5.反旗
今回から主人公達の反撃が始まります
俺の名前はウリエル・・・
俺には可愛いシュバルツという弟がいる
最近は魔物の討伐も増えて仕事が忙しく今日は久しぶりに家に帰るのだ
家に帰ると使用人しかおらず、父も母も相変わらずパーティーやらなんやらでいないのだ
家族か・・・・・・・・
俺は今まで家族というものに関心すらなくいつも退屈な毎日を過ごしていた
だが、家にやって来たシュバルツを見たとき俺の胸は高鳴った
愛しさが込み上げて来て止まらなかった
それ以来俺の心は弟にのみ愛情を感じるのだ
そんな弟が・・・・・・・・いない?
しかもいつ居なくなったのかわからないだと?
チッ・・・無能なクズが!
俺はそれでも弟の部屋へと足を運んだ
ああ・・・・・・シュバルツ・・・
俺が一人寂しさを感じていたその時
部屋の窓が開き俺の前に男が一人と獣と・・・・あれは蝶か?
「おや?兄さん・・・居たの?」
俺の視線の先には黒い軍服を身に纏った弟が・・・・
「お前どこ「しー・・・・静かにね。兄さん」」
俺の前にいつのまにか来ていた弟は俺の唇を手のひらで塞いだ
「ここじゃあゆっくり話できなそうだね・・・ベルゼお願いしてもいい?」
俺の側にやって来た蝶は燐粉を振り撒いてくる
その粉を吸った俺は・・・・・・目蓋が重くなっていく
目蓋が閉じる前に一人の男が俺を優しく抱き上げて目蓋にキスをする
「やっと会えた・・・・俺のアダム」と・・・
その日屋敷から一人の男が姿を消した
しかしこの家のものは気がつかない
そう・・・・・・・一匹の蝶によって幻を見ているようだ
だから誰も気づけない
「ん・・・・・・・シュバルツ・・・」
「おはよう。兄さん」
「あ・・・ああ、おはよ・・ッ!?」
俺が目を覚ますと見たこともない部屋の中で・・俺は見知らぬ男の膝の上だ
「おはよう、俺のアダム。俺はベルゼブブ。ベルかベルゼって呼んで、俺の愛しい人」
と言って俺の頬にキスをする
「貴様っ!俺に・・・・なに・・・・」
俺は振り返り男の顔を睨もうとしたが・・・・出来なかった
はじめて見た筈の男なのに俺の胸がざわざわするのだ
俺は・・・・この男を知っている?
「兄さん。これでも飲んで落ち着きなよ」
「ああ。そうだな」
俺は受け取ったジュースを飲んだ・・・
ッ!?
その時俺の頭はズキズキ痛みだして脳裏に何かが走馬灯の様に駆け巡る
・・・・・・・・・
どうして・・・俺はどうして忘れてたんだ?
そうだ・・・・この男、いや彼は俺の愛しいイヴだ
「お前は・・・・俺のイヴ。俺の愛しいイヴ」
「ッ!思い出したのか!?」
「ああ・・思い出した!なぜ・・・今まで忘れていたんだ。こんなにも愛しいのに」
思い出したせいもあるのか俺はこの男・・ベルが愛しい
俺はベルの頬に手をあて彼の唇に触れるだけのキスをした
「よかった・・・思い出したのか」
「ふふふ、大成功だね。ヴァイス♪」
目の前の弟はヴァイスと呼ばれた男に嬉しそうに抱きつきいている
「ウリエル、これは俺達の弟でシュバルツのイヴのヴァイスだ」
「弟の・・・イヴ?」
「そうだよ。兄さん
俺はね、ヴァイスと出会って全てを知った
兄さんにも知って欲しい
そして俺達に手を貸して欲しい」
「全てを知った?」
「そう。エデンというなの偽りの平和と世界
兄さんも記憶が強制的に封印されていたでしょ?」
「確かに・・なぜこんな大切な事を忘れていたんだ」
「それはね・・・俺達アダムが一人の女の手によって全て奪われているからさ」
「なんだって!?」
「兄さんは、魔物がなぜ俺達だけを襲うのか不思議じゃなかった?
