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#01

「たくさんあるから、どんどんおかわりしてくださいね」

 集まってくる近衛騎士団の人たちにそう言いながらも、あたしは心配になってお鍋の中を見る。中身はエマの特製シチュー。たくさん作ったんだけど、すでに半分くらいの量になってしまった。うーん、もしかしたら足りなくなるんじゃないだろうか? これから配る人には、少し量を減らさないといけないかな。なんて考える。

 ここは、近衛騎士団の休憩所。陛下たちを護衛する騎士が、仕事の合間や一日の任務を終えて宿舎に帰るまでのほんのひと時、緊張を解く場所。

 あたしがこのお城に来てから三ヶ月余り。お城での生活は、来る前に想像していた優雅で満ち足りた暮らしとは程遠い、変化の何も無い退屈な日々の繰り返しだった。あまりにやることが無いので、厨房を借り、メイドのクレアと一緒に特製シチューを作って、近衛騎士団のみんなに差し入れしたのだ。で、これが予想外の大好評。ま、もちろんあたし、シチューの味だけには絶対的な自信があったんだけど……十人くらいに食べてもらえればいいかなぁ、なんて軽い気持ちでいたら、すでに予定してた十人分は配り終え、でも、シチューを求めて列に並ぶ人は、まだまだたくさんいる。

「すごい人気ですね、エマ様のシチュー」クレアもビックリした様子。

「うん。多めに作って良かったよ」

「でも、この分だとあたしたちの分が無くなりそうですね」

 がっかりした表情になるクレア。多めに作ったつもりだったので、残った分はあたしとクレア、そして、クレアのメイド仲間で食べるつもりだったのだ。

「ま、しょうがないね」あたしは自分で食べるよりも人に食べてほしいから、無くなればむしろ嬉しいのだけど、クレアはあたしと違い、

「あーあ。あたしも食べたかったですよ。エマ様のシチュー」恨めしそうな顔でお鍋の中のシチューを見る。

「……って、あなたはいっぱいつまみ食いしてたでしょ」

 シチューを作っていたときのことを思い出す。クレアは、味見と称して何度もシチューを食べていたのだ。おかげで半分以上は減ってしまったような気がする。

「てへっ。だって、エマ様のシチュー、とってもおいしいんですもの」

 なにがてへっ、だ。

 とは言え、クレアのとびっきりの笑顔で「おいしい」と言われると、それ以上は何も言えなくなる。

 そして。

「うん! エマ様、すごくおいしいですよ! これでまた張り切って任務に戻れます!」

「エマ様! 私は、エマ様のシチューの味に感動しました! この先もし、エマ様の身に危機が迫るようなことがあれば、私が命に代えてもお護りします!」

「貴様では無理だ! エマ様! そのようなことになれば、必ず私が!」

 と、まあ、あまりに大げさすぎるとは思うけど、騎士のみんなにも喜んでもらえたようで、ホント、作った甲斐があったな。

 あたしは、ちょっと調子に乗って。

「みんな、そのときはよろしくね! あたしを護ってくれた人には、特製シチューと、さらに特製ガーリックトーストもつけちゃおうかな!」

 なんて言ってしまう。とたんに休憩室は、おおおっ! と、歓声に包まれる。

 と、みんなで盛り上がってると。

「なんじゃ、騒々しい」

 不機嫌そうな声が部屋に響く。声の主を見て、騎士たちは一瞬で静まり、そして、一斉にかしこまる。

 部屋に入ってきたのはエリザベート様だった。ベルンハルト陛下の妻でこの国の王妃。相変わらず趣味の悪い宝石だらけのドレスに身を包み、これまた宝石だらけの扇やティアラなどの装飾具で飾り付け、護衛騎士のシャドウをはじめ、メイドたち使用人を大勢従えている。

 ああ、めんどくさい人が来たな。今さら言うまでも無く、あたしはこの人が大キライだ。三ヶ月前お城に来て、初めて会ったときに受けたあの仕打ちは、今思い出してもはらわたが煮えくりかえる。

