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05.百獣の王③

 事件から数日後の朝、いつものように稟議書の束を見ていた巣鴨は驚いた。

「はあ?、チャロ計画?」

 自分には全く聞かされていなかった提案書の内容がそこにはあった。

「いくら何でも無茶苦茶だろ!!

 俺の部署に導入されるマシンだろ?

 事前の話くらいあっても良さそうだろ・・・」

 と独り言が口から出てしまうのだった。


 それは概略を読む限り、巣鴨の部署への支援マシンの導入計画だった。

 それも先日起こった事件の主役であるファイバー神経系を持つ支援マシンの試作実験内容だった。


(違う・・どう考えても、マシンじゃない。

 ファイバー神経系なんて通常はサイボーグか、もしくは獣ボーグにしか使わないものだ。

 まさかレオンに使わせるためのものかな?)


 そう考えながら内容を読み始めた巣鴨だった。

「やっぱりおかしいな、レオンの拡張神経への接続はなく、独立した並列連動獣型戦闘支援装置となっている?

 でもこれって何のことかさっぱり分からん。

 見た目は完全に独立した獣型アンドロイドだが、AI支援ボックスが普通と違うというか、違いすぎる」


 とは言え、自分より上司承認がされた提案書を否認するわけにも行かず、そのまま承認する巣鴨だった。

「まあ、俺のところの戦力強化の方向だしな、文句は言えないよな」


 元気を取り戻そうとしていたレオンであるが、結局色々な思いが消えていなかった。

 自分のチャンネルにダイブし何もない空白の空間に入り空白の時間を過ごしていた。


 あの獣ボーグの核になっていたのは紛れもなくもとは普通の動物だっただろう。

 結局利用されただけのその動物と戦うことになった自分のことを考えていた。

「僕たちと同じだったんだよな・・・

 一歩間違えれば僕たちも・・・」

 

 納得いかないことを納得させようとしている自分を卑怯な奴だと考えていた。


 そんな時、軽く映像の中に文字がブリンクしながらメッセージが飛んできた。

「お荷物が届きました、生ものなのでお早く処理してください」


 そんなものは後にすれば良いはずなのだが、生ものと言われては処理しないわけにはいかない。

「なんだろ?」


 VRMMOの世界から戻ると配達用のボックスを開け届いたものを確認した。


 発送者は誰なんだろう?

 確認するが、時期ハズレもいいとことなので意味のわからない「サンタクロース」と記述されていた。

 何となく危険なものである可能性もあるが、その発送者のセンスから発送者が分かったような気がした。

 届いたものは箱である。

 食べ物だと腐ってしまうと困るので箱の中身を確認した。


 箱の中には冷凍用の箱の中に円筒形の金属の筒が入っていた。

 操作説明書という紙が入っていたのでそれは食べ物ではないとわかったのだが・・・

 どうも金属の筒は実は液化窒素のツボでその中にまだなにかが入っているようだった。

(液化窒素って普通じゃない)


 操作説明書をみて直ぐに発送者が分かった、やっぱり「姫」だな。


 明らかな上から目線で女王様口調で書かれたそれは姫がVRMMO内で扮している女王様そのものだった。


 内容を読み進めるうちにそれが何であるか分かった。


「これは・・・」

 信じられないことに、それは先日戦った獣ボーグの核だった。

 通常獣ボーグの核というのは神経系まで細かく機械に接続されているため取り出すことは難しいとされている。

 にも拘らず、その装置は金属の筒に完全に保護された状態であり、その上レオンのダイブ装置にセット可能なものだった。


 操作説明書通りに自分のダイブ装置にその核を組み込んでいく。

 組み込みを完了すると、いつもVR空間へダイブした。


 説明書によると核をセットすることで核の主もVR空間へ転写されるようなのだ。

 いつもの空間に着くと、大きな木の下にモフモフの茶色い子犬がこちらを見て尻尾を振っていた。

 その子犬に見惚れていると、VR空間に声が響く・・・


「レオンよ、彼の名はチャロという、妾がつけたのじゃ、末長く仲良くするのじゃぞ」


 声の主は、マハラティ女王である。

 アリスは眠っているのではない、アリスの大半が眠っているのだが数名は覚醒しVRMMOゲームのラスボスをやっている。

 現在覚醒している中の最高権力者の一人である「マハラティ女王」が対処してくれたということになる。

「姫・・・じゃなくて女王様、ありがとうございます」


 捜査に重要な証拠の核を改造した上に僕ところに送ってくる・・・というか僕に暮れるなんて・・・

 そんなこと、少なくともVRの世界を超えて現実世界での影響力が相当大きくなければこんなことはできない。

 そんなこともできてしまうアリスの中の一人。

 僕はそんな仲間が頼もしく思えた。


 VRの世界の中で茶色の子犬と一緒に遊んだ。

 

(そう言えばチャロとか言っていたな、茶色だからか?なるほどセンスは姫だな)

 そんなことを思いながら感謝と、チャロといられる喜びを噛み締めていた。

 

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