でも困惑する状況だった。いつもなら自分から誘うなんてありえないというのに。彼女と関わっていると、決めていた自身の道を見失ってしまう時がある。
「私、夏輝から絶対に目を離さないから!絶対にそばに居る。あなたのその道が変わるまで、変わった後も、私はあなたのそばに居るから……覚悟しといて!」
一度だけ本気の言い合いになった時に、彼女から言われた言葉を思い出す。怒った口調で、それでいて目には涙が浮かんでいて、表情はとても悲しそうなもので、それがとても印象的で、記憶の中に忘れられないものとしてある。今思えば、狂花との関係は、あの時から始まったものだった。
「そっか……ありがとう。でも、狂花が居たところで何も変わらないかな。だから、時間の無駄だよ。もっと別のことに時間を使った方がいい。」
悲しんでくれる彼女に、自分はそう答えた。結果、彼女はとても怒って
「あっそ……じゃあ……無理矢理にでも変えてみせるから。もう、私以外のこと考えられないぐらいにまでしてみせるから。」
「本当に時間の無駄だから、そういう事ならもう絡まないでほしい。正直言って、かなりめんどくさい。」
「今の夏輝からしたら、私の話や行動は、余計なお世話だと思うかもしれない。けど、もう初めに言っとくわね。私はこれからもっと、あなたに面倒くさく絡むから。あなたが変わるまで、いや、絶対に変わるから。」
「……本気でウザイ。それ以上絡まないでくれ。俺が変わることは、この先一生無いから。」
あの時は、沢山酷いことを言った。それでも彼女は、自身が言ったように、あの日からずっとそばに居る。
どれだけ遠ざけようとしても、どれだけ避けても、気づいたら当たり前のように近くにいる。決して自分の考えが変わったとかそういう訳では無いけれど、間違いなく自分の考えが前向きな方向になっているのは分かる。
「……狂花。俺の考えはまだ変わっていないって言ったらどうする?」
背中を向け料理をしている彼女に、そう小さな声で呟く。一瞬、彼女の動きが固まったかのように動かなくなるが、すぐに動き出して
「じゃあ……私も変わらない。」
「俺の近くにいるのは、もうやめた方がいいと思うけどな。何もいいことなんてないぞ。」
「私の心配してくれてるの?安心しなよ。今この瞬間も、私にとっては重要な時間だから。」
「……変わらないな。」
「うん、変わらない。だから、誘ってくれてありがとう。お祭り、とても楽しみ。」
彼女はそう言うと、また上機嫌に料理を再開する。
(また俺は急に……過去のことで何言ってんだ……)
昔の嫌な話を思い出して、それを掘り返すようなことをどうしてしたくなったのか。自分でもよく分からないけれど、彼女の変わらない言葉を聞いて、どこか安心している自分にも嫌になる。
(……あの日から俺は、何か変わってしまったのだろうか。)
それからの今日は、自分の嫌いなところを思い出す、とても嫌な日として終わった。




