エピローグ『NEXT STAGE』
1人の科学者は、常に『次』を考える。
それが天才と揶揄される理由であると同時に、彼を非凡たらしめる唯一の点だとも言えた。
だが、彼は『天才』ではない。
世界と言う大きな輪の中で見れば、確かに彼は大きな才能に恵まれた1人なのかもしれない。
事実、これまでに残してきた数々の発明品は、どれも国家単位で多大な評価を受け、時代を大きく左右するような物も少なくはない。
その最たるが、このWDLである。
量産や流通、告知のため、あえて大手企業である『ハルウェン・コーポレーション』の製作ハードと公言してはいるが……実際は、企画から開発にいたるまで、そのすべてを彼1人で成し遂げたと言っても過言ではない。
そして、『Re:GAME』ソフトを作ったのも、『Re:GAME〈ゲート〉』を作り上げたのも彼だ。
だから彼は正真正銘、このゲームの生みの親なのである。
だが、彼にも足りないものはある。
『非凡』であるがゆえに『平凡』を知らない……とかではなく、もっと根本的な部分。
彼には『我欲』が無かった。
何かを成す能力はあっても、ソレを使う矛先がない。
何がしたい……というモノがなかったのだ。
だから、何も成さなかった。
だが、彼は成したのだ。
要するに、キッカケがあり……彼を動かす『目的』が生まれたということだ。
『天才』と言うものは実にやっかいだ。
まず、止まることを知らない。
『目的』が出来たら、達するまで絶対に止まれないのだ。
諦めるとか、一度休憩するとか、周りを確認するとか、そう言うことをしない。まっすぐにそれだけしか見ない。
こんな発明品を短期間で作り上げてしまうくらい。
だが彼はとても不器用だった。
目的にまっすぐであっても、方法を知らない。
言葉だけで簡単に解決してしまうような簡単な問題に対してさえ、面倒な遠回りを何度も繰り返してしまう。
不器用なりに何通りもの道筋を模索し、より確実で、より理想的な解答を望んでしまうのだ。
だから、人の感情が大きく左右するアドリブにはめっぽう弱い。
今回もまた、間違えた。
「……いや、まだだ。まだ修正のきく範囲内だろう」
他に誰もいない暗い室内。
数十ものモニターに囲まれたデスクの中で、彼はため息混じりに一枚の写真を見つめる。
「やっと、彼が帰ってきた。……あと少し。あと少しで、やっと……」
彼はそれだけを望んだ。
イレギュラーだらけの世界で、彼は……ただ、それだけを望んだ。
他のすべてを失っても構わない。それだけの『願い』が、彼を動かし続けてきた。
「あとは、心の問題……か。すまないね。その辺の事にはどうも疎くて……。だが、会えば……また巡り会えば、君達なら……答えを導き出すのだろう?」
彼は、信頼している。
かつての少年達を……。
◇◇◇
宴が始まる。
獣の躍る茶会を見渡し、少女は笑う。
勇者の亡骸は獣を肥やし
獣の亡骸は少女へと還る。
これは、生誕の幕開け。
生み出し成り果ては、災厄の主。
災厄を打ち砕くは、黒き刃。
災厄を救い出すも、黒き刃。
狂騒の宴の果て
巡りあう想いに
黒刃は何を断つか。
一応、ここで一区切りです♪
ここまで読んでくださった方には、心より感謝を♪
さてさて
色々伏線を貼り過ぎてしまい、すべて綺麗に回収できるかは不安ですが、まぁ所詮は趣味作品なのであまり期待せずにお待ちいただけると助かります(汗)
それと、たぶん更新頻度はかなり落ちると思われますので気ままにお待ちいただけると……
面白いと言っていただけるのが嬉しくて書いているだけの素人ですが、これからもお付き合いいただけると嬉しいです!