 でも、その怒りは飲み込んで、あたしも頭を下げた。

 王妃は騎士団の人たちをギロリとひと睨みすると。

「貴様ら、不謹慎であるぞ。『もし危機が迫るようなことがあれば』じゃと? そのようなこと、間違っても口にするではない!」

 と、一喝。騎士たちは、はは! と、申し訳なさそうに、さらに頭を下げた。

 確かに王妃の言うことはもっともだった。現在、北の国クローリナスでは、反ブレンダ組織・クローサーとの戦いが激化し、多くの被害が出ているらしい。その影響は国内でも広がりつつあるし、三ヶ月前は、陛下の暗殺騒動もあった(もっともこの騒ぎの発端は王妃だったけど)。ちょっと無神経に騒ぎすぎたかな、とは思う。けれど、まあ、その場のノリってものがあるから、そこまで目くじら立てて怒ることはないんじゃないかな。

 それに。

 つまりは王妃、結構前からあたしたちの話を立ち聞きしてたってことになる。あんまりいい趣味とは言えないよね。

 あたしがそんなことを考えていたのがバレたのかどうかは判らないけど、王妃、今度はあたしをギロリと睨む。

「フン。誰かと思えば田舎者の女か」

 悪かったわね、田舎者で。とは言えず、あたしはただかしこまる。

 王妃は扇を閉じ、手のひらでもてあそびながら、値踏みでもするようにあたしを見て、

「料理を作って騎士どもに配り、点数を稼ごうとでも言うのか。田舎者らしい、下賤な考え方じゃな」

 イヤミったらしく言った。ああ、もう。ウザイことこの上ないけど、ここで反発したら、また何をされるか判らない。どう考えたって、このお城では、あたしより王妃の方が上の立場だからな。ガマンガマン。

「なんじゃ、これは?」お鍋の中のシチューを見て、顔をしかめる王妃。「貧相な料理じゃな。泥水かと思うたぞ。まあ、貧相なそなたが作る料理じゃから仕方はあるまいが……よくもこのようなものを、我が国が誇る精鋭騎士たちに食わせたものじゃ」

 むっかー。確かにあたしは、相変わらず村から持ってきたいつもの地味なワンピースを着ていて、貧相と言われたら返す言葉も無いんだけど、それとシチューは関係ないじゃないか。あたし、他のことならバカにされてもしょうがないと思うけど、ことシチューに関しては絶対の自信がある。あたしの唯一の自慢。誇りとも言っていい。それを、こんな人にバカにされるなんて。くっそー。立場の違いなんて忘れて、キレてやろうかな。

 なんて思ってたら。

「あら、そんなことはありませんよ。とても美味しそうなシチューではありませんか」

 そう言って、部屋の中に入ってきたのは。

 一瞬、その美しさに目を奪われてしまった。

 王妃と同じく、宝石を散りばめたドレスやティアラなどを身につけているけれど、王妃のようなイヤミな派手さは無く、上品な印象を受ける。肩まで伸びたしなやかな髪と、整った顔立ちが、上品さをさらに引き立てる。吸い込まれそうな瞳があたしを見つめる。心を射抜かれるようなまなざし。

