②第三話
さてさて、紆余曲折あり、ゲーム開始から一時間かけてようやく全員と合流することが出来る。
まぁ、主にオレの私情による時間浪費が原因ではあるのだが……。そこらへんは前以て連絡しフォローしておいたので大丈夫だろう。
「……たしか、メッセではここら辺って話だが……」
オレの端末に届いたメッセージには、具体的な建物の名前や目立つ待ち合わせ場所の名称などは記載されてなかった。
というか、待ち合わせ場所の指示に座標表記で送り返してくるってどうなのさ?
マップ機能とにらめっこしてようやくたどり着けたが、これまた何故か……待ち合わせメンバーの姿はない。
「レンレンもしかして間違えたんじゃねえの~? ぷ、だっせぇ~」
「間違えてねえよ!」
「確かに、クライノーツさんからのメッセージ通りなら、この場所で間違いないはずなのだけれど……」
「でも居ないじゃん!」
「……いや、まさかとは思うが……指示座標ミスとかじゃねぇだろうな……?」
こう言ってはなんだが、昨日今日とノエルの行動を思い返してみると……どうも、そそっかしいイメージが強い気がする。
いや、よく知る人物ってわけでもないので……一概に言い切ることは出来ないのだが……。
アレだもんな……。
十分、ありえるなぁ……。
「いないもんは仕方ねえし、とりあえず連絡してみるか――」
「――その必要はナッシングでーす!!」
おーっと……スッゴい聞き覚えのある声がスピーカーごしに響いたぞ~
どうしてだろう。こう……いやぁ~な予感がするのは……。
一瞬後、オレ達3人の真正面で急に煙が弾けた。
ふむ、アイテムの『けむり玉』だな。あ、いや……赤い煙の色からして『殺虫けむり玉』かな?
こんな路地の中央でアイテムの無駄遣いしやがって……
「ババーン!! キリッ!」
なんか、口で効果音言ってるな。
きっと決めポーズ的なものをカッコよく極めているのだろう。だが、残念……。
『殺虫けむり玉』の噴出時間は意外と長いのだ。
手持ち鞄に2個しか収納出来ない分、効力はそれなりに高い作りになっている。しかも、煙は濃いし広く拡散する。
要するに……見えない。
「けほっ、こほっ! な、なにっ!? 火事ですか!?」
「ぐぇっほ! うぇっほっ!! ヤバい、煙モロに吸ったぁ! 超煙てぇ!! レンレン助けてー。ヘルプミー」
「……」
咳き込む少女2人とは違い、オレは瞬時に息を止めていた。最悪、『毒けむり玉』などを警戒していたというのもある。
まぁ、2人には悪いがあと数秒の辛抱だ。
この路地には風もあるし、すぐに流れるだろう。
「お、オゥ! ホワイ!? ソーマ! 何も見えまセーン!! これでは、折角徹夜で考えたクールなポーズがお披露目出来まセン!!」
「あぅ! あの、あとコレ何秒息止めてればいいのー!? というかノエちゃーん! やっぱりこの格好恥ずかしいよ~!」
「シャラーップ、センリ! 問題ありまセーン! クールでキュートでーす♪ それに、2人で一緒です! もう何も怖くないデース!」
「あ、ソレ知ってる! 死亡ふらぐっていうんでしょ!?」
煙の中で何をやっとるんだあの2人は……。
そして……ようやく、煙が晴れたソコには……
「ババーン! デース♪」
「ええっと……、き、キリッ! だよ!」
まぁ……一徹して考えただけはあり、カッコいいのであろう決めポーズで固まった2人の少女がいた。
というか、説明するまでもなく、ノエルとセンリだろう。見たところ、アバター名も『ノエル』なので、まずヤツで間違いない筈だ。
うん。まぁ……決めポーズはいい。
日朝の男児向け特撮番組を彷彿とさせるポージングである。
……だが何故、セーラー服?
いや、それよりも……、2人の横で黒子みたいな格好してザルの中から花弁を放っているヤツは……もしかしなくてもソーマなのだろうか……?
