2話
今から一〇年前、魔王をはじめとする魔人たちがモンスターを率いて人間界に侵攻を始めたのは、ラキとハーミットが八歳のときだった。
一年に及ぶ激戦の末、魔王は勇者によって討たれたものの、出兵していた二人の父親が家族の元に帰ることはなかった。
世界を救い、父の仇を討ってくれたアレインに、勇者というものにラキは強烈に憧れる。
しかし、後に勇者アレインは病に伏し、闘病虚しく息を引き取ってしまう。
救世主はもういない。
ならば自分が――その一心でラキは剣を振り続けた。傍らでハーミットは、大切な人を守れるように、帰ってこれるようにと、魔法の勉強に励む。
時は流れ、魔王軍が再び動き出したという激報が世界を駆け巡ったのは半年前。各地で有志が魔王討伐の名乗りを上げる中、ラキとハーミットの二人も戦うことを決意する。
戦争という衝撃的な出来事とは裏腹に、魔王軍に関する情報は拍子抜けするほど集まらず、戦闘も散発的な小規模戦が数回のみ。
緩慢に推移する戦局において、王国軍が魔王城に威力偵察を仕掛けるという話を聞きつけた二人は、同行しようと現地に馳せ参じることにしたのだった。