 セルマ・ビアス様。陛下の、もう一人の側室。

 突然現れたセルマ様に、王妃は不愉快そうに顔をしかめ、

「なんじゃ貴様、いきなり。まさか、立ち聞きしておったのか。良い趣味じゃな」

 自分のことは棚に上げて、そんなことを言う。

 しかし、セルマ様はそんな王妃の言葉を無視すると。

「エマ様、私も頂いてよろしいでしょうか?」

 天使のような笑顔とはこのことだろうか、なんて思ってしまうほどの素敵な笑顔に、思わず見とれてしまうあたし。

「エマ様?」

 怪訝そうなセルマ様の言葉に我に返ると、あたしは慌ててシチューをお皿に注いだ。

「ありがとうございます。うーん、いい香りですね」

 セルマ様はスプーンでシチューをすくうと、上品なしぐさで口に運ぶ。

「うん。素晴らしいですわ、エマ様。王室の料理人にも負けない味です」

 ほっぺを押さえて言う。

「そ……そんな……大げさですよ」

 照れくさくなって否定するあたし。

「いいえ。大げさじゃありません。本当に、美味しいですよ。確かに、見た目は王室料理人の作る料理と比べると、まあ、派手ではありませんけど、このシチューは、私が今まで食べた、どんなものよりもおいしいです。きっと、エマ様の、みんなに食べてほしい、という愛情が、惜しげもなく注がれているからでしょうね」

 愛情って……そんな、恥ずかしいな。でも、そう言われて悪い気はしない。

「どこかの誰かさんのように、見た目は派手だけど、中身はまるで無い、そんなヒドイ料理を、私はたくさん食べてきました。それに比べれば、エマ様のシチューは、本当に素晴らしいと思いますよ」

 セルマ様のその言葉に、王妃の顔が歪む。

「貴様、それは私のことを言っておるのか!?」

 怒りを隠さない王妃の口調だったけど、セルマ様は涼しい顔だ。

「あら、そのようなつもりはございませんわ。なぜ、ご自分のことだと思われたのです? 何か、お心当たりでも?」

 王妃、憎々しげにセルマ様を見つめる。ぎりぎりという歯ぎしりが聞こえてきそうだ。

「フン! 不愉快じゃ! 行くぞ!」

 王妃はくるりと背を向けると、シャドウたちを連れ、部屋を出て行った。

「あら、何を怒っていらっしゃるのかしらね?」

 とぼけたような口調のセルマ様。あたしと顔を見合わせ、そして、どちらからともなく笑い合った。同時に、部屋の中の張りつめた空気が一気に緩む。良かった。みんな、またリラックスムード。

「セルマ様、ありがとうございます」あたしは、ぺこりと頭を下げる。

「いえいえ、こんなこと、何でもありませんわ。それより、本当においしいシチューでしたよ」セルマ様、また天使のような笑顔。そして、騎士たちの方を見て。「皆さま、ごめんなさいね。急にやって来て、割り込んで、お先にエマ様のシチュー、頂いてしまいました。でも、本当においしいシチューです。それは、この私が保証します」

 そう言うと、みんな笑った。もちろん、割り込んだなんて思う人はいない。うっとうしい王妃を追い払ってくれて、内心みんな感謝してるはず。

「それでは私も失礼します。エマ様、とってもおいしいシチューでした」

 空っぽになったお皿を受け取る。

「本当にありがとうございました、セルマ様。今度、改めてお礼にお伺いします」

「あら。礼を言われるようなことはしていませんよ。でも、いつでも歓迎いたしますわ」

 セルマ様は、ぱちっとウィンクをすると、優雅なしぐさで休憩室を出て行った。はぁー。なんか、カッコいいなぁ。同じ女性なのに、思わず見とれてしまう。

「エマ様、そんな場合じゃないです。みんな、待ってますよ!」

 クレアの言葉に我に返る。そうだった。シチュー、配らないとね。うわ。並んでる人、さっきより増えてないか? どうやら今の騒ぎを聞きつけた騎士が、何人か新たに並んだらしい。これはますます、足りない可能性が高くなったぞ。大丈夫かな……。


 その後、一人当たりの量を調整し、なんとか並んだ人全員にシチューを配り終えることができた。あたしたちの分は無くなっちゃったけど、ま、みんなにおいしいと言ってもらえて、本当に良かった。うん。

「それはいいんですけど、片付けくらい手伝ってくれてもよさそうなものですけどね」

 そう文句を言ってるのはクレア。騎士のみんなは、シチューを平らげると、勤務中の人はさっさと持ち場に戻り、仕事が終わった人はこれまたさっさと宿舎に戻って行った。残ったのは、空っぽのお鍋と、大量のお皿。これを今から洗わないといけない。