「……ツッコミ所が多すぎて、何から言えばいいんだ……」
「あっ! あぁぁああ!! アレ、アレだ! 『ふたりはセーラーPRETTY!』の変身衣装じゃん!! しかも、劇場版2作目『~ 恋と魔法とラプソディ ~』でしか出なかった、リリフィカルラブリーモード! やっばぁ!! クオリティー半端ねぇええっ!!? スクショ! スクショしなきゃ!!」
「ふふっ、さっすが、ワタシの見込んだアインでーす! 一目でソレを言い当てるとはっ!」
「そ、そそそそれより、……コレ……スカートの丈が短すぎるんじゃ……っ!!」
「センリ! 正義のヒーローが、パンチラなんて気にしていては戦えまセーン!! ワタシ達正義のヒーローが完全超悪をぶっ飛ばすのデース!」
「おい、言葉間違ってるぞ」
正確には、勧善懲悪だ。
意味? 勝手にググってくれ。
「み、皆にサプライズして驚かせよーってだけの話だったのに、こんな恥ずかしい格好するなんて聞いてないよぉ~っ!!」
あ、ちなみに
うちの学校は男女共にブレザーデザインの制服である。
中学時代の彼女達を知らぬオレからすれば、セーラー服姿というのも新鮮味があって悪くはないのだが……
確かに、センリの言う通りどう考えてもスカートが短い。
しかも、それに加えてノエルは一つ一つの動作が無駄に大きいので……チラチラと、白っぽい布地が見えたり見えなかったりするのだ。
あと……付け加えるなら、こういう女児アニメバトルヒロインものって……下にスパッツとか履いてるもんじゃないのか?
流石にパンチラはないだろ……?
「さぁー! 悪の大幹部レンレンさん! 神妙にワタシと勝負デース♪ お縄につくデース!!」
「オレが悪の大幹部? いや、何したよオレ!? 無罪だろ!」
「ノンノン。レンさんはとんでもない物を盗んで行きました……。これは言わば窃盗罪デース!」
「冤罪だ!」
「リア充罪で重罪なのです♪ あの星に代わって折檻デース! ワタシは大きな男の子の味方でもありますので!」
突然、突っ込んで来たノエル。
ヒーローものよろしく、わざわざ大振りなパンチやキックで攻撃してくる。といっても、PVPモードにしない辺り……ノエルもジャレ合いの延長気分でやっているのだろう。
多少勢いがあるとはいえ、ステータス補正のない女性の攻撃だ。大したダメージはない。
……だが……
作品の再現度を重視した攻撃パターンなのだろうか……
「おいバカやめろ! その格好のまま蹴り主体で殴ってくんじゃねえ!!」
もう、チラリズムなんてレベルではない。
「ふふ、やりマスね! 怪盗レンレン!」
「大幹部設定はどこいった!」
「センリ! 2人で挟み撃ちデース!!」
「え、えぇっ!!? わたしもキックするのーー!?」
「キックはヒーローの基本でーす♪ つべこべ言わずにゴー!」
「ぅえぇー……ん」
無駄に動きのいいノエルとは裏腹に、センリは両手でスカートを抑えたままチョコチョコと小走りで近付いてきた。
そして、極力スカートが舞い上がらないくらいのローキック、コツン。
スカートの前後を両手で抑えローキック、コツン。
微塵も勢いのないローキック、コツン。
うん。全然痛くない。
「なにやってるデスかセンリ!! もっと、パワフルにキックでーす!!」
「絶対無理ー!! スカート捲れちゃうよー!」
……なんだこの茶番……。
待てよ?
オレを倒すのが目的なのだとすれば、もうコレ……わざとやられたフリすれば終わるんじゃね?
子供相手のヒーローごっこと同じだ。
よし……
ゲーム世界とはいえ、他人の目もある路上のど真ん中……。正直、とてつもなくやりたくないが……
「ぐっ! くはぁ……、まさか、こんなところで……このオレさまがぁ――――」
「ふふふ、予想は出来ていましたが、やはり無傷デスか! 正義のヒーロー大ピンチですね!!」
「おぉおおおおいっ!!! オレの迫真の演技!? 完全スルーかっ!?」
「ですが油断して貰っては困りマース! ワタシにはまだ、4つの変身が残っているのデース♪ メモリーと、メダルと、スイッチと、指輪。さぁ……どれで倒されたいデス? ふっふっふ~♪」
「頼むから、色んなネタ突っ込んでミックスさせるの止めてくれ……」
「もしくは、ワン、ツー、スリーでハイパーノエルキックがご所望デスか!?」
「だから増やすなっての!!」
お前が日朝の特撮をこよなく愛していることは十分伝わった。だから、そのミニスカートで蹴りを入れようとするな!
