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No.8 実技試験と火属性、覚醒(下)

体躯はそこら辺にはえている木よりも少し大き目くらいか?おそらく10m以上はありそうだ。


「今の俺ならっ」


炎を纏わせ、片手にマナを集めだす。


 俺はイフリートを参考にし、仮説を立てた。今まで何故魔力の変化が出来なかったのだろうか。おそらくそれは、俺のマナが異質すぎるせいだからだと。


 イフリートがくれた石が呼応し、俺の中に潜むマナに色がついた。キャンパスが、真っ赤に染まった。


 言葉で表すならばこれは無のマナ。昔、魔法についての本を読んだ時にちらっと見たことがある。七属性すべての属性の中心に立つ、一つの特異属性があることを。


 そして、それの名前が無属性だということを。


 しかも今俺が持っているマナは人間がもつ微弱なマナのそれではない。神獣と同じか、もしくはそれ以上の特殊なマナ。これは、この戦闘で明らかになった、威力も範囲も桁違いになった俺の魔法によって。

 

「火法 炎爆(レッドバーン)ッ!!」


 爆発系火属性魔法、炎爆。中級魔法に位置し、着弾点に大きな爆発を起こす事でしられている魔法。


 しかし、目の前に現れたそれは、音をも置き去りにして爆発した、極大な炎。そして目に見えた景色を追いかけるように、チュドォォン!と爆音が鳴った。


 景色が、世界が、真っ白に染まっていく。人が保有出来るレベルを超越した圧倒的な力が、そこにはあった。

 

「……」

 魔法を発動した自分自身も、驚愕が隠せず、腕を前に出したまま動きを止めてしまう。

 

 シュゥゥゥゥと水蒸気がたちのぼり、辺り一面を白く包む。だらりと腕を落とした俺が、次の瞬間目撃した景色は、美しい湖でも、大木の化け物でも無かった。


「はっ……ハハ……」

 

湖は消滅しました。

エントは魔法障壁を発動させましたがそれを突き破り消し炭になりました。

周辺数メートルが焼け野原になりました。


全ては無に帰しました。


 シュゥゥーと風が蒸気を一気に飛ばし、まごうことなき現実を直視させられる。

 

 無言、圧倒的無言。三人は、何が起こったのかわからずに、ただ立ち尽くすことしか出来ない。辺り一面が、荒野になって帰ってきた。


「なにが、おこったの……」

 最初に口を開いたのはアベルだった。


「……わかんない……」

ライカは驚きすぎたのか顔が硬直している。


 そして魔法を放った俺自身、こんなことになるとは思ってもいなかったため、絶句し、なにもできずにいる。


 二人は呆然と何もない地形を見つめていた。

 

「お前、本当に人間か?」

 アベルが俺に問いかける。苦虫を噛み潰したかのような、人じゃないモノをみるような目で。

 

 俺は、この目が嫌いだ。苦手とかじゃない。もう一度、ハッキリと言うけど"嫌い"だ。あの頃をどうしても思い出してしまう。いじめられ、虐げられ、玩具として扱われていたあの頃を。


 だから必死こいて、わかって貰おうと話す。

 

 「違う。違うんだよ。俺はあいつを倒したかっただけであって、こんな力がでるなんて思ってなくって!」

 

「いや、あまりにも魔力の質が違いすぎる。その力は一介の魔法使いがもてる魔力量ではないっ!」


「俺は、ただの人間だ!ただの……」


 俺は訴える。その目はやめてくれと。そんな目で俺の事をみないでくれと。


突然、体を取り巻く炎が勢いを消す。

「うぐっ……」


 その瞬間、俺の視界がぐるぐる回りだす。片膝をつき吐きかける。口を抑えてひたすらに我慢する。頭がポケーッとし始める。どうなっちまうんだと天に手を掲げ───倒れる。


「エイト君っ!大丈夫っ!」

 最後に聞こえて来たのは、ライカが必死に叫ぶ声だった。

 

──────────────

 

「ほら、あそこにゴブリンの群れがいるだろ?ほら、こっち見てる。行ってこいよ、友達ィだろぉぉお!!」


 首もとを引っ張られ、悪魔のような形相で力いっぱい投げられる。投下先は、ゴブリンの群れのど真ん中。


「いやだっ!やだ!ごめんなさい、ゆるして!もうわるいことなんてしないから!ゆるして!」


 ガリガリの体をひねり、ここに落ちたくないと、必死に抵抗する。空なんて飛べるわけがなく、僕はわき腹を強打する。


「うぁぁぁぁぁああ!」 


 鼻水と涙でぐしゃぐしゃな顔。必死に涙をこすって懇願する。たすけて、と。これは命を懸けたお願い。


「いやだぁぁぁあ!」


 一匹のゴブリンに餌として見られたのだろう。ピギャッ!と甲高い声を上げると、その手に持った棒切れが体にめりこんでくる。

「ああああああぁぁぁ!」

 楽しそうに、何度も、何度も。殴打される。僕は、調理されているのだろうか。


数は増えていく。一体、二体、三体。


 痛みなんかとうに過ぎ去り、真っ赤に腫れ上がった顔に涙を浮かばせ僕は親がいた場所に目を向ける。もう既に誰もいない空間に、必死に救済を求め続ける。


 もうやめて。おねがいだから。しにたくないんだ。しにたく、ない。

 