「食べるだけ食べて、その後は、はい、さようなら、なんて、作った人に失礼ですよ。後片付けくらいするのが、礼儀ってもんでしょう」クレア、ぶつくさ文句を言う。

「そう? あたしはそう思わないよ。差し入れっていうのは、日頃の感謝の気持ちを表すものよ。喜んでもらうのが目的なんだから、相手の人には食べてもらうだけ。面倒なことは、全部こっちでやらないと」

「エマ様は優しすぎるんですよ。エマ様は陛下のご側室ですよ? もっと、でん! と構えて『これ、全部片付けておきなさい』って騎士様に命令すれば、誰も逆らえないんですよ?」

「じゃ、あたしもこれからは王妃様みたいにふるまおうかな」

「う……それは困ります……」

「クレア。後はお願いするわね。これは命令よ」

「あーん、それはないですよ、エマ様」

「フフ、冗談よ。さ、早く片付けましょ」

「はい!」

 そして二人でお鍋とお皿を洗い場まで運び、一枚一枚、ていねいに洗っていく。

 ま、確かに側室がお皿洗いをするってのは妙な話だけど、だからって、王妃みたいにお高く止まって威張り散らすのは性に合わない。あたしは所詮、田舎者の女だ。こうやってお皿洗いとかしてるのが似合ってる。それにあたし、こういうの、全然イヤじゃないんだよね。むしろ、心が安らぐ気がする。ああ。あたしって、つくづく庶民だねぇ。お城に来て三ヶ月。王族の一員だなんて自覚はまるで無い。この先もきっと、このまんまなんだろうな。まあ、それはそれで、仕方ないけどね。

 …………。

 ふと、セルマ様のことを考える。

 セルマ・ビアス様。もう一人の陛下の側室。会ったらあいさつをするくらいで、今までゆっくりお話したことはなかった。あたし、なんとなくセルマ様のこと、避けてたんだよね。ま、それもしょうがないと言えばしょうがない。王族の女の人とはあんまり関わりたくなかったんだもん。このお城に来た日、王妃はいきなり敵意むき出しであたしに嫌がらせをするし、今は失脚した側室のレイラ・エスタリフは、まあ、王妃みたいな嫌がらせこそしてこなかったけれど、それは単に、あたしなんて眼中になかったからで、状況が違えば、きっとあたしにちょっかいを出してきたに違いない。みんな、城内で強い権力を得ようと必死なのだ。本来最も力が強いはずの王妃は、子供を産むことができない身体なので、このお城では軽視されている。代わりに力を持つ権利が与えられているのが側室だ。陛下の子供を産めば、お城での地位は盤石のものになる。事実上、王妃よりも上の存在になれるのだ。もちろん王妃がそんなことを黙って見てるはずもなく、側室に対して嫌がらせの連続である。また、側室同士も決して仲がいいわけではない。あたしがこのお城に来る前、特に、レイラがマイルズを産むまでは、誰が最初に陛下の子を産むかで、かなりもめていたらしいのだ。今でこそ側室は二人しかいないけど、あたしが来る前は十人ほどいたらしい。でも、みんな王妃やレイラたちの嫌がらせに耐えかね、お城を去って行ったそうなのだ。

 とまあ、そんな感じで、王族の女たちの関係は、非常にめんどくさいものになっている。まして、今はレイラが失脚し、次に陛下の子供を産んだ側室が、城内で絶大な権力を得る、なんて言われている。だから、セルマ様はきっと、あたしのことを敵視してるだろうな、と、勝手に思っていた。女同士の醜い権力争いに巻き込まれるのはまっぴらごめんだったので、あたし、あえて近づかないようにしてたのだ。お話をしたのは、ほとんど今日が初めてだ。

 それにしても、セルマ様、カッコ良かったよねぇ。あのイヤミな王妃を、見事に追っ払った。格好とかしぐさとかも決まってて、思わず見とれてしまったほど。単純と思われるかもしれないけど、今日一日で好きになっちゃった。

