第三話『Let’s Play』
最初から生まれながらに『人見知り』だった、なんて人間はきっと極少数だ。
それこそ、代々受け継がれる家系の遺伝子とか、そんな感じのアレだ。
ワタシも例に漏れず、生まれつき……なんて少数派ではなく、普通に大多数派同様、後天的に……つまりは、結構成長してから『人見知り』ってのになったわけだ。
と言っても、一重に『人見知り』とひとくくりにされているが、個人差や原因、反応はバラバラだよ?
ただ他人を警戒してるだけの人とか
一人が大好きなだけの孤独主義者だったりとか
自分に自信が持てないだけの恥ずかしがりやさんとか
……ダークヒーロー気取りの痛々しい重度の厨二病患者さんとか
まぁね~、拒絶とか、羞恥とか……周りからしたら、むっちゃめんどくさいわけじゃん?
ワタシの場合は……失敗から学んだパターンってやつ?
昔はワタシもリア充みたいにさ~、友達いっぱい夢いっぱい! 家族や先生にも期待されるような優等生美少女だった……。あ、すいません嘘ですごめんなさい。
でもでも、一応……友達はいたんだよ? そりゃもう、大親友って呼べるくらい大好きだった人がいたんだよ。
……まぁ、そう思ってたのは私だけで、向こうは違ったのかもしれないけどさ。
大好きな友達がいたわけさ。
でも、やっぱり……なんか上手くいかなくてさ……。
中学に上がって、新しい仲間が大勢増えて、毎日が楽しくなる!ってなるわけもなくて。
どういう訳か、集団でのイジメの的にされちゃって……、机に落書きとか、皆で無視とか、私物を隠されるとか……コッテコテの典型イジメを受けちゃってて……。
別に慣れたら辛さも麻痺しちゃったし、ワタシには『あの子』がいる。……って思えば、頑張れたんだ!
まぁ、結局その子にも裏切られちゃったんだけど
んで、不登校になって、でも家にはいられなくて、学校行くフリして図書館に行ったりしてた。
『逃げたせいでバカになる』って、なんか悔しいから……見返してやる!って適当に言い訳して勉強だけは頑張ってた。
ワタシ、こう見えてけっこう秀才なんだぜ?
そんで、一人でいる寂しさに慣れ始めて、一人でいる気楽さの虜になっちゃって。
誰かといて苦しむくらいなら、一人でいた方がずっといい……なんて結論に辿り着いたわけ! 悟りの境地ってやつ? 中学生にしてワタシってば大人!
そんなある日、気分転換に動画サイトで適当に動画を見てたら、面白そうなゲーム実況動画を見つけちゃってね。
時間も忘れてずっと見てたのさ。
そのゲームがコレ、『Re:GAME<ゲート>』ってわけ。
リアリティーのある質感とか、ゲーム性とか機能とかグラフィックとか、色々夢中になる要素がある中で……ワタシはあることが気になった。
こんな楽しそうなゲームで、テッペンとってるやつってどんなヤツだろう?ってね。
そういうレビューサイトやコミュニケーションサイトを見てみたらスグにわかった。
少数精鋭の最強ギルド『零雪の箱庭』の8人。その中でも、群を抜いて強い……『Re:GAME<ゲート>』内で《伝説》を作った、最強のギルドマスタープレイヤー……ノワール。
彼を知ったとき、まるで恋した乙女みたいに夢中になったわ。
貯めた小遣いを全部はたいてWDLハードを買って、すぐにゲームを始めた。
自分ではない『誰か』になる全能感とか、頑張れば頑張るだけ数値として成長がわかるってところとか、すごく楽しくて。……リアルの事とか忘れられて……。
ワタシはこのゲームにハマった。
だが、やっぱりソレも長くは続かなくて……、派閥争いとか、初心者狩りとか、プレイヤーキラーとか……、そんな事よりも――
――『ノワールが辞めた』
その事実が、ワタシに何よりも大きな喪失感を植え付けて……一瞬、ワタシも辞めようかな~とも思っちゃったんだよね。
実際、『ノワール引退』は大きな事件として1ヶ月以上大きく取り上げられ、騒ぎになった程だよ。
話題はもうもちきり!
ワタシも憧れの人が辞めちゃって、やる気なし。
そんな時、普段から利用してた攻略レビューサイトで、彼と……レンレンと出会った。
最初は他と同様に中身のない『形だけの繋がり』だった。ただのギブアンドテイク! 知り合い以上、友達未満。そんな感じ!
それがいつの間にか、時間をおう毎に……ワタシはレンレンに惹かれていった。勿論、友人として! 親友としてだよ! ……たぶん。
無愛想でめんどくさがりで口は悪い。でも、絶対にワタシを無視したりしない。そりゃ、時には無視対応もあるけど……アレはコミュニケーションの一環っていうか、悪いのはワタシだった時だけだし……何だかんだ言ってもすぐに構ってくれるし♪
数年たってリアルであって……
そんでもって今日これから、『Re:GAME<ゲート>』内で初めてレンレンに会える。
楽しみじゃない筈がない!
強いワタシを見てレンレンはどんな反応を見せてくれるかな?
もう、頭ん中はソレばっかりでそわそわしっぱなし!
そして、待ち合わせ場所の『中央広場・噴水前』にて、ソレっぽい銀髪の青年を見付けた。
にやけそうな頬を引き締め、突撃だ!