思えばこれが最初だった。


 バチバチという不愉快な音と共に、何故か掌に雷が発生すると、バリッと周囲一面に光が舞う。


「ギャギャ!!!」


 次の瞬間、一匹のゴブリンが黒こげになって倒れる。


 それをみて危険だと判断したのか、他のゴブリンは仲間を置いて一目散に逃げ出した。

 

 僕はうずくまって泣いた、この後、どうすればいいのだろうと。


 このままでは死んでしまうと、ボロボロになった体を更に苛めて、立ち上がる。

 

    家に、帰らなきゃ

────────────────

 

「うぁぁっ!」

 ぜぇぜぇと肩で呼吸をしながら起き上がる。冷たい汗が体に張り付き、体中がビショビショに濡れている。


「エイト君っ!!!」


 涙をボロボロ流しながら誰かが抱きついてくる。

「うぅっ……グスッ……」

 俺は、ぼんやりとそれを眺める。こいつは敵か?と一瞬だけ考えてしまう。


 それがライカだと判断するのに、脳は無駄な時間を要した。俺は、目の前にいるのがライカだとわかった瞬間、安心したのかガクリと肩を落とす。


「あっ、あの……」


 右隣にはアベルがいて、とんとんと俺の肩を叩く。


 アベルは少しモジモジしだすが、すぐに何か覚悟を決めたのか、立ち上がった。


 すると突然、深く頭を下げ始める。

「本当に失礼な事を言った!申し訳ないっ!」

 ここは大きな救護室のようだが、音が反響して聞こえてくるくらいに大声での謝罪。


「一瞬とはいえあなたを危険な人だと感じてしまったんだ!しかし違う!ライカの話も聞いたが、全力で人を助ける事の出来る人が危険な訳ない!かくいう私も助けられた一人だ!……本当に申し訳ないっ!」


 今度は土下座をするつもりか、その場にしゃがみこむ。


「ちょっと待ってっ!わかってくれればいいんだよ!そんな謝らないで!」


 俺は急ぎ口調で土下座なんかさせまいと喋り立てる。


 真っ白なシーツの上にポタポタと何かが落ちてくる。


あれ?俺泣いてたの?


 ゴシゴシと涙を擦ると、いつの間にか目の前に、見覚えのある女性が現れた。


「なにがあったのかわからないけど、エイト・ガルシアさん、体調はどうですか?」


 それは黒目でつり目の、実技試験前の説明をしてくれた人。


「あっ、試験の時の」

「そうだよ、試験官だよ。それよりあんた動けるかい?」

「はいっ、大丈夫ですっ!」

「なら、ついてきな。試験結果を確認するんだ、自分の目で」


 ちょいちょいと手のひらでこっちへこいと合図される。俺は、急いでベッドを飛び出すと、まっすぐ試験官の後ろについていく。


 ベッドが横並びになった大きな部屋。予想通り怪我した人などを手当てする部屋のようだ。教室の外には保健室とかかれたプレートがかけられていた。


 筆記の時通った円柱状で沢山の説明がかかれたホールをぬける。向かった先は外だろうか。


 今すぐ帰れとでも言われそうな程、彼女は喋らない。俺を今すぐにでも追放してしまいたいのだろうか。


 すると気持ちを読んだかのようなタイミングで彼女はこちらをむき、俺の頭に手をのせる。


「ほれあそこ。結果見てきな」

 わざわざ見せたいと言ったくらいだ。もしかしたら合格扱いにしてくれたのかもしれない。俺は、走って結果を確認しにいく。


 人が群がり一喜一憂する結果がかかれた大きな一枚の紙。しかしなんだか様子がおかしい。

勿論喜んでる人とか、泣いてる人とか沢山いるけど、それよりもざわざわと自分に関係のないような話をしている人が大半だと、俺は感じた。


 俺は、沢山の人の後ろから、必死に背伸びして結果を見る。


なんだよ……あれ


俺はみてしまった。


それは、誰の目からみてもあきらかな異常。有り得ない異常値。


 4桁という、他人を寄せ付けない圧倒的ポイント。


1.エイト・ガルシア

筆70 実2200 計2270

2.アベル・シャロン

筆85 実500 計585

3.ライカ・ベアトリクス

筆60 実500 計560

4.アーシャ・カムデン

筆90 実120 計210

5.サーベル・イエーツ

筆95 実110 計205

6......


 俺は、何かの間違えなんじゃないかと何度も紙を確認する。しかし見えるのは明らかに数値がおかしい俺がトップにいること。そして、二位と三位にも、見知った顔がいること。


あぇっ?


俺は、素っ頓狂な声をあげた。

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