②プロローグ『Challenger』
なんで、こんな事になってしまったのだろうか……?
いやスマン、なんかありきたりな切り出しになってしまったみたいだが、……なんというか……んぅ゛〜…………。
とりあえず、現在の状況を簡潔にまとめるとしよう。
まずオレの身の回り、手を伸ばせば簡単に届く範囲内では……
「えっ、えっ! あの……あの、御堂く――じゃなくて、……えっと、レン……くん。これってもしかして、あの……!」
蒼髪のキリッとした美少女。
背丈は160くらいだろうか。両手には革製の指貫グローブが付けられ、チャイナドレスにも似た服装で、靴もヒールではなく普通のブーツっぽいが近接戦闘に特化したデサイン。
そんな、普段は凛としたイメージの強い少女だが、今は状況に狼狽え……戸惑った様子でオレを見ていた。
実はこの少女……もとい、美少女アバター……あの『委員長』である。
アバター名は『ルナ』。
ゲーム初心者にはありがちな、本名さらしプレイっすわ。
いやまぁ、それは百歩譲っていいとして……、問題は……
「……くっそ」
「嘘だろ……おい」
少し離れた場所で座り込んだ男性アバタープレイヤー2人と、オレの視界正面にデカデカと表記された『YOU WIN!』の文字。
対戦相手はそれなりに経験を積んだベテランプレイヤーだった。2人ともレベルは300を超えていたし、チーム戦でのコンビネーションも中々のものだった。
対してコチラは、数年のブランクありのオレこと『レン』と、たった数時間前に初めてプレイしたばかりの委員長である。
レベル差を無くした、レベル50固定のPVP戦だったとしても、勝てる要素は全く無かったはずだ。
「あの、これ……『WIN』って書いてあるんだけど、勝ったってことで……いいのよね?」
まぁ、結果はご覧の通りである。
見た目からして明らかに初心者な俺達に花を持たせたかった、とか?
それにしては、やたらと必死にやっていたように見えたが……。
確かに、向こうにしてみればレベルをかなり下げられる上、スキルやアビリティもそれなりに弱体化させられているはずなので、普段との実力差的にメッチャ戦いづらかった、ってのはあるだろうが……
むぅ〜……
レベルだよりのベテランプレイヤーってのは……ちょっと拍子抜けっていうか、ねぇ?
というか、どうしてこの様な事態になったかと言うと、話はけっこうさかのぼる。
アレはそう、イベントオープニング戦で色々やらかした、次の日の事だ……。




