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影の一族 ~以ノ段~

なろうの機能が理解できず、手直しに次ぐ手直し。

気がつけばこんな時間に……

生来の機械音痴がここへきて仇となろうとは(-_-;)


遅くなりましたが、ここから始まります!


 いったい何畳あるのか、数えることが面倒になるほどに広い畳敷きの大部屋。

 大きな旅館の宴会場を想起させる空間はとうに夜に呑まれ、暗く染まっている。

 静寂に支配された空間のあまりにシンとした静けさは、かえって耳に残りそうなくらいに誰もいないことを主張していた。


 ――いや、一人だけいた。


 部屋の壁際、障子戸の開いた吉野窓から降りる月明かりに背を向けて座る男の姿。

 いつからそこにいたのか、あるいは忽然とそこに現れたのか。

 丸い窓の形をそのままに、闇をかき分けて畳を照らす光は満月と同じ形をしている。

 その中に伸びる影の持ち主は、ただ一色の白髪頭を持つ、裁着袴(たっつけばかま)姿の老人であった。

 眠ったように閉じられた両の目。

 皺の刻まれた顔だけを見れば、歳は八十あたり。しかし僅かばかりも曲がらず、真っ直ぐに伸びた背筋で正座する姿は、老体らしからぬ威風を放っていた。


 この老人、名を戸隠(とがくれ )影蔵( ようぞう)という。


 世の均衡を保つため、数百年もの間暗躍し続ける忍の一族、戸隠流忍術の宗家にして歴史の裏に潜む影の軍団――戸隠忍軍の現・頭領である。


 影蔵は、閉じていた目をゆっくりと開ける。すると、それを待っていたかのように、両脇に立てられていた燭台の蝋燭が、独りでに火を灯した。

「刃よ……」

 しわがれた声が名を呼ぶと、前方に広がる闇の中から一人の男が姿を現す。

「戸隠刃とがくれやいば、参上いたしました。お呼びでしょうか、頭領」

 若い男の声に続いて、頼りない蝋燭の灯りにぼんやりと照らし出されたのは黒髪、黒瞳。

 その姿は凛としているものの、まだ幼さが残る顔立ちの少年だった。

  片膝をついて首を垂れる忍の少年――刃を見ると、影蔵は満足そうに頷いた。

「うむ、先の密偵の任、ご苦労であった。お主の持ち帰った知らせに、此度の雇い主も大層喜んでおったぞ」

 影蔵の言葉を受け「ありがとうございます」刃は首を垂れる。

「しかし、これほど世を騒がせる大仕事だったのだ、如何にお主とて、骨が折れたのではないか?」

「あれしきの素破抜き、造作もございません」

 刃の余裕に満ちた言葉を聞くと、影蔵は膝をひとつ叩きながら「はっ!」と豪快に吹き出した。

「左様であるか。頼もしき事よ」

 そのまま一頻り声をあげて笑った後に、こう切り出した。

「ときに刃よ。お主、今年でいくつになる?」

「十四歳になりました」

「ふむ、ちと早いが……まあ、良いだろう。お主は一族の者達から大いに期待されておる。歓迎されこそすれ、口を挟む者などおるまいよ」

「……と、申されますと?」

 刃の問いに、然しかして影蔵は口を開いた。

「戸隠忍軍、下忍頭・戸隠刃! 次の任の成功をもって、お主を忍軍の中忍とする!」


 忍軍に所属する忍しのびたちは、それぞれが専門とする分野、そして実力によって格付けがなされている。

 最下層から順に、下忍、下忍頭。

 甲、乙、丙の三部門に分かれる中忍。

 それらの分隊長である中忍大将。

 暗殺を専門とする上忍。

 忍軍の幹部にして最高戦力である奥上忍。


 そして、忍軍の頂点に立つ頭領。


 そのトップから直々に言い渡された昇格に対して、しかし刃は首を縦に振らなかった。

 「ありがたいお話しではございますが、私にはまだ早いかと。まだ元服も済ませておりませんので……」

 下忍が情報収集を専科とする下級の忍であるのに対し、中忍は、強行的な手段を用いることを許された主力部隊。

 それ故に敵対勢力、あるいは他流派の忍との戦いを余儀なくされる可能性が高い任務に振り分けられる。

 待遇は格段に向上するが、それに比例して任務毎について回る危険度は跳ね上がる。且つ、失敗など許されないこの地位に就くためには、忍として長年に渡る研鑽と数々の功績を立てることで己が力を示さなければならない。

「確かに、戸隠では十五の齢に達した者を成人と認めるが習ならわし。されど、中忍は必ずしも元服した者でなければならぬという決まりはない。忍として己を磨いてゆく内に、自ずと皆そのような年になっているものなのだ」

