表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生猫耳少女の異世界クライムサスペンス  作者: 狐史杏派.com
宝街
1/4

転生猫耳少女 フィル

ブックマーク、評価ありがとうございます。

日々の投稿の励みです。

これからもよろしくお願いします。



 ユウイチの手招(てまね)きにつられ、私は十字路を()()ける。

 警戒(けいかい)の色を浮かべて見る道は、すぐそこに危険が(せま)っているようで、恐ろしく思えた。


()けた…よな…」


「さっきの路地からは、だいぶ離れてる…はず。

 とりあえず、どこかで一度休まない?」


同感(どーかん)!つーか、お前ら体力ありすぎ。

 一般人の持続力(じぞくりょく)考えろよ。コッチはゼェゼェだぞ!」


 図々(ずうずう)しい文句にイラッときて、私達は()(かえ)

 肩で息をする少女が壁に手をつけて、疲労感全開(ひろうかんぜんかい)の目をこちらに向けていた。

 

「勝手についてきたくせして、文句(もんく)言わないでほしいんだけど?」


「マフィアに追われてんだぞ!袋小路(ふくろこうじ)にでも入ってみろ!悲惨(ひさん)だろ!!

 知らない町で追われたら、その町の人について逃げる!常識(じょうしき)だろ?」


「「・・・・・」」


「なんか言えよっ!!!!」

 

 お(しと)やかそうで可憐(かれん)な外見とは程遠(ほどとう)い、男勝りで図々しい性格に違和感(いわかん)を感じえない。

 しかも、初対面の人にここまで言ってくる事も、私達を困惑(こんわく)させた。


 この少女の事が、私達には全く分からなかった。

 

「とにかく、僕はこの町に来たばかりで全く道が分からないんで、ガイドよろしく!」


 しかも、僕っ子。

 さて、どうしようか。


「いくつか聞かせてくれない?」


「ん?…何?」


「なんで『クンラット団』に追われてたの?

 何して怒らせた?」


「連中の事をさぐった。

 情報は金になるし、気になる事もあったしな」


「え?…。『クンラット団』のことを?

 子供なのに?」


子供ガキ扱いすんな!人生経験だけなら、お前らの倍はあるぞ!」


「え…うん。

 えっと…とどのつまり、あなたは情報屋?」


「いろいろ売ってる。食品から薬剤、武器に魔物の素材まで…。金になるものならね。

 客の層も色々だけど、主なのは〈異世界人〉だな。()()()()()()()。」


 その言葉に、悪寒が走った。

 確かに、少女の言う通り私達は〈異世界人〉だ。

 だが、それを知る人は限られている。

 この世界において、〈異世界人〉というのは大きなハンデであり、危険を呼ぶ。

 だから、私達は本当に信用できる人にしかその事を話していない。

 だと言うのに、この初対面のはずの少女が、私達が〈異世界人〉だと知っている。–––知られている。

 急に、この何も分からない少女が怖くなった。


「…その反応だと、図星?」


「どこで知った?」


 ユウイチの手は、両手剣の柄に伸びている。

 少女が笑った。


「とりあえず、自己紹介……。

 僕は、〈転生者〉フィル。『ショールバード』で、「百貨店マタタビ」を(いとな)む商人だ。

 …〈異世界人〉とは仲が良くてな、外見(がいけん)とか言動(げんどう)でだいたいわかる」


「…転生者?」


「日本人だぞ、元な」

 

「…もう一つ聞かせてくれない?

 なんで空から降ってきたの?」


「筋肉ダルマのマフィアにブン投げられた」


 更に分からなくなった。


★ーーーーー


 その後、私達は〈冒険者ギルド〉に移動した。

 冒険者ギルドには、常日頃(つねひごろ)から数多くの冒険者がたむろしており、ここ(ギルド)発砲(はっぽう)しようものなら、百戦錬磨(ひゃくせんれんま)の冒険者の()れを相手する事になる。

