②一話のつづき2
ニヤリと笑ったノエルが、カバンから何かを取り出そうとしている。
つかもう、この状況で出てくるもんって言ったら、あの紙くらいなもんだろう……。
オレはため息混じりに、思案する。
さて……、どう言って断ろうか……?
え? やらないのかって?
無理無理。絶対に無理!
『部活』って聞いただけでもやる気がわかないのに、PVPの全国大会? チーム対抗試合? 論外っすわ。
つーか、ゲームを無理矢理強要されるってだけでもあり得ないってのに……、その上、徒党を組んで世界を目指すって? 鳥肌レベルだよ……。
『趣味を仕事にしたくない派』のオレから言わせれば「やりたくない」の一択である。迷う余地はない。
だが、あの蒼馬の頼みでもある……。
数少ない『友人枠』の頼みだ。相応の理由もなしに断るのも気がひける。
(つっても、それらしい理由ならいくらでもあるんだがな……)
それでも、少しだけ迷う。
それは……――
「……げ、ゲーム部……っ。しかも、『Re:GAME〈ゲート〉』が主タイか……むぅ……」
オレの背後で、この部に興味を持ったらしい友人2号が、そんな事をひっそりと呟いていたから……である。
千秋ならば『部活でゲームをやる』って事にも抵抗はないかもしれないし……、むしろ、自身をアピール出来る唯一の舞台とも言えるだろう。……コイツの性格的に……。
それに、千秋はアバターレベル800を超えるベテランプレイヤーである。実力も申し分ないだろう。
と言うわけで、オレは悩んでいる。
何と言って断るか……。それも大事だが、ココでオレが上手く立ち回ってやれば、千秋を入部させて他人に慣れさせるキッカケになる可能性も……。
うぅむ……悩みどころだ。
「と、ゆーワケで……さっそく、『Re:GAME〈ゲート〉』しまショー♪」
「……は?」
いやいやいやいや、コッチの返事も聞かずにいきなり過ぎんだろっ!!
やるって言ってないじゃん!
入部届け出してないじゃん!
つまりまだ、オレ達部外者じゃん!!
「ヒャクブン、イッケンになんとやらデース♪ ココで話してるよりも、まずはやってみるデスね♪」
「……つまり、入部のするしないは実際に見てから判断してほしい、って言いたいんだと思うよ。まぁ……体験入部みたいなものかな?」
「そのトーリデース♪ キリッ!」
この金髪……無駄にテンション高いな〜。
さて、いきなりゲームをしましょうって言われてもな……。
「そもそも、WDLなんて持ってきてないんだが……」
「「……え゛っ!?」」
「うん。部長さんのその反応は百歩譲って、わからんでもない……。だが、お前まで驚いてどうする、千秋」
「いやでもレンレン……」
「普通……ねぇ?」
「二人して『普段からWDLを常備してるのが常識』みたいな事を言わないでくれよ……。一応、ここ学校だからな? 荷物検査とかされたらどうするつもりなんだよ!?」
「「そりゃあ、ねぇ?」」
「ねぇ、じゃねぇよ!」
「まぁまぁ、ボク等はこれでも部活としてやってるからね。放課後以外に扱わないって条件付きで、許可は得ているよ」
「……そうか。この部の一員ってことは、お前もコイツ等の同類か……」
「……あはは……」
蒼馬は苦笑を浮かべている。
というか、千秋はまだ部の一員じゃないから、普通にアウトだろ……。
なに、意気投合したみたいにノエルと固く握手してんだよ! 人見知りはどこにいった!?
「アニメは?」
「見てマース♪」
「今期の推しは?」
「『転生して魔界で魔王やってます』デスね! 作画の作り込みがヤバイデース♪」
「オシキャラはっ!?」
「ルシュアさまも捨てがたいデスが、やはりレヴィアちゃんデスね〜♪ 可愛さがハンパないデス!」
「わかる! あの可愛さにあの声優はマッチし過ぎてヤバイよね!?」
「OHー! アナタも第3話の主人公奪還シーンでヤられちゃった口デスね♪」
「「同士っ!」」
ガシィ……
あぁ、もう……なんなのコイツら……?
オレと蒼馬を置いて、だんだんと話がエスカレートしていってるし。
まぁ、仲良きことは良いことなんだが……。
「レンレン! ちょっとレンレン!! この人、超イイ人っぽい! 凄くわかってらっしゃる!」
「あぁ、はいはい。よかったな……」
「ソーマ! この子、イイ人デース♪ 是非、田楽部にチアキさんも招待シマショー♪」
「あはは……ご自由にどうぞ……」
固い握手の末、何故か仲良くなった2人の少女を遠目で見つめ、さてどうしようか……と、1人思案していたオレ。
正直、もうオレがどうこうせずとも、千秋は入部してしまいそうな勢いだ。
ならば無理して入部する理由もないわけで、蒼馬には悪いが……ここは素直に「NO」と断ってしまおう。
「じゃあ、オレはコレで失礼して――」
「ちょい待てやレンレン! 待って、待ってくださいレンレンさん。煉斗くん。御堂の兄貴!」
「…………なんでお前が引き留めるんだよ……」
「今一瞬、アタシを放置して帰ろうとしただろお前ー! 逃がさんぞぉー! アタシもつれてけよぉ〜」
「気が合うなら、お前だけでも入部しちまえばいいだろうが」
「いやいやいやいや、それとこれとは話が別っしょ! ……なぁに言ってんのレンレン……? レンレンいないなら、入る理由なんてないじゃん。常識的に考えて物言えよ」
「お前、ホンットめんどくさいな……」
「照れんなよ〜♪」
話は簡単にはいかないらしい……。
「やっぱり、煉斗は気が進まないかな……?」
「……悪い」
「理由は……聞くまでもないのかな……」
「まぁ、いくつかあるが……。友人でもない他人とチーム戦とか、オレには不可能だ。つか無理」
「うわ、やっぱチキンだコイツー!」
「千秋……」
「はいすいません黙ります」
まったく……。
「要するに、……可能性はゼロってことなのかな……。ほんの少しでも、ありえない?」
「なんでお前が、オレにそれほどまでして拘るのかは知らんが……。別に頭ごなしに否定しようって訳じゃないんだ。ただ、……オレには向いてないと思う」
「やりもせずに、決め付けるのかい?」
「……やけに食い下がるな……」
「ボク個人的には……煉斗と一緒に部活をしたいって言うのも、理由の1つだったりするしね♪」
「オレとやっても楽しくないだろ……」
「友達と遊ぶのは楽しいよ♪」
「……うぅ……」
「それとも、友達だと思ってたのはボクだけだったのかな?」
「……はぁ、その言い方はズルいだろ……。わかったよ! 今日は無理だが、明日なら……その、アレだ。体験入部ってことで……少しだけ付き合ってやるよ」
「ありがとう。煉斗」
「レンレンのリアルツンデレキター!」
「レンさんは、ツンデレ属性なのデスね! メモしておきマース♪」
「…………帰る」
「「照れんなよ〜♪」」
◇◇◇