跳び蹴りでも、回し蹴りでも、普通にアウトだ。
あと、コンプライアンス的な何かを敵に回しかねないから勘弁してください!!
「くっ! 激戦に次ぐ激戦により、センリは再起不能になってしまいマシタ……」
「あ、あれっ!? わたし、倒されちゃったの!?」
「デスがっ!! たとえ、一人ぼっちの孤独なヒーローになったとしても、ワタシは絶対に屈したりしまセーン! キリッ!」
「おい、いきなり語りだしたぞ……」
「大魔王レンレン! たとえワタシを倒しても、第2第3のヒーローがアナタに立ちはだかることでしょう!!」
「……もうツッコまないぞ……」
「きっとレンさんは、今ここでワタシにトドメを刺すことなく、無力な町娘を人質にとってワタシを脅してきマース。そして、ワタシは仕方なく捕まり……拷問部屋で酷いことをされるのデース!! エロドージンみたいに! エロドージンみたいにっ!!」
「レンレンってば酷いっ! 鬼畜っ! 悪魔ー!!」
「お前まで悪のりに参加してんじゃねぇよ!! つーか、仮にも女がエロドージンとか連呼すんなよ!」
「ヨンダコトハナイデスヨ……」
「説得力の欠片もないな……。もうどうでもいいから、さっさと終わらせてくれ」
「むぅ……仕方ないデスネ~。では、色々と省略してクライマックスの爆発シーンを――」
「するかアホが!!」
オレの手刀が、ノエルの脳天に直撃した。
「オーノーっ!!」などと、悶えるフリをしているが……おそらくコイツ、生体リンク値は低めに設定している。
たいした痛みもないはずだ。
「レディの頭に何するデスかー!!」
「おい、ソーマ。お前もこんな小芝居にわざわざ付き合うなっての」
「はは、ごめんね」
「お前みたいな常識人がちゃんと止めてくれないと、コッチにまで被害が及ぶんだよ。しかもコイツ、あからさまにオレを狙ってきたぞオイ」
「派手にレンを歓迎したいって、張り切っちゃったみたいで……。邪魔するのも野暮かな~と」
「無視しないでくだサーイ! 無視よくないデース!」
「……。それでソーマ。電学部の連中とやらはドコにいるんだ?」
周りを見ても、他にそれらしい人物は見当たらない。
遠巻きに見てくるギャラリーはいるものの、やはり……目線が他人行儀というか……。
「ちゃんと案内するよ。ちょうど、皆も集まっている頃だろうしね」
「……まさか、この茶番の為だけに、この場所に呼んだのか……?」
「…………あはは」
「無ー視ーだーめーデーース!! ウサギは! 寂しいと! 死んじゃ……いひゃいいひゃいいひゃい!? いひぁぁああいれーしゅっ!!」
プニプニなほっぺを無理矢理つまんで引っ張る。
「…………遅れてきたオレにも非はある。だから……小言は言わん……」
「ひらいれぇふ……」
「だから、……ぶちギレる前に一言だけ言っておくぞ♪」
「あ、あああああんなに恐い御堂君……はは初めて見るよっ……!?」(ガクブル)
「ちょ、レンレーン……? そんなに……怒んなくても……」
「みど……コホン、レン……くん?」
おいおい、何を言っているのかな三人とも。
オレは『まだ』怒っていないよ? 全然、1ミリも、オコではない……。
「へんはん」
「さっさと案内しろ。さもなくば帰るぞ……」
「一言じゃないデース」
「……返事は?」
「は、はいデース!! 今すぐに案内しマス!! もう、寄り道しませーん!」
「ったく」