「……なんですか、エマ様。にやにやして」クレアが気持ち悪いものを見る目を向けてた。

「へ? あたし、にやにやしてた?」

「してました。変なこと考えてたんでしょ?」

「変なことじゃないよ。セルマ様のこと考えてたの」

「セルマ様、ですか?」

「そ。今日のセルマ様、カッコ良かったよねぇ」

「ええ、確かに。あの王妃様を、見事に追い払いましたからね。スカッとしましたよ!」

 そう言った後でクレア、心配そうに、きょろきょろあたりを見回す。

「……何やってるの?」

「いえ、どこかで王妃様が聞いてないかな、と思いまして」

 そんなバカな……と言い切れないのが王妃の怖いところだ。物陰にこっそり潜んでいたり、あるいは、どこかに盗聴器くらい仕掛けてても、何の不思議も無い。

「今のを王妃が聞いてたら、クレア、八つ裂きにされちゃうね」ちょっとイジワルを言ってみる。

「そんな! やめてくださいよ」

「あはは。冗談だって。それにしても、セルマ様、大丈夫かな?」

「何がですか?」

「王妃にあんな態度とっちゃって。何か、仕返しとかされなけりゃいいけど」

 王妃は以前、何もしてないあたしをいきなり全裸にして辱めたほどの性悪女である。みんなの前であんな風に恥をかかされて、黙ってるとは思えない。ヘタすれば暗殺でも企てるんじゃないだろうか?

 ……これって、王妃に限っては、冗談にならないんだよなぁ。本気で心配になってきた。

「うーん。まあ、大丈夫だと思いますけど」

「ん? なんで?」

「セルマ様と王妃様って、エマ様がお城に来られる前から、ずっとあんな感じでしたから」

「へぇ。そうなんだ」

「はい。今日みたいにみんなの前でケンカするのはしょっちゅうでした。セルマ様って、物事をはっきり言うタイプで、王妃様にも物怖じしないんですよね。言われたら言い返し、やられたらやり返すんです。これは聞いた話なんですけど、あるお茶会で、王妃様がセルマ様のドレスにお茶をこぼしたそうなんです。誰の目にも、王妃がわざとやったとしか見えなかったそうです」

 そのときの光景が目に見えるようだ。お茶を持ってセルマ様に近づき、ぶつかったりとか、うっかり手が滑ったりとか、そんな小細工は一切せず、バシャ、っと、お茶をかける。そして、驚くセルマ様に向かって「あら、ごめんあそばせ」と言って、憎らしげに笑うのだ。

 ……ああ。なんか、想像しただけで腹が立ってきたな。

「でも次の日、セルマ様が仕返しをしたんです」

「仕返し? どんな?」

「はい。王妃様がいつものように、みんなを連れてお庭を歩いていたんです。いつものあの派手なドレスを着て。すると、セルマ様が、二階からバケツで水をぶっかけたんです」

「うわ。そりゃすごいね」

「ええ。そのときセルマ様は『あら、申し訳ありません王妃様。私、お庭のお花に水をやろうとしていたのです。ごめんあそばせ』って、笑ってたそうですよ」

「やるなぁ。セルマ様」

「ですから、今日のはまだ序の口ですよ」

 確かに、今の話に比べたら、今日のなんてじゃれあってるようなもんだな。

「まあ、二年前レイラ様に子供ができてからは、王妃様はレイラ様を目の敵にするようになったので、最近はそういう話も無かったんですけど、レイラ様がいなくなりましたからねぇ。またあの二人の戦いが始まるかもしれませんよ」

 クレア、何だか嬉しそうだな。こういう城内のウワサ話を始めると、途端に元気になるのよね、この娘。ま、あたしもキライじゃないんだけどね。

 それにしても、また女同士の醜い争いが始まるのか。セルマ様はカッコいいし、あの王妃と戦うんだったら応援してあげたいけど、それが城内での権力争いとなると話は別だ。そういうのにはあんまり関わり合いたくない。あーあ。何だかまた気が重くなってきたよ。悪いことが起こらなくちゃいいけど。



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