忍ノ国
葉隠幽斎と申します。
今回が初投稿という、小説に関してはまったくの素人が書き連ねた駄文ですが、ご覧になった方々に少しでもお楽しみいただければ幸いです。
筆の遅さ故、投稿のペースは決して早くはありませんが、一人でも多くの記憶に残る物語を目指していきますので、よろしくお願いいたします。
源平合戦――
応仁の乱――
関ヶ原の戦い――
大坂の陣――
明治維新――
日清、日露戦争――
そして、世界大戦に至るまで。
今日までに、この国で起きた戦、変、乱――――対立、争い、殺し合い。
規模の大小を問わず数えれば、有史上に確認されているだけでも、それらは裕に千を超える。
数えきれない戦いの歴史。
その中には必ず、人知れず蠢く無数の影があった。
ある者は、闇を渡り歩く夜叉として。
ある者は、兵法を極めた軍神として。
また、ある者は子々孫々と主に仕える忠臣として。
剣と槍との林を抜け、矢玉の雨降る焼野を駆け、流れる血の川を越え――
阿鼻叫喚と怨嗟の風が吹き荒ぶ骸の山に立ち、やがて何処かへと消えてゆく。
その所業を誇らず、悔いず、決して誰にも覚らせない瞬く間の影法師。
歴史の裏に生まれ、陰に生き、影に逝く者らに、名はない。
あるのは、いつの間にかついた〝忍〟という呼び名だけだ。
争いの絶えないこの国には、いつの時代にも、人々の目に隠れた〝陰〟があり、そこには確かに〝影〟が生きていた。
時は流れ、現代――――
闘争は減り、かつてのような忍の姿はなくなった。
……だが、失われたわけではない。
消えた影たちは、今でもそこにいるのだ。
人々が陽の下を歩む限り、影も共に歩き続けるだから。
地上、そして地下にさえ、定刻通りに人を運ぶ鉄道が敷かれ、アスファルトの上には低燃費自動車が走り、次世代携帯電話を片手に行き交う人の群れを無数の高層ビルが見下ろしている。
夜になっても、煌々とした灯りが燈る街。
こんな眠りきらない時代にさえ、彼ら、彼女らはいる。
だって、忍者は現れては消え、消えては現れるものだから。
今はいなくても、そのうちきっと、彼ら、彼女らの逸話を聞くことになるだろう。
だって、ここは忍ノ国なのだから。
次から本編が始まります!
そのままお進みください。