 マフィアもそれは避けたいだろう。


 そういうことで、〈冒険者ギルド〉は、最も安全な場所なのだ。


「ん〜。お前ら、冒険者だっんだな」


 ギルド併設(へいせつ)の酒場で、ジュース片手に、フィルがそんな事を言ってくる。

 とても呑気な声で、こっちまで力が抜けてしまいそうだ。


「今更か?俺らは、『獣の鈴(ケモノのスズ)』っつうれっきとしたパーティーだよ。

 つーか、冒険者じゃなきゃ、武器もって町歩かねぇよ」


「フィルこそ、そんな()りで商人なんだね」


「それはさっき言ったろ。

 まだ信用できないのか?」


 信用うんぬんというよりも、未成年(20歳未満の)が商会を持って働いているという事に、違和感を拭えない。

 それは、まだ18才の私達にも当てはまる事なのだが…。


 自分が未だに日本の感覚である事に、どこか(いや)()がさした。


「なぁ、フィル。さっき、魔物の素材も扱ってるって言ってたよな」


 ユウイチが、神妙(しんみょう)面持(おもも)ちで言った。

 先程から何が考えている様だったが、それだろうか?


「ん、あぁ。

 でも、メジャーなヤツは売ってない。

 大手の方が安くなるからな」


「なら、大丈夫だね。––––カナ。”アレ”」


 急に話をふられて、私はと(まど)いながらあるものを()()()()()取り出した。


「これ?」


 テーブルに置いたあるものを見て、フィルは目を見開き、バッと取り上げた。


「これ!…〈ジャルード〉の角かっ!?」


〈ジャルード〉とは、森林地帯(しんりんちたい)に生息する牛型の魔物。個体数が少なく、素材は希少価値(きしょうかち)が高い。肉は食用、骨は加工され武器防具に、角は宝飾品か”魔導媒介(まどうばいかい)”に使われる。


「Cランクだろ!?よく倒せたな…」


「ヒドくない?そんな弱く見える?

 まあ、ギリギリだったけど…」


 私達にチートは無かった。


「でもなんで僕に?

 大手に行けば高く売れるだろ」


「それが…行ったんだけど、買ってくれなかったんだよね。

 なんか、『アルドラ』っていう最近出来た〈迷宮〉で、〈ジャルード〉が大量発生(たいりょうはっせい)したらしくて」


「ナルホド、暴落(ぼうらく)しちゃったと。

 もともと希少価値で高くなってた感じもあったし、しかた無い。

 有り余ってたら、宝飾品も売れないだろうし」


「この角の奴も、『アルドラ』近くの『北の荒野』で討伐(とうばつ)したからさ。その内の一匹なんだと思う」


「ん〜でも、これかなりの大きさだぞ?しかも、〈魔印(まいん)〉付き。

 まぁ、売り方次第で高くなるね。売れ!」


「え!いいの!?」


「〈ジャルード〉の角を、武器に加工する技術を作った奴がいてな。

 ソイツから、あったら売ってくれって頼まれてんだよ。

 金貨7枚でどうだ?」

 

 金貨1枚=約5万円

 つまり、この角に35万円近い値札がつけられたのだ。

 お買い上げありがとうございました。


 私は、ホクホク顔で7枚の金貨を受け取った。


 私の脳裏に、ブラント物のローブや魔道具が浮かんでは消える。


「さてと、商談も終わったし、僕は宿に戻る。

 連中が宿をみつける前に、『ショールバード』にズラからないと」


 帰ろうとするフィルを、私は()きとめた。

 一つ、案があったからだ。


「フィルは『ショールバード』に住んでるんだよね」


「ん〜そうだけど?」


「私達を帰りの護衛(ごえい)(やと)わない?」


「アルドラ」


型   洞窟型

階級  Dランク

階層  全三層

魔物  ジャルード スライム マネリオット

誕生  3ヶ月前

所在地 バルディン公国 アーガン男爵領東部


 誕生して間もない新生迷宮。

 魔物の系統が統一されておらず、新生迷宮であることからも、初期不安定期にあると思われる。

 人型の新種の魔物が発見されており、当迷宮の特異魔獣ユニークモンスターと思われる。高度な魔法を使用し、知能指数も高いため、注意を払う必要がある。

 捜査班は、当特異魔獣を〈マネリオット〉と呼称している。

 また、これ以上の成長は望めないと思われる。


               引用 探索者協会 会誌

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