「ならば、私もそれに倣うべきでは?」

「それには及ばぬ。お主には、生まれながらにして忍としての才がある。その類まれなる才は、この儂をもって寒気がするほどよ。――僅か十余年の修行で、お主は一廉の忍となった。……今の中忍衆でさえ、お主に太刀打ちできる者などそうは居まい」


 古くから続く忍の一族、その隠れ里に生まれ、物心のつく頃から修練を重ねた刃であったが、彼の成長の振りは群を抜いていた。

 隠密行動に用いる遁術や機動性を要求される体術各種、さらには幻術、薬学。戦闘手段である手裏剣術や剣術に至るまでをこの歳までに修めたのだ。

 誰の目にも明らかであった。


 戸隠刃には、生まれついての才能がある――時代の影として生きる才能が。


 多くの期待を一身に受けながら、頭領からのお墨付きも得た。最早、何の憂いも無いはずだ。

 されど、刃の顔には、どこか居心地の悪そうな色が浮かんでいる。

「頭領、畏れながら申し上げたいことが……」

 と、申し訳なさそうに切り出すが――

「多くの忍は一芸を磨き、一事を極めてゆく。その身を一振りの刃へと変えるため、心を殺す。……されど我らが志すは多芸――万事に通ずることである」

「あの……」

 刃の言葉が聞こえないのか、影蔵は戸隠忍者の何たるかを語り出した。

「数多の〝刃〟を持つ〝心〟の生きた者としての在り方こそ戸隠流の真髄なり」

「頭領?」

 そして、少年の都合など置き去りに、年寄りの長話はなおも続く。

「数百年もの長きに渡り、この国の歴史の裏に潜み、今日に至ることが叶うたは――」

「すいませーん」

「戸隠一族の忍が多才であったからに他ならぬ――」

「頭領!」

「――また、利己に走ることのない精神を見込まれ――」

「もしもーし……」

「時には国家の勅命にて、護国安泰を担う大任を賜ることも――」


「ちょっと、〝じいちゃん〟ストップ! ストップ!」


「――五月蠅いわっ!! 今、じいちゃんが話しとる最中じゃろが!! 黙って最後まで聞かんかっ!! ……それと、じいちゃん禁止!! 頭領と呼べ!!」

「自分でじいちゃんって言ってるじゃねぇか。……でさ、ちょっといい?」

「……なんじゃ?」

 これからだというところで水を差され、お爺ちゃんは、あからさまに不機嫌そうな表情になる。


 相手がお気に入りの部下――もとい、孫でなければ手裏剣の一つも飛んできたに違いない。


「この話し、長くなりそう?」

「まだ始まったばかりではないか」

 それを聞いた刃は「そっかー……」ため息交じりに吐き出す。

「一度、部屋に戻りたいんだけど……」

「なんじゃと?」

 プライドの高い年寄りというのは、自分の話しを聞いてもらえないことが何より気に入らない。

 こういう手合いは、話に聞き入ったフリをしたり、適当に相槌を打つなりしてやり過ごすのが賢明というもの。

 刃自身、頭領――影蔵じいちゃんとは長い付き合いである。この行いが気を害することは百も承知だったが、今の刃には、この話しを早々に切り上げなければならない理由があった。

「さっきまで、金曜シネマショーで呪印(じゅいん)やってたんだけど、怖がりなくせに興味本位でそれを見ちゃった困った妹がいてさぁ……一人で寝れないらしいんだよね」

 それを聞くと、影蔵は両目を手で覆い項垂れた。

「あやつめ、影の一族に生まれておきながらホラー映画なんぞに遅れをとりおって……」


 兄の刃は、元服前に主力部隊へ登用しても何ら不安はないほどに優秀だというのに、この男と血を分けた存在であるはずなのに、どうして妹の方はさっぱり忍に向いていないのか……


「俺も急な呼び出しだったから、あの子を部屋に置いてきたままなんだよ」

 さらに妹は、異常に成長が遅く、心身ともに忍どころか常人にさえ届いていない節もある。

 じいちゃんの長話は、後から聞いてやれば機嫌も直るだろうが、件くだんの妹にせっつかれたら、泣き止ませるのに数時間を費やすことになるわけで……今からそれをすれば、きっと夜を徹することになるだろう。

 だが、上の孫のそんな心配など露知らず、じいちゃんは頭領の顔に戻って「捨て置け」と、あくまで自分の話し優先のようだ。

「それより、中忍昇格の条件となる任務についてだが――」

「そういうわけにはいかないんだって。このまま放っておいたら……」


 その時、二人がいる和室から襖で隔たれた廊下の奥、やや遠くから不穏な物音が聞こえた。


日本語、難しいです(笑)

この書き方で、何人に伝わったことか。

投稿した後で頭を抱えている次第……((;-`ω-))<ウゴゴ…


どのようなものでも結構です。

お寄せいただいたコメントを基に勉強させていただきます!

皆様からのご意見、ご指摘、ご感想をお待ちしております。


次回、主人公のロリさん登場。

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