それになぜ魔物は悪なのか、魔物はどこから生まれて来てるのか不思議じゃなかった?
俺はね。全部を思い出したんだよ
自分の存在意味にも・・・・・これからやるべき事もね」
弟は少し見ないうちにずいぶんと大人になったな
「そうか・・・俺にも話てくれないか?
俺も記憶を取り戻した今、もう元の生活には戻れない」
「俺のウリエル。
俺はこれからお前と全てを共有する
生も死もだ・・・愛している」
彼は俺に騎士のように膝まずき手の甲にキスをする
俺は彼の手を引きそのまま唇に濃厚なキスを送る
「ん・・ンン・・・っ・・・」
「ン・・・ふっ・・ぁ・・・・」
キスが終わると俺はベルの瞳を見つめて甘く囁く
「勿論だ。お前の全ては俺のもの、俺の全てはお前のものだ。ベル」
「ああ!嬉しいよ!ウリエル!」
その瞬間二人の左手の手の甲が光って蝶のアザは浮かび上がってきた
「おめでとう!これで兄さん達も番だね!」
「番?」
「「俺達と同じ夫婦だ」」
え?
俺と・・・ベルが夫婦?
「そうだよ。これで俺達はお互いが生涯の伴侶になったんだ
アダムとイヴ・・・それは運命の相手の事なんだよ
俺が妻だから・・宜しくな旦那さま」
「アダムは夫でイヴが妻だからな。俺がシュバルツの妻だ」
「そうそう!本当に可愛い奥さんなんだよ!
この前も俺のために美味しいお肉を森で狩ってくれてね
料理も上手だし、本当にいい奥さんなんだ♪」
「・・・・照るじゃないか、俺は・・お前が喜んでくれればそれでいい」
と目の前でいちゃつきだす始末
「俺も料理は得意な方だぞ?それに薬学にも精通している!」
と何やら俺の奥さんが対抗し始めた
「ぷ・・・お前・・・俺はお前以外になんて興味はないぞ?
俺の妻はお前だけだ
弟達には家族としての愛情はあるがそれ以外はない。心配するな」
「うん。俺も・・・ウリエルだけだ」
「それよりも詳しい話を聞かせてくれないか
俺も協力したい
なぜ俺達アダムにはイヴに関する記憶がないのか
そして・・・・俺の勘が正しければ・・魔物の正体は多分
もしそうなら、こんなに悲しい事はない
それを仕組んだヤツがいるなら・・・俺は全力でそいつを・・排除する」
「いいよ。じゃあまずは・・・・・」
それから弟が今までに体験した事やエデンで知ってしまった事を話してくれる
俺が想像していたよりももっと酷い事実に俺は心底驚いた
全てがあの女によって行われているという事実
そして全てのイヴは祝福という呪いに屈せずに俺達を求め続けているという事実に
「はぁ・・・・これは、思っていたよりも酷いな
俺達は無慈悲に記憶を奪われて操り人形にされて・・・愛しい人を取り上げられた
あのエデンというなの紛い物の楽園の中には飼い殺されている兄弟がいる
お前達はこの世界を変えようというんだな?」
「そうだよ。この堕落しきった世界を一度壊すんだ
それが俺達の役目を遂行する為には必要なんだよ
本来であればこんな世界は生まれるはずはなかった・・けれど実際は?
聖女という異物のせいで俺達の世界も愛も歪んで・・壊れた
俺達のエデンを我が物顔で土足で踏み荒らされた
俺は・・・・・・それが許せない。選択すら与えられないこの理不尽な世界が嫌いだ」
「そうだな・・・」
「だから、兄さん。これからは兄さんも俺達の仲間だ
俺達の”楽園の守護者”のね」
俺達は守らなくてはいけないのだ
この小さな俺達の楽園を・・・そして皆の楽園を
それから俺達はこっそりと何人ものアダムを俺達の元に引き入れて行く
ゆっくりとそして確実に俺達は仲間を増やしていく
俺達の絆は深くそして愛で繋がっているのだ
増えた仲間と共に力を高め合い・・そして計画は第2段階を迎える
ようやく物語が進んで行きます